CMプロデューサーって

番長プロデューサーの世直しコラムVol.20
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

――●CM映像の撮影・編集・録音のすべてに関わり作業全般を指揮する総責任者が、CMプロデューサーである。●CMプロデューサーは、広告制作会社に所属し、広告代理店を通じて広告主から依頼されたCMの制作を具体的におこなう。広告代理店によって企画・立案されたCMの作品を、どのような映像表現にすればより効果的かを検討する。広告のイメージを想定した企画コンテをもとに、その作品にあった演出家をはじめ、カメラや照明、録音、編集の担当者等、制作スタッフを集める。ロケーション場所の手配や、スタジオの選定、編集や録音スタジオなど、仕上げまでのスケジュールを組む。●CMプロデューサーは撮影に立ち会い、広告主が求めている最適な映像が得られるように、撮影に細かく目を配る。また、こうした撮影に関わるすべての予算の管理もCMプロデューサーの仕事である。●撮影後、仮編集に基づいて、様々な画面処理を施して画像の最終的な編集作業に入る。映像の編集が終わると、録音スタジオに入りナレーションや音楽、効果音等の音声を入れ、CMの最終的な仕上げ作業に入る。CMプロデューサーの仕事は、演出家をはじめ、関連スタッフの感性を引き出し、より効果的なCMを創り上げることにある。●CMプロデューサーは、幅広い人間関係が財産となります。また時代を読み取る感覚と共に製作上の管理能力を求められる仕事です。――

自分の仕事、CMプロデューサーってなんじゃい?と思ってネットで検索すると上に書いたようなことが、どれも似たり寄ったりで丁寧に説明されている。「ふ~ん」と思う。言われてみればそうだな。平たく言えば正しいのだが、でも、この説明では何かが足りないような気がするのだ。上記の説明は、仕事がある場合のプロデューサーについて説明しているにすぎません。プロデューサーの本質論となるなら、語るべきことは変わってくると思うのです。

僕の中でのCMプロデューサーとは、そういうことの上に「何もない所から、仕事を獲得してくる」が加わるのです。加わるというかそれがないと上記のような作業すら、する機会もない。ゴマンといるCMプロデューサーの中から、広告代理店の制作の人が、誰か1人を選んで仕事を発注するわけですから。 1本数百万円から、時には1億円を超えるような予算の仕事だってある。家1軒買えるような金額の仕事を任せるには、それなりの理由がなければいけないはず。その理由を持ち、自分で仕事をいただいてくる人間だけがプロデューサーを名乗れるんだと思います。 プロデューサーはある意味個人商店であって、制作会社はその個人商店が有機的に集まって利益を生む組織であるべきです。会社や力のある上司から仕事をもらうプロデューサーは、ラインかアシスタントであって、プロデューサーではありません。

最近、そういったラインプロデューサーの人たちの悩みを聞くことが多くなってきました。いろんな言い方をするけど、結局、聞きたいことは一緒ですね。「どうやったら仕事をもらえるでしょうか?」――どんな仕事においても、まだそれができていない人の頭にはつきまっても不思議のない、素朴な疑問だと思いますが。 営業しろ、酒飲め、ゴルフしろ。そういうことばっかり言う、ノーアイディアな上司もいます。僕には、仕事を成立させるというテーマに沿ってお客さんにヒアリングしたり、悩み抜いた末に得たいろんな技術や戦略がテクニックとして細かくありますが、具体的にそれを書いてしまうと模倣犯が出てきて困るのでここには書きません。企業秘密。 でも、たいていの人が見落としている当たり前の考え方があって、悩める人に(実は自分でも悩んでいたりしますが)それを教えることはあります。

まず、自分が置かれている立場は自由経済の市場だということを認識する。自分はひとつの銘柄で、市場では(しじょう、ですよ。いちばじゃない)、競争力がないと市場からの退出を命じられます。で、チェックポイントは、その危機感と覚悟はあるのか?競争力とはどういうことか?他では手に入らない希少価値をもっているか?ということと、作り出す製品のクオリティが高く、価格的に割安感はあるのか?ということです。経済の原理です。当たり前のことなのに、それに気づいてない人が結構多い。 加えて、そういうことを前提に、自分のブランド力をつけるのが大事になってきます。この場合「ブランド」とは「一人前のキャラクターとしてピン立ちできているか?」ということと「信用の継続」を意味します。

あの人を呼ぶといつも仕事がうまく行く、予算内に収めてくれて上がりがいい、打ち合わせが活気づく、きついことも喜んでやってくれる、無駄な予算を使わない、部下も鍛えられていて動きがいい、事故が起きないようにちゃんと現場を管理する、気持ちをよく汲んでくれる、面白いことをよくしゃべる、無駄なことはしゃべらない、いい資料を沢山用意してくれる、流行に詳しい、まさかと思うようなスタッフがついてくる、ここぞという時は金をケチらず勝負してくれる、思いつかない発想をしてくれる、何にも増してCMを作るのが大好き。

そういう諸々を、ゴマンといるプロデューサーの中から自分を選んでくれたお客さんに継続して提供して信頼を得る。そして、そういうことができる人間だという風に人に知られていく。そうでないと、名指しの仕事はこないと思います。

営業も、酒の席も、ゴルフも、コミュニケーションとしてはとても大切ではありますが、そればっかりになっちゃっても寂しいものがあるでしょう。 上記のようなことを意識しない限り安心して仕事を任せようとは思ってもらえないでしょう。帰りにいつもビールをサービスしてくれるタクシーでも、行きたい場所までの道を知らなかったり、間違ったり、ましてや事故を起こされたりしたら、そんなの二度と乗りたくないのと一緒ですね。

CMプロデューサーは、発注者の気持ちを敏感に感じ取り、それを具現化していく役割なのですが、決して自分でなんかやる技術者ではなく、技術を持った人たちを束ねて、彼らがどれだけ相乗効果や化学反応を産みながら力強く効率的に、発注者の想像をちょっとだけ超えた場所で活動できるか?という場所を作る人間です。手配師。 一言で言うと「気が利いている人」ということですね。

長年プロダクションマネージャーをやったからって、小学校から中学校に上がるような気持ちでプロデューサーができると思っているだけじゃないのか?言われたことだけやって、それで仕事をした気になっているんじゃないのか?いつも何かのせいにして、その仕事の行く末は人任せや成り行きなんじゃないのかよ?

「いまいち仕事がない」?お前、いまいち気が利かないだけじゃねえの?と思うのです。

ということで、お仕事のご依頼をお待ちしております。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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