WEB・モバイル2009.08.05

パーティーとクリエイティブの関係

Dig It! NYC Vol.10
Dig It! NYC 藤井さゆり

ニューヨークに来たらとりあえず行っておこうという世界的有名な美術館第1位。 おそらくそれはMOMAでしょう。

そのMOMAに、姉妹美術館があることをご存知ですか?

MOMAの姉妹美術館「P.S.1 Contemporary Art Center」

MOMAの姉妹美術館「P.S.1 Contemporary Art Center」

マンハッタンから地下鉄で川を渡ってすぐのところ、クイーンズのロングアイランドシティーに、MOMAの姉妹美術館「P.S.1 Contemporary Art Center」はあります。

そのP.S.1で、毎年夏だけ「Warm Up」と呼ばれるパーティーが毎週土曜日に開かれているんです。

美術館でパーティー?!そりゃ、面白そう!ということで行ってきました。

アートとパーティーが合体したこのイベント、いかにもニューヨーカーが好きそうなイベントです。もちろんアートを見るのも楽しみですが、ビールを飲みながら音楽を聞くのもよい感じです。

基本的にはバンドとDJが入ったパーティーですが、午後2時?午後9時までの開催時間なので非常に健康的。美術館の前にある大きな中庭を会場にしているので、屋外でもあり、太陽の下開放的な気分を味わえます。私が着いたのは午後4時でしたが、会場中央部ではダンスしている人たちもいてけっこう混雑していました。

美術館の名前である「P.S.1」は、もともと学校だった所で(P.S.はパブリックスクールのこと)、後に美術館としてリフォームされました。「Warm Up」は1997年から開催され、2000年よりMOMAと提携されたのだそうです。実際に入ってみると学校の雰囲気はそのままに、もと教室であっただろう部屋にアートが設置されています。

会場に設置されたオブジェ“afterparty”

会場に設置されたオブジェ“afterparty”

美術館に設置されていた少々前衛的な趣きのアートもけっこう面白かったのですが、一番面白いと思ったのは、会場を覆うように設置されていた巨大屋根型オブジェ。毎年この「Warm Up」のために建築デザイナーによって制作されるこのオブジェは、コンペによって決められるそうです(制作予算は7万ドル)。今回最後のコンペを勝ち抜き、このオブジェを制作したのは、MOSと称するアメリカ人デザイナーの2人組 。

その屋根型オブジェの下に座っていると、突然上から霧のような細かい水が――。雨かな?と思ったら、オブジェの高いところにミストシャワーが設置されていて、それが肌に気持ちよくかかっていたのでした。 実は、このオブジェはシェルター(避難所)をイメージして作られており、中央部のダンススペースから逃れたいときはここのミストシャワーでクールダウンできるのが特徴なのだそうです。

後方に見える建物が美術館。 ステージ上でドラァグクイーンがビーチボールを会場に投げています

後方に見える建物が美術館。
ステージ上でドラァグクイーンがビーチボールを会場に投げています

午後2時?午後9時という開催時間を考えると高校生でも参加できそうなイベントですが、「コンテンポラリーアート」という枠のためか、年齢層的には高め。小さな子供連れの若い夫婦、ゲイカップルも多く、みんなビール片手におしゃべりに夢中。自由な雰囲気のするパーティーでした。

“学校を改築して美術館に”、“毎年パーティーのための巨大オブジェを設置”、“美術館でパーティー”というアイディアは、「なんか面白いことやっちゃおう!」というノリ、“遊び”が感じられてなんともニューヨークらしいですね。

アート=楽しい、パーティー=楽しい、アート+パーティー=さらに楽しい! そんな図式ではないでしょうか?

“美術館でアートを観賞する”には、難しいことは不要。 美術館で、パーティーしたって、ダンスしたって、ビール飲んだって、いいんです!ダンスして、いろんな人と楽しい時を過ごして、頭上には巨大なアートオブジェ。 これも“アートを楽しむ”の1つですよね。

型にはまらないのが、ニューヨーカーのいいところ。

ニューヨーカーは本当にパーティー好きですし、よく遊びます。遊ぶことがクリエイティブ活動によい影響を及ぼしていると言えるかもしれません。パーティーで人と会ってコミュニケーションすることにより、クリエイティブなアイディアが浮かぶこともあるでしょう。

クリエイティブは“遊ぶこと”そして“楽しむこと”から生まれる、そんな気がしています。

■ MOMAウェブサイト ■ P.S.1 Contemporary Art Centerウェブサイト

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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