深掘りシンガポール ~企業編~ #1
Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。第12回を迎えまして、月1連載の当コラムが1年間続いたということに気が付きました。小さなことでもコツコツと続けると達成感がありますよね。
さて第12回目のコラムは、シンガポール注目のスタートアップ企業やクリエイティブ関連企業、ユニコーン企業などについて書く、YouTubeでいう「深掘り動画」ならぬ「深掘りコラム」にしたいと思います。(ぱちぱち)といいつつも、わずか1年強のシンガポール在住経験での知識や経験では足りない部分もありますので、主に英文で書かれたローカルサイトを独自にリサーチした内容もふんだんに取り入れながら書きたいと思います。(もし「それはちがうぞ」というご指摘がありましたら、恐れ入りますが弊社のインフォか私のTwitter宛までご教示ください。)
■シンガポール発!?な世界的企業とは?
―Forbesが発表するBest Employerにて世界の750社の中にシンガポール発企業4社がノミネート。
Forbesは長者番付や影響力のある企業や企業価値など様々な視点で企業にランクを付けていることで有名ですが、パンデミックによりEmployer、つまり雇用主がどれだけ雇用者に対してケアを見せたかということについてBest Employerというランキング*を付けました。多くは中国やアメリカ企業が上位を占めているのですが、狭い国土のシンガポールからも4社がノミネートされました。
*元データ:Forbes WORLD’S BEST EMPLOYERS2021
(世界58カ国の多国籍企業や機関で働く約15万人のフルタイムおよびパートタイムの従業員を対象に、彼らが受けた待遇をもとに、自分の雇用主を他の人に推薦したいかどうかを評価)
参考記事:4 Singapore companies ranked among world’s best employers
まずはシンガポールの航空会社「Singapore Airlines」。シンガポールに旅行したことのある方であれば、利用したことも多いはず。“SQ”の名前で親しまれているこのシンガポールの大企業は、世界各国で数々の受賞歴があり、清潔さやホスピタリティの高さで人気のエアラインです。多くの航空会社がパンデミックの影響は避けられず、多くの従業員が給与をカットされたり希望退職などで会社を去ったりがあったと聞きますが、SQは国の投資家たちから160億ドルの支援を受け存続しました。私が実際にお会いしたことのあるSQの添乗員の女性は、当時「出勤が無く手当も減ったので、生活のためにアルバイトをしている」と言っていました。また別の男性従業員は、「ようやく航路が再開し、添乗回数がもどってきて忙しくなりそうだよ」と嬉しそうな顔をしていました。
次に紹介するのはシンガポールのエネルギー/都市開発企業の「Sembcorp(セムコープ)」。シンガポールに住んでいると街の至る所で見かけるのですが、深緑色のTrash bin(ゴミ箱的なボックス) で有名な企業です。どんな企業か知らなかったので、今回を機に調べてみました。Sembcorpはシンガポールを代表する政府系コングロマリットのうちの1社で、自然エネルギー、再生可能エネルギー、廃棄物の再資源化、水資源開発を主要なビジネスとしています。SQとならびパンデミックの影響を受けたというニュースがありましたが、こちらも政府系ということもあり資金援助を受け復調しているようです。寸評によれば、「働きやすい職場環境を持ち、従業員に十分なケアと能力開発の機会を提供している」と言われています。
その他2社は、大手銀行「DBS Bank」とローカルの食パンブランド大手「QAF Ltd」がランクインしていました。
■こんな企業もあるぞ!クリエイティブ発信な企業
―世界最高の携帯電話(スマホ)浸透率を持ち、消費者によるオンラインの利用が最も活発な国の一つであるシンガポールでは、ローカル発のクリエイティブ・デジタル企業が生まれています。
世界40カ国、主要OS・機種シェア状況 【2020年5月】
シンガポールは、韓国に次いで2番目のスマホ普及率 ※アウンコンサルティング調べ
まずはゲーム関連企業でこちらの2社。「Razer」はそのゲーミングデバイスで有名なシンガポール発の企業。特に有名なのはそのコーポレートカラーでもある蛍光グリーンを配色したゲーミングヘッドセットでしょうか。ゲーム好きの私は、最近ヘッドセットを購入したばかりなのですが、Razer社の製品もいつか試してみたい!
以前担当した、デジタルマーケティングが専門領域のとある求職者の方が「Razerに応募しているんだけど、たぶん落ちると思う」と悲観的になるほど、国内では絶大な人気を誇っています。社内には多くのクリエイターやデベロッパーを抱えている注目の成長企業です。
もう1社は「Secret Lab」。シンガポール人のIan Ang とAlaric Chooが2014年に設立したまだ新しいスタートアップ。そのロゴが背面に印字されたゲーミングチェアは、最近では日本のYouTuberが使用しているのを頻繁に見かけます。実はシンガポール発のブランド、ということを知らない方も多いのではないでしょうか?
その他にも、特筆しておきたいのが「UnaBiz」です。見逃せない企業の1社です。先日、約2500万ドル(28億円)の資金調達に成功したスタートアップで、主にIoTサービスを提供しています。日本や香港にもオフィスを構えており、Websiteを見る限り社員数も増えているのでとても勢いのある企業でしょう。弊社クライアントのAsteria社とサービス領域が同じなのでぜひクライアントとしてサポートができたらと考えています。
エンターテインメント業界ではJeremy Chuaの「Potocol」も個人的に注目しているチームの一つです。フェローズとも映画プロジェクトでつながりのある企業ですが、今夏Cannes Film Festivalにて“ある視点”部門で上映された映画「REHANA MARYAM NOOR」のプロデュースを務めました。バングラデシュ発の監督による作品です。
その他にもローカル発の企業として、フットウェアの「Charles & Keith」には、ロンドンの名門ファッションカレッジやZaraでのインターンを経験し独創的なアイディアをシンガポールに持ち帰ったフットウェアデザイナーのFirdaos Pidauがいるし、Eman とNadirahのタッグが開いたInk and Clog studio はその独創的なアイディアとイラストレーションでGoogleやMercedes-Benzともコラボレーションをしています。@thenextmostfamousartistというアカウント名で活動しているHafiiz Karimはデジタルアーティストとして、シンガポールの歴史上の人物やアートとの類稀なコラボレーションにより、世界中にファンを獲得しています。
このコラムでも何度か書いていますが「シンガポールは金融や海運で発展した国。クリエイティブは根差さない」というネガティブなコメントを見聞きしてきたのですが、このコラムを読むとそうでもない、いや、むしろ盛り上がっているんじゃないか?そう思えてきますよね。そしてFellows(仲間)という名前を持つ私たちが「クリエイティブの発展にかかわる同志」としてシンガポールでのつながりを作り、増やしていける予感がしています。この仕事の醍醐味の一つですね!
まとめ
今回のコラムを通じて初めて知った内容も多かったのではないでしょうか?私自身もとても勉強になりましたし、シンガポールにおけるクリエイティブ業界の発展の可能性が着実に広がり認知を獲得してきていることに好奇心が抑えられなくなりました。今日取り上げた企業とはコンタクトを試みていますので、もしつながることができたらインタビューをしてみたいと思いますし、さらに深く独占的な内容をお届けしたいと思います。
次回は今回取り上げられなかった企業、もしくは周辺東南アジアの企業についてレポートしてみたいと考えています。(内容は予告なく変更になるかもしれません)引き続き、当コラムをよろしくお願いいたします!
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