深掘りシンガポール ~企業編~ #3
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。遅ればせながら2022年もどうぞよろしくお願いいたします。今年も引き続きシンガポールからASEAN地域のクリエイティブに関して私の目で見聞きしたものをお届けいたします。
さて第14回目のコラムは、前回の深掘りコラムで取り上げたゲーム産業の中でも「GameFi」というキーワードにフォーカスを当てて参ります。序章となりますが、このGameFiという言葉は日本ではポピュラーでしょうか?GameFiはGamingとFinanceを合体させた造語で、Fintech領域の一つとして世界中で注目を集めている新しいワードです。家庭用ゲーム機やPCゲームを通じてご存知の方もいるかと思います。あるいは、NFTゲームというワードなら聞いたことがあるという方もいるかもしれません。「ゲーム内課金か何かの類か」と思われるかもしれませんが、似ているようで異なります。“Earn to Play”という言葉の通り、ゲームプレイヤーはそのゲーム内で獲得する様々なアイテムを利用し育成するアバターや、貴重なアイテムを自分の財産として扱い、それをプレイヤー同士で売買できるようになります。GameFiはその取引をCryptocurrency(暗号通貨、仮想通貨)を使用して行います。暗号通貨は売却すれば現実のキャッシュとなるので、ゲーム内で稼いだお金=暗号通貨を現実世界のお金として使用できるようになるのです。
前置きが長くなりましたが、ここからはシンガポール国内のGameFi事情と企業についてお伝えして行きます。
■GameFi × Singapore
注目度の高いゲーム産業
前回のコラムで触れた通り、シンガポール発のゲームデベロッパーは多くありません。一方で、シンガポールと言えば金融産業がメジャーな国。金融領域では多くのリソース、経験、そして人材が揃っています。その中から既存のBanker(銀行マン)の範疇を飛び越え、ゲーム領域へその主戦場を変えてきた人たちがいます。
Finance業界出身のFelixとGame業界出身のWesleyが2021年に立ち上げたスタートアップ、Salad Venturesが興味深いのは、NFTゲームを開発しているのではなく、そのプレイヤーを教育、育成する“学校”のような場をサービス提供していること。Scholar(学生)を育てNFTゲーム内で稼げるようにしているのです。先日200万米ドルを調達し、年内にも1000人のプレイヤーを輩出しようとしており、現在注力しているゲーム、Axie Infinityのほかにも対応ゲームを増やそうとしています。
■シンガポールのゲーム市場規模
シンガポールには約3.8million (380万人)のゲームプレイヤーが存在する
過去のコラムでシンガポールの国土面積や人口について触れましたが、ゲーム市場を専門にリサーチしているNewzoo社の2020年の発表によると、約600万人というお世辞にも大きいとは言えない人口の50%以上の人たちがゲームを楽しんでいる、とのこと。通常、一人が複数タイトルをプレイすることを考えると、シンガポールにとっては非常に大きな市場、と言えます。私自身もこの数字には驚きを隠せませんでした。Covid-19の“功罪”と言えるかもしれませんが、自宅に留まることが増えた環境変化自体が、より多くのシンガポール在住者をゲーム画面へ向かわせたのかもしれません。世界的にメガヒットしたMinecraftやAmong Usなど、友人たちと気軽に楽しめ、(意外にも)奥深いタイトルの登場もゲームユーザの増加を加速させていると想像しました。実際に私自身も新しいコンソールを購入してゲームを楽しんでいます。
■今後のシンガポール国内のゲーム産業の成長や盛り上がりを予想してみる
シンガポール発のベンチャーキャピタル、DeFiance Capitalの運用資産額は10億ドル規模
ゲームプレイヤーの育成や輩出を手掛ける企業が生まれている一方で、そのゲーム市場自体の成長に対して影響力を発揮しようとしている企業も生まれています。シンガポール発のベンチャーキャピタル、DeFiance Capital社は2020年に暗号通貨に特化した投資ファンドとして始まりました。数多くのベンチャーキャピタルがある中でこの特化型のビジネススキームは、今後のNFTゲームへの注目度、期待値の高さを物語っています。
また昨年に世間を驚かせたFacebook社の社名変更に代表されるように、メタバースへの注目度も国内外で高まっています。メタバースとゲームの親和性は高く、すでにゲーム内で自分に模したアバターをアイテムで装飾し、「自分だけのモノ」でプレイを楽しめるタイトルも出て来ています。メタバースは新しいものと思われがちですが、以前から仮想現実、という形で存在していました。近年はその技術向上により、あたかもインターネット上に自分たちが存在するかのように振る舞うことができ、ゲーム以外にもショッピングやスポーツ、会社のオフィスなどにも設置できるようになっています。巨大な市場になり得ることは想像に難くないのですが、今回のコラム執筆を通してより現実的に、より近い将来に起こる大きな変化の一つとなると確信しました。
まとめ
弊社フェローズは、人材派遣、人材紹介、業務委託などクリエイターと企業がつながるお手伝いや、スキルアップのためのセミナーの開催など、ゲームもさることながら、映像、Web、広告・出版、アニメ、空間デザインなど、様々な分野のクリエイターを支援しています。上記で触れてきた今後のゲーム業界に起こり得る“地殻変動“により、新しいクリエイターが生まれてくるでしょうし、同時に新しい作品を世の中に発表したり、あるいは作品をNFTとして資産化し取引を始めるクリエイターも増えるでしょう。もしかすると私が想像するフェローズは近い将来にそのNFTに関わる新しいビジネス、新しいサービスを開発するかもしれません。し、それを始めるのは私、、、かもしれません(笑)。
日本でも暗号通貨やFintechなどのワードは耳にすることが多いと思いますが、苦手意識を持つ方もいるかもしれません。私もその内の一人でした。しかしこの暗号通貨やGameFiのようなFintechも、今後クリエイティブ業界に多くの恩恵をもたらすでしょう。ゲーム業界とは異なりますが、私が本社で携わっていた日本の映像放送業界では、例えば映画監督やテレビディレクターなどは企業やスポンサーに帰属することも多く、自ら作り出した作品を自身の資産とする権利を持てない人々は少なくありませんでした。ゲーム、映像、アート、音楽などのクリエイティブ分野で活躍するクリエイター一人一人の「作品」を財産として個人が保持できるような世界になることを一人のエージェントとして願っています。
ソース:
https://www.straitstimes.com/business/companies-markets/rise-in-play-to-earn-gaming-craze?close=true
https://www.wealthbriefingasia.com/article.php?id=193393#.YeVLzf7P02z
https://en.as.com/en/2021/11/16/latest_news/1637073058_265334.html
https://finance.yahoo.com/news/orbitau-ray-hope-game-fi-112500625.html
https://www.techinasia.com/sg-startup-launches-the-udemy-of-gamefi
https://www.salad.ventures/ecosystem
https://blog.felixsim.com/apollo-squad-bb784bcc760c
https://kaopiz.com/ja-news-what-is-nft-game/#2
https://games.lionbridge.com/ja/blog/10-cities-for-global-gamers-to-watch/
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