シンガポールで働く~企業と採用~

Vol.11
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第10回に引き続き、「働く」という視点でシンガポールやASEANについてお伝えしてまいります。

シンガポールにある企業にはどんな企業がある?
A.
大きく分けると3タイプ。ローカル、日系企業、そして日系以外の外資系企業。

・ローカル企業
いわゆるシンガポール企業のこと。
私が印象的に感じたのは、小さな“人種のるつぼ”だということ。単一民族国家の日本との大きな違いでもありますが、シンガポールでは中華系、マレー系、インド系、その他、といろいろな人種の方が暮らしています。ある中華系人種の登録者さんに話を聞いたところ、「中華系シンガポール人が経営している企業では、しばしば中華系に限定した採用活動をしているところがある」と言っていました。1980年代後半から2000年代にかけ、外国企業誘致などで積極的に経済発展を遂げてきたシンガポールですが、組織構成には“人種の好み”がまだ存在していると感じます。
また、値段交渉(つまり値切り)や積極的な売り込み(ちょっとしつこいくらいの)が得意なようだと感じます。私も企業の代表者でウェブサイトに名前が載っておりますので、毎日何かしらの営業電話がかかってきます。英会話の勉強や地場のリサーチになると思い半分くらいはきちんと会話していますが、やはり中華系の方からかかってくることが多いなと感じています。ちなみに、これを書いている今もかかってきています。(笑)
フレンドリーな方が多い、というのも一つの特徴かもしれません。世間話を振ればだいたい自分の意見もしゃべってくれるし会話を楽しめる方が多い印象です。以前聞いた話では1日の休憩時間がランチタイムを含め4,5回あるような企業も存在するようで、ビジネス街を歩いていても「え、今仕事中だよね?」と不思議に思うほど談笑しているグループを見かけます。
ちなみにローカル初の有名ユニコーン企業はLazadaやRazer、Grabなどがあります。一方でSME(Small Medium Enterprises)という中小企業群もかなり多く存在しております。

・日系企業
日本本社のある企業のシンガポール現地の子会社やグループ会社のこと。
日系企業の印象は少し難しいのですが、組織的にグローバル化しているところと、そうでないところがある印象です。社員の人種構成は日本人やシンガポール人、その他外国籍とバランスが取れているのですが、社内ルールは日本企業に準じている企業などもあります。例えば服装ですね。私は日本の本社にいる時は「スーツ一択」でしたが、シンガポールの方はもっとカジュアルで、時にはTシャツ、短パン、スニーカーな人がとても多いです。あるローカル企業に行った時にハワイのリゾートみたいな服装で出てきた社長さんがいらっしゃって、とても驚きました。
一方、同じシンガポールでも日系企業は99%の確率でスーツかそれに準じた服装です。ご対応くださる方々が、社長かGMなどの役職者の方が多いからかもしれませんが、全体的には日本で見られるようなスーツ姿のサラリーマンをシンガポールで目にすることはあまり多くありません。

日系企業での人間関係の在り方も日本流を感じます。私はこちらでいくつかのコミュニティに所属しているのですが、そこで駐在員の方々から聞く話だと、上司と部下、先輩・後輩、といった日本でもよく目にする縦割りの関係性で、シンガポールにいるけれど日本で働いているのとあまり変わらない社風の企業もあるようです。日本からの駐在員は一人で、他の従業員はすべてローカル採用という企業の方に聞いた話によれば、社内ルールのローカライズ(シンガポールの人々の特徴に合わせる)をしなかったことで多くの離職を招いた過去もあったそうです。郷に入っては郷に従え、という言葉を思い出しました。

・その他外資系企業
欧米やインド、中国などの資本がベースの企業のこと。
実はそこまで多く出会ってきたわけではないので少し想像も入るのですが、一言でいえばドライな印象を受けます。言い換えると合理的なのかもしれません。人材採用という側面で関わっているため、人事担当者とのやりとりがメインとなりますが、社内での役割がはっきりしているのか柔軟な印象は受けません。「ジョブ型雇用」という言葉が日本でもポピュラーになってきたのは近年ですが、欧米諸国ではこのジョブ型雇用が一般的ですので、一つ一つの仕事や役職さえも組織の中の機能として明確に区分けしていて、パズルのピースのように捉えているからかもしれません。
シンガポールにはGoogleやMicrosoft、Facebook、アリババやテンセントなどグローバル大企業の子会社も現地法人を置いています。アジアのグローバルハブとして機能するために即戦力を採用する企業が多く、日本のような新卒採用は行っていないところがほとんどですが、インターンという形で大学在学生や卒業生を採用しているところはあります。(世界的にも日本のように一時期に新入社員を一斉に採用するような国は少ないと言われています)

シンガポールでもっともよく見る英文レジュメの構成は?
A.
職歴、学歴、個人のことは6:3:1

前回のコラムではレジュメのスタイルについて紹介したのですが、ローカルの人々がどのようなレジュメを作っているか気になるところですよね。サンプルを添付してみましたので、以下をご覧ください。

※1ページ目

 

※2ページ目

見て分かる通り、日本の履歴書とは書き方が違います。まず履歴書と職歴書は分けません。また最近では個人情報を記載する方も増えてきていますが、原則としては民族や国籍、年齢などを記載する義務はありません。これは差別的な採用を連想させるためです。また、私が印象的に感じたのは自己紹介のサマリーを熱心に書いてある方が多いということです。日本で言う自己PRに当たると思いますが、より自信が詰まっている文章なのが特徴でしょうか。あとはシンガポール人のほぼ全員が英語と中国語orマレー語を話せますので記載されています。

面接対策は何をすればよい?
A.
応募する企業によって変わってきます!

3つに区分けした企業タイプによって異なりますが、一つだけ、すべての企業で同じであるのは英会話での面接が基本ということです。日系企業のみ日本語と英語の両方で行われると思いますが、それでも確実に英会話はあります。人事担当者がローカル、もしくはローカルと日本人の両方での構成という企業が多いからです。「英語が全くしゃべれない」という方には残念ながら狭き門です。少なくとも自分の経歴やパーソナリティ、仕事で大事にしていること等々を英語で伝えられるようにしておきましょう。ここで重要かつ知っておいていただきたいのは、「きれいな」英語をしゃべる必要は全くない、ということです。ブロークンでも構わないので、まずは相手の目を見て、ゆっくり、はっきり伝えようとする気持ちが表面化していることが大事です。文法が間違っていたり、動詞の活用や単数形、複数形が正しくなかったりしても指摘を受けることはありません。むしろ面接官の中にも発音がなまっていたり文法が間違ったりしている人も多いです。

では上記で述べた、応募する企業の種類ごとに詳しく見ていきましょう。
・ローカル企業
ローカル企業の面接の特徴としては、かなりフレンドリーな雰囲気で行われることがあり、会話形式が主流だと思います。ジョブ型雇用が増えてきているようですが、人柄重視の採用も珍しくはないと思います。

・日系企業
日本企業の面接の特徴は、面接官が日本人とシンガポール人(もしくはその他)がもしくは同時に面接に登場するケースが大半です。組織>個人重視な企業が多いので、質問もチームワークや協調性を問うような内容が多いです。とはいえシンガポールにありますので、より業務に直結するような専門的なスキルや経験を問われることもありますので、日本語・英語どちらでも説明できるようにするべきでしょう。

・その他外資系企業
圧倒的にジョブ型雇用が主流なので、面接の前の書類段階でポジション適性が低いと、面接しても通る可能性は低いです。人柄などよりも求められる機能が満たせるかが重要だからです。書類審査に難なく通った場合は、比較的カジュアルな姿勢で臨める面接になることも多いと思います。本社の担当者と面接が組まれることもしばしばありますので、現在はオンラインでの面接が多くなっています。面接時の質問は面接官により異なりますが、仕事への適正度合いを測るための質問が多いのが特徴です。準備としては、応募しているポジションの募集概要をよく読み下調べと想定問答をしておくのが良いと思います。

 

まとめ

今回は、シンガポールの転職事情についてさらに具体的な傾向や対策について触れました。私もまだシンガポール歴は1年強ですので、大いに私見も混ざっていると思いますが、実際に体験したことをベースにしているので一つの参考になれば嬉しいです。

フェローズは、候補者一人ひとりの経験や志向、人柄などを理解しながら、企業のご紹介や面談準備のサポートなどを丁寧に行うことを大切にしています。シンガポールでの転職をお考えの方は、ぜひご相談ください。

 

次回はシンガポールにある企業について、さらに詳しくお伝えしてまいります。(内容は予告なく変更になるかもしれません)
引き続き当コラムをよろしくお願いいたします。

 

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
Twitter:@junya_oishi
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