緑の中で耳をすませてみれば? @Wakehurst Kew (後編)
さらに東へ向かいます。森を一歩出ると目の前に現れたのは野草の草原、ワイルドフラワーメドー。草原の中のデッキチェアでリラックスできるブルーマーズ・バレーに入ったようです。紫の野アザミの花も枯れはじめ、夏の終わりを告げていました。
ここから急な丘を登ってまた森の中へ。見晴らしの良い高台に現れたのは、巨大なメガホン!コクーンのようなメガメガホンの中に腰を下ろし、下界を見下ろしながら自然の音に耳を傾けます。作品は故郷エストニアの森からヒントを得たBirgit Õigusの「RUUP: Forest Megaphones, 2015」。
カラカラ、シャーン、カーン。空で機織りしているのは誰?真紅の縦糸の所々に金属、竹、陶器などで作られたウィンドチャイムが下がり、風に吹かれ自然に溶け込む音色を織り成していました。作品はPlunge Creationsの「Sound Wave, 2021」。
ここからは中央に戻るため西の森へ向かいます。カッカッカッ…。聞こえてくるのはキツツキのドラミング?巣箱があるので近づいていってみると、なんとそこで巣箱をつついていたのはキツツキのロボット!ロボットのキツツキがつつくのをやめたので、木の下にあった作動のマニュアルをみて早速再作動させてみます。作動は簡単、画面がオンになっているスマホをキツツキの尾羽に近づけるだけ。カッカッカッ…。またつつき始めました。画面をかえ、メールチェックをしてみると、カカカカッ…。今度はすごい速さ!実際のキツツキのドラミングは、1秒間に約20回!なのだそうだからこれが普通?どうやらスマホのアクティビティによってリズムが変わる様子。このキツツキのドラミングを聞くにはこちらからどうぞ。作品はMarco Barottiの「Woodpeckers, 2018」。
キツツキを後にして向かったのはミレニアム・シード・バンク。世界中の植物の種を保存する種子銀行には、2000年から現在にいたるまでに絶滅危惧種を含む24億個もの植物の種が、なんと洪水、爆撃、放射能に耐えられる氷点下マイナス20度の地下施設の貯蔵庫に収められているそう。まさにタイムカプセル、Noah’s Ark。
中に入るとずらりと並ぶ顕微鏡や白衣の研究者がガラス越しにみられ、種子銀行が研究施設を兼ねていることがわかります。この日は「本日メキシコからの収集物を洗浄中」という手書きの看板がでていました。
最後は邸宅のすぐ裏にあるザ・ウォールドガーデンへ。まさにザ・イングリッシュガーデンといった趣で実にカラフル。規模の違いもありますが、実際のところこの庭が一番賑わっていました。
四大陸の植物が集められている庭園ウェイクハーストの植物は元々キューガーデンによって集められたものではなく、ウェイクハースト男爵となるジェラルド・ローダーが、1903年に土地を買い取り、33年の月日をかけ発展させたものでした。その後寄贈によりナショナル・トラストの所有物となり、キューが1965年に100年間のリース契約をしたため、現在のキューガーデンの分園という形に至ったわけです。
ウェイクハーストでは11月から1月にかけ動物から見た光とは?といった自然科学をテーマにしたライトフェステバルを行なっていて、日の短くなる英国の冬に夜のウェイクハーストを訪れてみるのもまた一興かもしれません。