ルーム・フォー・ロンドン
- ARTY FACT LONDON Vol.70
- ARTY FACT LONDON コウヅマノエ
目の前には、ロンドナーの足でもある通勤用高速フェリーが往来するテムズ河。対岸の遊歩道には、のんびりと散歩を楽しむ老夫婦や、ランチタイムにランニングをするサラリーマンの姿も見えます。またすぐ左は、今やロンドンのランドマークとなった大観覧車、ロンドンアイ。その先には、ロンドンで最も有名な観光地、大きな時計のビッグ・ベンや国会議事堂などのイギリスを代表する世界遺産が見えます。右手には、セント・ポール寺院を背にロンドンの摩天楼が広がっています。近未来的な超高層ビルが並ぶシティの夜景の美しさはまた格別です。 こんな数えきれないほどの観光名所が溢れるロンドンの景色を全て貸し切り、独り占めできてしまう場所がテムズ河の南岸にできました。
アート複合施設が並ぶサウスバンクのクイーン・エリザベス・ホール屋上に「ルーム・フォー・ロンドン」(http://www.aroomforlondon.co.uk/)という名前で突然現れた船の形、というか、小型の船のホテル。
今年1月から12月までの1年間だけの期間限定で、1泊120ポンドから、一日一組2名まで宿泊可能という船内は、1階にロンドンのパノラマが視界いっぱいに広がる寝室、小型キッチン、浴室トイレが配置され、梯子でアクセス可能な2階には、小さな図書室とバルコニーがあります。
この小型船ホテルですが、実は、500以上集まった公募の中から選ばれたというアート・インスタレーションなのです。 2002年のターナー賞候補者に選ばれたアーティスト、フィオナ・バナー(http://www.fionabanner.com/)とデイビッド・コーン建築事務所(http://www.davidkohn.co.uk/)によるコラボレート作品で、「イギリスの首都内で最も可視度の高い場所に、最高二名までがユニークな一夜を過ごすことのできる部屋を作る。」というお題に対して選ばれたこのデザインは、イギリスの作家「ジョゼフ・コンラッド」が、英国船員時代にコンゴ川で得た経験を元にして1800年代に書かれた代表作「闇の奥」からインスピレーションを受けて作られたものだそう。
このホテルの図面を見ていると、凍てつくような冬の日は、図書室で一日のんびりと読書し、長い夜には、温かいホットチョコレートを飲みながら夜景を楽しむ。夜遅くまで明るい夏場は、バルコニーでビールを飲みながら、テムズ河を行き交うボートをぼんやり眺めたり・・・。 などと勝手に妄想がふくらみます。
いつも見ている風景とはちょっと違ったロンドンが眺められる「ルーム・フォー・ロンドン」、今年1月から6月までの宿泊予約は、残念ながらすでに終了してしまいました。昨年9月に予約申し込みを開始後、なんと12分で即売り切れになってしまったそうです。 が、まだこのホテルに宿泊できるチャンスあり!今年7月から12月分までの宿泊申し込みが、今月19日スタートになるそうです。ご興味のある方はぜひトライしてみてください。 しかし、ロンドン・オリンピックも控えたこの期間。予約の競争率は、さらに高くなりそうですね~。 このホテルに宿泊できたラッキーな方、ぜひ感想をお聞かせください。
Profile of コウヅマ ノエ
女子美術短期大学卒業後、デザイン事務所勤務。その後、雑誌『エルジャポン』のデザイナーを経て、フリーのグラフィックデザイナーとして様々な雑誌のデザインを手掛ける。2003年に渡英し、ロンドンにあるRavensbourne CollegeでInteractive digital Media の修士号を取得。現在は南ロンドンで様々なプロジェクトに参加しつつ、ロンドン生活を満喫中