クリエイティブディレクターのオーヴィルさん
- Dig It! NYC Vol.58
- Dig It! NYC 藤井さゆり
アーティスト、フォトグラファー、エディトリアルデザイナー、アートディレクター、クリエイティブディレクター。クリエイター業としてはいずれも人気の職業ですが、今回はなんと、これら全ての肩書きを持った方にお会いすることができました。
その方とは、現在、ニューヨークでクリエイティブディレクターとして活躍中のイギリス人、オーヴィル・クラーク(Orville Clarke)さん。
これまでの代表的な経歴を少しご紹介しますと・・・
ロンドンにて、アーティストかつフォトグラファーとしていくつかのアートショーやレクチャーを開催。ニューヨーク移住後は、メンズスタイルマガジンのエディトリアルデザインとアートディレクション。そして、米国音楽の代表的ヒットチャート「ビルボード」が刊行するビルボードマガジン、世界的にも有名な権威ある広告コンクール「クリオアワード」のブランディングとマーケティングを含めたクリエイティブディレクション。米国エンターテイメント業界の情報誌「ハリウッドレポーター」プロモーションのための写真撮影とモーショングラフィックスの制作。
上記以外にも、Aolミニサイトのクリエイティブディレクション、エコノミスト社ニューヨークオフィスのインテリアデザインなど、ここには書ききれないほど数多く、幅広い仕事をされています。
そんなスーパークリエイティブな経歴を持つオーヴィルさんに「どうしたら、そんなふうになれるの?!」と単刀直入に聞きたい気持ちを抑えつつインタビュー。当のご本人はと言うと…びっくりするほど気さくな方でした。
これまでにたくさんのクリエイティブなお仕事をされていらっしゃいますが、どのようにして現在のキャリアを築いたのか教えて頂けますか。
スタートとしては、イギリスの大学で、ペインティングとグラフィックデザイン、写真を勉強したことです。卒業後、学生時代の作品を送った先から連絡があり、ロンドンで自分の作品展を開催したり、写真のレクチャーを行っていました。その時にやっていたことが好きだったので、ニューヨークでも同じ事をしたいと思い、1996年に移住。ニューヨークでは、自分の作品を気に入ってくれた人から声がかかり、その人たちからまた人を紹介されたことで色んな会社に出入りするようになり、仕事を受けるようになりました。
大学時代にグラフィックデザインを勉強されたということですが、コンピューターでのデザインでしたか?
いえ、その時はコンピューターではなかったです。後に、学校でクオークエクスプレスも勉強しましたが、当時、デジタルの世界はそんなに好きではありませんでした。
それではどのようにしてデジタルの世界に入ったのでしょう?
デジタルの世界に入るきっかけというか、面白い話があります。ニューヨークに来てから、フォトショップを教える仕事の面接を受けたのですが、あまり詳しくないのに「フォトショップ教えられます」と言って運良く採用されたんです。授業が始まる前に猛勉強しました(笑)授業中、生徒に質問されてわからないことがあると「それは、次の授業で教えるから」と言ってその場をしのぎ、帰ってから調べました。
本当ですか!そんな経験があったとは。
それによりフォトショップが詳しくなりましたし、デジタルの世界に入るきっかけになりました。モーショングラフィックスの制作は、アフターエフェクトを使っていますが、これはすんなり身につけることができました。当時、デジタルの世界はどんどんポピュラーになってきていましたし、ただ飛び込むしかなかったですね。
実際に飛び込んで、デジタルの世界でも幅広く活躍されてきたわけですね。
現在は、iPadマガジン、ウェブ、動画など、デジタルの仕事を多くやっていますが、私がやっていることはいずれもビジュアルに関するものです。クリエイティブディレクターという仕事は、デザインだけではなく、写真等も含めてビジュアルに関する全てのことを一緒に考える必要があります。それはこれまでに仕事としてやってきたアートや写真の経験が背景としてあり、それが活かされているのだと思います。
媒体は違っても全てがビジュアルワーク。それを軸に現在のキャリアを築かれたというわけですね。
そうですね。大学在学中、教授に「アート、写真、デザインなど自分がやりたい全てのことを仕事にしたいのですが、どんな仕事がありますか?」と聞いたら「そんな仕事はないよ」と言われました。その時、教授の言うことを無視したおかげで(笑)、現在は、その全てを仕事にできています。
教授を無視してよかった(笑)だからこそ今のオーヴィルさんがあるわけですね。ちなみに仕事の依頼は、やはり人の紹介で入ってくるケースが多いのでしょうか?
口コミ、人からの紹介がメインです。私のウェブサイトへ直接仕事の依頼が来る事もありますが、LinkedInからがほとんどですね。「ニューヨーク、クリエイティブディレクター」などと検索し、リンクトインの私のページを見つけて、連絡を取ってくる人が多いです。
特に自分でビジネスを持っている方にとって、LinkedInはアメリカでは必須ですね。ところで、オーヴィルさんのポートフォリオはビジュアル的にとても美しいのですが、クリエイティブアイディアはどのようにして涌いてくるのでしょう?
グラフィックデザイン、アート、エディトリアルに関係した本を読んで情報を入手しています。他には音楽を聴くことです。ロックやジャズを主に聴きますが、大衆向けではない、ちょっとユニークなアーティストが好きですね。
なるほど。それでは、仕事をする上で難しいと感じることは何でしょうか。
クライアントが何がほしいのかわからなかったり、指示が曖昧であったりする場合です。あとは、過去に作ったものを繰り返し使わないこと、同じような物を作らないようにしているのですが、これを貫くことで仕事を難しくしているかもしれません。
そういったポリシーがあるからこそ質の高いお仕事をされているわけですね。ところで、ロンドンとニューヨークでの仕事経験があるオーヴィルさんですが「これぞニューヨーク!」というような仕事上での経験はありますか?
ある会社のプロジェクトで、その会社に行ったら突然、そのプロジェクトを統括する部署がなくなっていたことです(笑)自分以外、みんな辞めてしまったらしいんです。プロジェクトは進行しているし、どうする?ってことになって、どうしても仕事がほしかったから「辞めた人たちの分まで全部自分でやります!」と言い切り、結果一人でやりとげました。
自分以外辞めてしまっていた、というシチュエーションはなかなかないですね・・・。しかも自分一人でやり抜いたというのがまたスゴイ!最後に、今後やってみたいプロジェクトはありますか?
30分位の短いものでいいのですが、オリジナルの短編映画を撮りたいです。今撮りかけているものがあるのですが、いつか近いうちに完成させたいと思っています。
最後の質問の答えが映画と返ってきたのがちょっと意外だなと思いつつ、やはりビジュアルに関するもの。アート、グラフィック、写真、雑誌、ウェブ、そして映画。オーヴィルさんのクリエイティブな活躍の舞台は、今後ますます広がっていくのでしょう。映画の完成も楽しみです。
気になった方は、オーヴィルさんのウェブサイトをぜひチェックしてみてください。ここで紹介した以外の作品が数多く見られます。クリエイティブアイディアの刺激になること間違いなしです。
■オーヴィルさんウェブサイト:otclarke.com ■オーヴィルさんリンクトインページ : Orville Clarke | LinkedIn
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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