職種その他2022.04.06

NYのミシュランシェフもお墨付き!日本人が生産するアメリカで生まれたブランドいちごOishii

Vol. 35
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり

先日、Fast Companyによる「2022年最も革新的な食品会社10社」が発表されていたのですが、その中で目を引いたのがOishiiという会社。Oishiiは、日本人が起業したアメリカで日本品種のいちごを栽培・販売するスタートアップです。

 

 
 
 
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「なぜアメリカで日本品種のいちごを?」と思われるかもしれません。

 

 
 
 
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上記はOishiiが生産する日本品種の“The Omakase Berry”というブランドいちご。

 

日本には、あまおう、スカイベリー、紅ほっぺなど、美味しいブランドいちごがたくさんあり、甘くてジューシー、色艶や形も綺麗ですよね。しかし残念ながら、アメリカで売られているいちごにこのような品種のものは見かけません。スーパーで売られているいちごは、甘味があまりなく硬いのです。パックの中にゴロゴロっと乱雑に入れられ、形が崩れたものやカビが生えているものも見られます。

 

これは、アメリカのいちごは長日(ちょうじつ)栽培品種のもので、夏の間、屋外の暑い環境で育てられ、量を多く栽培することを目的としており、硬く、ジューシーさもなく、かつ、長距離輸送に耐えられるよう栽培されているからだそうです。これに比べて、日本のいちごは短日(たんじつ)栽培品種と言って、冬に栽培される冬の作物であり、柔らかくジューシーだけれども、長距離輸送には不向きなのだそうです。

 

ここにビジネスチャンスがあるのでは、と目を付けたのがOishiiの創立者である古賀大貴さん。古賀さんは、アメリカで「甘くてジューシーな日本品種のいちご」を生産、流通させることに成功、NYのミシュランシェフや食通、インフルエンサーを虜にしました。

 

女優のグウィネス・パルトロウがThe Omakase Berryをテレビ番組で紹介している様子。

 

 
 
 
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先日行われたアカデミー賞授賞式で、The Omakase Berryが提供された様子。

 

 
 
 
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The Omakase Berryは、農薬を使わず、従来の方法に比べていちごの環境への負荷を軽減する「垂直農法」を採用し、ニューヨーク、ニュージャージー、ロサンゼルスにある屋内農場で栽培されています。商業規模で屋内垂直農法を採用し果物を栽培する企業としては、世界初だそうです。屋内農場は、春の日本アルプスの気候を再現しており、山脈の「小雨、涼しいそよ風、明るい太陽」を模倣するように気候が維持されています。

 

 
 
 
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上記は屋内農場の様子。

 

また、AIを利用したロボットを採用、いちごの健康状態と収穫量の分析を報告し、いちごの熟度がピークに達する時期を判断するそうです。The Omakase Berryは、「甘くてジューシーな」日本品種のいちごが栽培できるようにテクノロジーを使って、科学的に整えられた環境の中で生産されたものだったんですね。実際に、The Omakase Berryはアメリカで売られている通常のいちごよりも2〜3倍は甘いそうです。ちなみに値段は中サイズ11個入り、大サイズ8個入りどちらも1パック$50(約6,000円)。「ラグジュアリーないちご」という認識です。

 

下記は、朝の番組で「普通のいちご」と「The Omakase Berry」、どちらが甘いかをテストしているシーン。「Aはとても甘い、Bは見た目はいいけど甘くない」と言っていますが、どちらがThe Omakase Berryでしょうか?

 

 
 
 
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ちなみにOishiiは、2021年3月にシリーズAで5000万ドル(約60億円)の資金を調達。企業価値の高さやThe Omakase Berryの人気ぶりが伺えます。

 

また、私が面白いと思ったのは、OishiiのInstagramです。The Omakase Berryを使ったいちごのカクテル(スピリッツメーカーとのコラボ)や、NYのレストランシェフによる意外な食材とThe Omakase Berryを使った逸品料理、はたまた、小津安二郎監督の映画作品のワンシーンを掲載したり、いちごのデザインのジャケットやいちご柄の洋服、ASMRなど、遊び心やポップさを感じる投稿となっていて、見ていて飽きません。

 

 
 
 
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Oishii@oishii.berry – Instagram

 

以前にもアメリカにある様々な業種やブランドのスタートアップ、ビジネスをご紹介してきたことがありますが、いつも思うのは、Instagramを使ったブランディングが上手だなということです。OishiiのInstagramは、コピーも上手だなと思いますし、商品やブランドそのものの魅力がすごく伝わってきます。

 

ちなみに、日本のブランドいちごでInstagramをやっているところを見つけられなかったのですが、なぜなのでしょう?何か制約があるのでしょうか。Facebookをやっているところはありましたが、そのFacebookページでは商品の魅力にフォーカスしているというよりも「◯◯とコラボしています、こちらのデパートで期間限定でお楽しみ頂けます」といったプレスリリース感が強い印象でした。また、あるブランドいちごのウェブサイトで、産地の知事メッセージや、PRをする女性たち、いわゆるキャンペーンガール(キャンペーンガール的な存在も今の時代必要なのか謎ですが)のメッセージを「トップページで」紹介していることに違和感を持ってしまいました…

 

とにかく、一人の日本人がアメリカで日本の素晴らしいところや強みを活かしてビジネスで成功されているということが嬉しいですよね。日本の技術や文化は世界的に見ても素晴らしいと思いますし、まだまだ世界で成功できるビジネスチャンスが埋もれているのではと思います。それと共に、フードテックはこれからますます注目される分野となりそうです。下記動画内でのインタビューによると、古賀さんは、今後トマトなど他の野菜を手掛けたいそうです。Oishiiの今後が楽しみですね。

 

How This Indoor Vertical Farm Makes Perfect Japanese Strawberries — Vendors Eater – YouTube

 

(参考、引用)

 Oishii – Our Story

 How This Indoor Vertical Farm Makes Perfect Japanese Strawberries — Vendors Eater – YouTube

Fast Company – The 10 most innovative food companies of 2022

Fast Company – Meet Oishii, the Tesla of strawberries that could upend the $1.3 trillion produce market

Business Insider – See how these rare, $50 ‘luxury’ strawberries are grown in vertical farms designed to replicate the Japanese Alps with bees and AI robots

Linkedin – Hiroki Koga

プロフィール
FIND IT. LOVE IT.
藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。 https://lnk.bio/foxylilly Instagram: @foxylilly

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