深掘りシンガポール~ブロックチェーン、NFT、Web3.0編~
Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第20回目のコラムです。切りのいい20回目からは新しいシリーズとしてシンガポールのWeb3.0やブロックチェーン、NFT関連についてまとめていければと思います。初回は「ブロックチェーンやNFT、Web3.0 の現在地とシンガポールの現状」をお届けします。知れば知るほど奥が深いクリエイターと彼らを取り巻く世界!
■あらためて“ブロックチェーン”っていったい何!?
このコラムを読んでくれている方々は、フェローズの登録者が大半だと思いますので、ブロックチェーンについてはよく知っている方も多いと思いますが、詳しくはない、という方に向けて念のためブロックチェーンの説明から始めます。
ブロックチェーンとは、ブロックと呼ばれる単位でデータを管理しそれを鎖のように連結して保存する「技術」のこと。ブロックチェーンとはデータ保管・管理する革新的な技術で、主にビットコインなどに代表される暗号資産(またの名を仮想通貨)を実現するために開発された技術でもあります。
押さえておきたいポイントは、「特定の管理者がいない」「データ改ざんが困難」そして「システムがダウンしない」という3つです。暗号資産の多くはユーザー同士で直接取引が行われておりますが、この取引履歴を記録するためにブロックチェーンの技術が使われています。それぞれのブロックにはハッシュ値と呼ばれるタグがついていて、データ改ざんなどの不正や攻撃を受けた場合は、それ以降のブロックのハッシュ値が変わるようになっています。つまり、過去の取引を改ざんしようとすると、それまでのハッシュ値との整合性がとれなくなるため、取引履歴から不正や攻撃を発見することが可能となります。前述の通り、ブロックチェーンの技術開発は、オンライン上の取引を安全に行えるようにするためのものでした。
現在までに、ブロックチェーン技術はその汎用性が注目され、多方面での活用が進んでいます。金融分野に限らず不動産分野、エンタテインメント分野などで多くの企業やサービスが生まれています。
■シンガポールのブロックチェーン技術を利用したサービス
金融分野以外にも活用の裾野を広げつづけているブロックチェーン技術ですが、シンガポールでも同様に多くの企業が誕生していて、IT系情報サイトのHackernoonによると、2019年時点で既にその数は約634社でした。その中でも、注目のサービスを3つご紹介いたします。
・Yojee
人工知能(AI)とブロックチェーンを活用したシステムにより、物流・サプライチェーン業務の自動化とセキュリティ向上を実現するプラットフォームです。
・Electrify
シンガポール初のエネルギーマーケットプレイス(サービス)です。消費者がエネルギーの小売業者にアプローチすることなく、プラットフォーム上でオプションを比較したり、スマートコントラクトによりプロバイダーとの取引を直接確保・承認することで、中間業者によるコストを排除することができます。消費者は、Electrifyの暗号通貨ELECを使用して取引を行うことも可能です。
・Bluzelle
Bluzelleは、主に高品質なゲームの制作、プレイヤーのNFTの保護、DeFiの利回りを活用できるGameFiのためのブロックチェーンです。「データスペースのAirbnb」と謳われることもあり、ユーザーは自分のコンピュータの余分なスペースを共有することで報酬を得ることができます。またユーザーは、安全で透明性の高いスマートコントラクトを使った取引も可能で、まさにGameFiのような今後注目されている業界にて一目を置かれる存在になりそうです。
■クリエイティブ分野のサービスはある??
シンガポールでBlockchain-baseのサービスを展開している分野で注目したいのはやはりGame関連です。Play to earn(遊んで稼ぐ)というワードは以前私のコラムでも触れましたが、ゲーム産業とブロックチェーン技術の親和性はとても高く、多くの投資家や起業家も注目しているでしょう。
最近のシンガポール内での関連ニュースとしては、ETHLAというゲーム領域のスタートアップが270万USドルのシード資金調達を獲得したことでしょう。
ブロックチェーンゲームファイナンス(game-fi)分野のこのスタートアップはGennady MedvinskyとElston Samによって設立され、ゲームをプレイしながら暗号資産トークンを獲得する仕組みをユーザーに提供しています。キャンディークラッシュやテトリスのような2Dグラフィックスのゲームです。
ログインしてプレイを開始するために必要なのは暗号通貨ウォレットのみで、ユーザーが容易にスタートできるサービスづくりに取り組んでいるようです。実際にブラウザで起動してみると親しみやすいインターフェースが表示されます。
■さらにアーティストよりのサービスも・・・
Play to earnのようなゲーム領域だけではなく、よりアーティスト寄りのブロックチェーン技術を活用したサービスも増えています。NFTアートが一つの注目ワードになってきそうですが、それ以外にもミュージシャンやセレブリティとブロックチェーン技術の組み合わせによって、彼らとユーザーをより近くにつなげる働きをしそうです。
実際にシンガポールではそういった関連のサービスを展開しているスタートアップがオフィスを構えています。
SingSingはブロックチェーンを利用した音楽アーティストのためのコミュニティプラットフォーム。このプラットフォームでは、アーティストが自分の楽曲のNFTを販売することができます。また、NFTを売買するためのマーケットプレイスプラットフォームも提供しています。
MangaTokenは新しい「漫画」の世界を提供しています。ブロックチェーンベースで、漫画家は自分の漫画をNFTとして投稿し、それに対してユーザーがアクセスできるようにしています。簡単に言えばこれまでよりもユーザーがNFTを通じて直接的に「好きな漫画家をサポート」できるようにするプラットフォームです。
このほかにも多くのスタートアップが生まれていますが、暗号資産をやりとりする関係上、シンガポール当局も前向きな規制や管理を始めているところのようです。実際に多くの企業がライセンス申請をしているものの、その申請が受理されているのは一握りのようです。
まとめ
今回はシリーズ初回ということでブロックチェーン技術の振り返りやシンガポールの企業、そして具体的なサービス、クリエイティブ領域での実態について書いてみました。次回は日本のブロックチェーン技術活用した(Blockchain-based)サービスや企業、そして規制やルールについて調べてまとめてみたいと思います。
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