ボストン発スタイリッシュなブレスレット:危険を感じた時、家族や友人にGPS位置情報を送信できる護身用ツールだった!
先日、Fast Companyによる今年のInnovation by Design Awardsをチェックしていたところ、気になったものがこちら。
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デザインはとてもスタイリッシュなブレスレットですが、実は護身用としても機能するもの。もしあなたが女性ならば、暗い夜道を一人で歩く時、会社の飲み会の帰りに一人でタクシーを利用する時、少なからず恐怖を感じたことはありませんか?日本は治安が良いということもあると思いますが、アメリカでも、常日頃、護身用グッズを携帯しているという女性はあまりいないかもしれません。
一昨年、Uberはドライバーによる性的暴行の報告が過去二年間で約6,000件あったことを発表しました。コロナ禍前ですが、私も夜遅くにUberを利用することもありましたので、このニュースを見た時はゾッとしました。そして、すぐさまAmazonで護身用の唐辛子入りスプレーを購入しましたが、もし実際に襲われそうになった時、恐怖で身動きできないという可能性もありますし、そんな時に「スプレーのロックを解除して相手めがけてスプレーをする」ことができるのか疑問が残りました。
今回ご紹介するこのFlareブレスレットは、そんな心配を少しでも解消してくれそうなツールです。ブレスレットは専用のiOSアプリとBluetoothでペアリングして使います。
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Flareブレスレットには、3つの機能が搭載されています。
1)ブレスレットの内側にあるボタンを3秒押し続けると、あらかじめ登録しておいた友達や家族のグループにメッセージが送られ、GPSでの位置情報を伝えることができる。
Flare Feature: Send GPS Location
Flare – YouTube
2)ブレスレットの内側にあるボタンを一回だけ押すと、自分のiPhoneにあらかじめ録音された「家族か友達が緊急の電話をかけてきた」ようなフェイクコールをすることができる。例えば、不快もしくは身の危険を感じた時、その場を抜け出すために使うことが可能。
Flare Feature: Get Pre-Recorded Call
Flare – YouTube
3)追加の設定(無料)により、ブレスレットの内側のボタンを3秒押し続けると、家族や友達へメッセージとGPSでの位置情報が送られるのと同時に、911(アメリカ緊急通報用電話番号)に繋げることができる。911のオペレーターがiPhoneにメッセージを送信してくれるのでそれに応答するか、応答できなければ、オペレーターが警察にGPSでの位置情報を送ってくれるので、その情報を元に警察が来てくれる。
Flare Feature: Alert 911
Flare – YouTube
もちろん、このブレスレットを持てば万全という訳ではありませんが、このブレスレットを携帯することで少しでも安心は得られるのではと思います。もし、iPhoneが隣の部屋や鞄の中に入ってしまっていて取りにいけない場合でも、iPhoneがBluetoothの届く範囲(約3メートル以内)にあればこのブレスレットは機能します。
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お値段は129ドル(約14,400円)。デザインはカフ型とビーズタイプのものがあります。カフ型はNova、Gloss、Satin、Wornの4種類の仕様から選べ、ビーズタイプはAmazonite、Howlite、Matte Black、Rose Quartzから種類が選べます。どのタイプもさりげないデザインですし、これ一つするだけでオシャレに見えますよね。
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このブレスレットを開発したFlareという会社はボストンにあり、クイン・フィッツジェラルドとサラ・デ・ザラガという女性二人によって創業されました。二人は2015年にハーバードビジネススクールで学生として出会い、のちにそれぞれが性的暴行の犠牲者であったことを知ったそうです。それから二人は女性を守るために役立つビジネスを構築することを決めました。
創業者のクイン・フィッツジェラルドとサラ・デ・ザラガ。
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二人はビジネススクールにいる間、Flareブレスレットのアイデアについて取り組み始めました。大学のコミュニティでは、女性、LGBTQ +の人々、および暴行を経験する可能性が高い少数派と、フォーカスグループを開催。そのフォーカスグループで、「一線を越え始めたばかりのデート、バスであなたを見つめている見知らぬ人など、これらは簡単に危険な状況になる可能性があるが、現時点では安全か危険かどうかはわからない、そういった状況で人々に力を与えるツールを望んでいる」ということを発見します。まさに、Flareブレスレットの機能そのものですね。
創業者の二人は、唐辛子入りのスプレーといった従来の護身用グッズは、実際に暴行がエスカレートする前に、不快もしくは危険な状況を回避できるようには設計されてはいないこと、また、一般に売られている自己防衛グッズは武器指向のものが多く、多くは男性が設計していること、そして、武器指向のものは誰かを巻き込む可能性もあることを指摘しています。
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ビジネススクールを卒業後、二人は製品を作り始めます。外見は流行のカフ型やビーズブレスレットのように作られ、内部にはテクノロジーとボタンが埋め込まれて作られました。そして2020年のはじめに販売が開始されます。パンデミックで人々のライフスタイルが変わったにもかかわらず、ブレスレットはすぐに売り切れ、再製作後も売上は順調。現在創業者の二人は、人々を安全に守り続ける他のツールの構築を始めています。
最後に、創業者の二人がFast Companyのインタビューで語っていることが興味深かったのでご紹介します。
私たちは、人々がより自信を持って安全に感じることができるテクノロジーを生み出していますが、最終的には、私たちの製品は存在すべきではないことに気づきます。私たちは、人々が日常生活の一部として暴力や嫌がらせを経験しない世界に住みたいと考えています。その時が来るまで、私たちは単なる一時的な解決策であることを願っています。
この言葉からわかるのは、彼女たちが単なる「ビジネス」としてFlareブレスレットを製作しているのではなく、女性が自己防衛をしなくてはならないという社会への、ソーシャルマターとして取り組んでいるものだと強く感じます。
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このコラムを読んでいる男性も他人事としないでください。突然、あなたの家族、友人、同僚の女性が性的暴行の犠牲者となることもあるのですから。性的暴行は当事者本人へ肉体的、精神的ダメージを与えますので、あなた自身が犠牲者になり得る人々を守ってあげられる側になってほしいと思います。
よく考えてみれば、このFlareブレスレットもフェムテックに入るのではないかと思いました。フェムテックは出産や育児、生理といった女性の健康問題を解決することがメインとなっていますが、今後、フェムテックで「女性の自己護衛用製品」も扱ってほしいです。女性だけではなくLGBTQ+の人々も含め、安全に暮らすためにこういった製品は必要とされていると思います。
(参考)
Fast Company : These stylish bracelets double as a powerful self-defense tool
npr : Uber Received Nearly 6,000 U.S. Sexual Assault Claims In Past 2 Years