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- Dig It! NYC Vol.32
- Dig It! NYC 藤井さゆり
インターネットを通じて、国や人が近くなるのを日々実感している今日この頃ですが、それに加え、3.11の震災の影響により「人のために何かをしたい、社会貢献をしたい」という気運が高まっているような気がします。
東北地震以外に、ニュージーランド地震、ハイチ地震など、昨今、世界的に見ても大きな災害が多発していること、今問題となっている原発も日本だけのものではなく、クリーンエネルギー等も含めて世界で考えていくべきことであり、そういった意識を持つ人が増えているということは、世界的な流れとしてあると思います。
堅い前置きはこのくらいにして、今回は、“人のためになって、おもしろくって、何よりクリエイティブ!”なSNSを見つけましたので、ご紹介したいと思います。
その名も 「Kickstarter (http://www.kickstarter.com/)」。 音楽、アート、映画、デザイン、プロダクツなど、クリエイティブなアイディア・プロジェクトを持った人がウェブ上で資金を募るというシステム。実現させたいアイディアがあるけど、資金がない、出資者が見つからない、といった場合に、Kickstarter上で広くアピールし、そのプロジェクトに賛同した人から出資をしてもらう、というもの。
アイディアを実現させたい人は、Kickstarter上でプロジェクトを動画と文章、画像でプレゼン、そのプロジェクトに必要な目標額を設定し、資金を募ります。厳しいことに、目標額に達しなかった場合には、資金調達は得られません。目標額を越えた場合のみ、出資額が手に入ります。なので、実現させたいプロジェクト内容の吟味、プロモーションビデオはできる限り魅力的にする、というのが非常に重要そうです。
出資者はそのプロジェクトに出資したいと思ったならば「BACK THIS PROJECT」をクリックし、出資金額を支払います。目標額に達した場合には、きちんと出資者へのリターンがあります。出資額によってリターン内容が設定でき、出資額が高くなるほど大きなリターンがあります。もし、出資者が目標額に達しなかった場合、出資した金額は返金されます。出資者はまったくリスクがありませんので、気軽に出資できそうです。
たとえば、NYからのプロジェクト「The Oona: Whatever You Need It To Be」(http://kck.st/jlc41L)は、iPhoneなどのスマートフォンの背中に取り付けて、それをスタンドにできますよ、というもの。
スマートフォンをカメラとして使用する場合三脚に付けたり、ナビとして使用する場合には車のウィンドウに取り付けたりと、便利そうなアイテム。
出資者へのリターン: 1ドル以上の場合-ツイッター上で感謝 25ドル以上の場合-Oonaを1つ進呈&ツイッター上で感謝&ポストカード送付 50ドル以上の場合-ナンバーの付いたゴールドの限定版Oonaを1つ進呈&ツイッター上で感謝&ポストカード送付 250ドル以上の場合-通常のOonaとゴールドの限定版を進呈&アナタのプロジェクトをビデオ編集とデザインで10時間以上サポート。
と、こんな具合に、出資額ごとに出資者へのリターン内容が設定されています。このプロジェクトは2011年5月末時点ですでに目標額10,000(約80万8千円)ドルを大幅に越え110,911(約8,969万円)ドルに。目標額の1,106%の出資があったということで、驚きです。もちろん、出資者は提示されている金額相当のリターンを受け取ることができます。
出資者は「BACKERS」としてリストされ、コメントも残せます。このプロジェクトの「BACKERS」は、3,330人いて、250ドル以上の出資者は7人もいました!このOona、かなりのニーズがあったということが証明されています。
このようにKickstarterでは、資金調達も併せて、プロジェクトについて興味を持った人、買いたいと思った人との意見交換ができる、というマーケティングの要素も持っています。
もう1つNYからのプロジェクト 「The Pitch: The Game of Graphic Design」(http://kck.st/kjO5nv)では、グラフィックデザインを知らない人へ、その仕組みを理解してもらうためにゲームを開発。ゲームを楽しみながら仕組みを理解できます、というもの。
コンセプトは面白いし、デザイナーさんとしては「家族や友達、クライアントにグラフィックデザインのことを理解してほしい!」という気持ちがあるのもわかりますが、グラフィックデザインの仕組みを一般の人が知りたいというニーズがあるのでしょうか、という疑問が…。どちらかと言うとデザイナーさん側がやりたいと思うかも。デザインはカッコイイですね。
ちなみに目標額は10,000(約80万8千円)ドル、2011年5月末現在で3,642ドル(約294,528円)の出資、36%の出資率。期間まではあと20日以上あるので、まだまだこれから、と言った感じです。
紹介ビデオがファンキーで面白かったのが、「Freaker USA-Making You & Your Beverage Cooler!」(http://kck.st/ejq3TW)。
ビデオを見てもらえばわかりますが、飲み物をカバーして冷やすもので、商品名は“Freaker”と言うのだそうです。布製で伸縮性があるので、どんな容器でもすっぽり包み、また、おしゃれでサスティナブル!といった様子。
48,500(約3,992万円)ドルがゴールで、2011年5月末現在で出資額は22,617(約1,829万円)ドル、46%の出資率です。期限まであと8日間しかないので、ちょっと実現は難しそう?!
ちなみに、自分のプロジェクトの出資を募る場合には、アメリカに口座がある人のみ。ですが、プロジェクトに出資することは日本からでも可能です(※Kickstarterアカウントとアマゾンアカウントが必要)。どのプロジェクトも1ドルから出資可能なので、ちょっと覗いてみて、面白いプロジェクトを見つけたら出資者になってみてもいいですよね。人が実現させたいアイディアのために出資することは、それだけで社会貢献だと思います。
出資しなくても、面白いクリエイティブなアイディアがたくさんありますし、プロモーションビデオもクオリティが高いもの多し。プレゼンの参考や、アイディアの刺激になりそうです。ほんとにいろいろと面白いアイディアがあるので、見ていて楽しいですよ。日本人もプロジェクトに参加できる日本語版ができるのを切に希望します!
■Kickstarter:http://www.kickstarter.com/
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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