「秋は発見の季節という仮説」

第73話
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

詩人で作詞家で作家のサトウハチローがちいさい秋をみつけたのが1962年なので約60年前。アイザック・ニュートンが万有引力の法則を見つけたのは1665年なので今から356年前。逸話の通りリンゴが落ちるのがヒントになったのなら季節はやはり秋だったと思われます。その二つの偉大な実績から導かれる一つの仮説。それは、秋は発見の季節だということ。そうです、発見の秋です!

8月も終わりの頃、ついつい付けっぱなしのテレビで高校野球をやっていました。今年は五輪の都合や天候不順でスケジュールが延びに延びて晩夏というか秋を感じる珍しい甲子園でした。そのときは準々決勝の第二試合。和歌山県の智弁和歌山高校対島根県の石見智翠館高校。1回の表裏が終わり攻守交替の合間、テレビ画面にはアップになったスコアボードが映っています。うん!?妙に目に焼き付く文字の配列(※写真①)。縦読みしてしまいます。

※写真①

「和智・智翠・弁館」、何だか戦国大名細川家や立花家にいそうなイケメン三兄弟の名前的でカッコイイじゃないですか。このあと大会は無事に進み決勝戦は智弁和歌山高校対奈良県の智弁学園高校という智弁対決。お!ということは和歌山が先行の場合は「和智・智弁・弁学」で奈良が先行の場合は「智和・弁智・学弁」の三兄弟が見られるはず。野球とはまるで違うところにワクワクしながらの決勝戦。エッ!実際はまるで予想外(※写真②)。3文字対4文字。いやいやせめてどっちかに揃えようよ。そもそも4文字ができるのなら「和智弁」ではなく「和歌智弁」でいいよね。よく事実は小説よりと言いますが、確かにノンフィクションは面白いです。

※写真②

同じく8月の終わり。しばらく新しい帽子を買っていないことに気が付き(※僕の帽子の話はとりとめないわ第18話)下北沢にあるなじみのお店「スタジオトムス」を訪ねるといつもと違う様子(※写真③)。

※写真③

閉店セール。ウソでしょ。聞けばコロナでお客さんが激減とのこと。そりゃそうか。ステイホームやリモートで外に出ない日々。僕と違って多くの人は家の中ではほとんど帽子は被らないでしょうから帽子屋さんはつらいです。確かに僕もおニューの帽子で外に出たりしていません。こちらのお店は他やオンラインショップもあるので、これからはサボらず買おうと反省しました。

9月の頭、コンビニ帰りに家のそばのゴミを出す場所に女性用と思われる靴が2足(※写真④)。

※写真④

えっとこれはどういうことかな?完全に捨てるのであればゴミ袋に入れるはず。いや、ルールとして必ず入れないといけません。ということはどういうことか。誰かにもらってほしいのでしょうか?でもなぁ、置いてあるのがゴミ捨て場だし靴はサイズもあるからなぁ。あ!シンデレラ的なことが行われているのかもしれません。ここでしばらく見張ると次々と美しい女性が現れ靴を履いてはうなだれたりくやしがる様子が展開され、最後に身なりはみすぼらしくもけなげで可憐な少女がその靴にそっと足を通すとピタッとはまり、すると背後から白いオープンカーに乗った令和の王子様が登場するのかと、その場に10分佇みましたが何も起きません。横を通った母娘に怪訝な目で見られたので立ち去りました。

妙な靴を見つけたせいでモヤモヤするので少し遠回りして図書館に寄って帰ることにしました。おやおや、図書館の壁に気になる貼り紙(※写真⑤)。

※写真⑤

ペンキぬりたてには触りたくなるというのは、人間の本能というか持って生まれた悲しい性(さが)。しかしぬりたてには見えないなと近付いたところ、ぬりたてなのは壁ではなくその手前の白い柵でした。
見事にしてやられました。ジーンズでよかったです。

イカンイカン、早く帰ってジーンズを洗濯しようと図書館を諦めた帰途、今起きたことは忘れて上を向いていこうと顔をあげると、そこにあったビルの一室の窓に目がとまりました(※写真⑥)。

※写真⑥

これはぬいぐるみ達に外の景色を見せているのですね。持ち主のやさしい心遣い。いやいや違う。僕のような他人の部屋の窓を見てしまう悪趣味な輩を見張っているのかもしれません。そう思うとぬいぐるみの眼に防犯カメラが仕掛けられているように思えてきて恐くなりました。何かと発見してしまう秋は罪作りな季節です。

ところで、2001年の12月にアイザック・ニュートンの子孫の撮影(※写真⑦)にイギリスへ行った話はまたの機会に。

※写真⑦
プロフィール
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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