宿泊療養の施設に入って考えた
ついにコロナにかかってしまいました。
今は西新宿のホテルの高層階でこの文章を書いています。
このコラムの編集者から今月分の内容どうしましょう?のメールをいただいて
そのメールの書き出しに、
「私の周りの人たちがバタバタとコロナにかかって行きます。
サクラギさんは大丈夫でしょうか?」
と書いてありましたが、ちょうどコロナにかかっている事が検査で
わかった時でした。
3年もかからないように頑張ってきたのに、悔しいですね。
なんでかかったのか、誰からもらったのかもよくわかりません。
ただ仕事が忙しくて、対面でやることが多い一週間があった。
1日に新規の感染者が東京都だけで3万人、みたいな時期になって
公共の交通機関を使うなら、感染する覚悟が必要。という状況にもなった。
コロナに罹るとどうなるか?
かかった人はもうご存知でしょうけど、罹ってないと結構想像するのも難しい。
まず、体調が悪くなる。
僕の場合は、撮影などの仕事が続いたため、現場の抗原検査キットで調べたら
陽性だったので、念のためにと病院に行ったのですが。
無症状に近いとはいえなんだか経験したことのないような気分の悪さ。
熱中症かもしれないなあ、冷房つけっぱなしだしなあ、とか言い訳を考える。
コロナじゃなきゃいいなあ。なんとなく気合が入らない。
行きつけのクリニックが発熱外来をやっていたのでそこで検査したら、はい陽性!でした。
陽性の判定が出た検査キットをスマホで写真を撮らされる。
保険の申請にいるんだそうです。
病院で陽性が確定すると、(今はPCR検査じゃなくても抗原検査でも医者が
判断すると陽性)病院から区の保健所に連絡が行く仕組みになっています。
保健所から、細かく聞き取りの電話がかかってきて、そのあとどう動くか
自宅で療養するのか、入院か、自宅外のホテル療養に入るか?など、保健所から
指示があることになっていたんだけど、患者の増え方が凄すぎて、保健所から
連絡はなし。電話番号にショートメールが来て注意事項の書いてあるURL が
貼り付けてあるだけ。読めよ。と。
そしてリンクを開くとなんだか経過観察のページに飛んで、送られてきたIDを
登録してその後の体温などの経過を入力することになっています。
次に、家族にうつしたくない人のために、宿泊療養という施設が用意されています。
つまりは、東京都が借り上げたホテルに、陽性患者をある時間隔離する。
という比較的程度の軽い人向けのシステム。
これは陽性が確定した時に、希望するのなら、自分で東京都のこの宿泊療養の係に
電話して交渉することになっています。
保健所とのリンクはなく、診断を受けた病院に東京都から確認の電話が行き、
施設に入る権利が発生します。
いろいろ今の状況の聞き取りがあり、家族構成の話もして、年齢や基礎疾患
なども細かく聞かれて判断される。
東京都だけで1日に3万人も陽性患者が増えているところなので、希望しても
入れるかどうかはわかりません。ということでした。
その公的な機関の連絡を待ちながら、会社にコロナにかかったという連絡も入れることに
なっている。あらかじめメールのフォーマットに必要な事項を入れて、管理や人事に
送ると、すぐに担当の人から連絡が来て、細かい範囲の聞き取り調査が始まる。
これは、仕事上誰とどう関わったのか?という会社都合での追跡調査、濃厚接触者の
割り出しである。そして、病院から言われた発症日を会社のスケジュールにすり合わせて
どこまで出社したらいけないのかを決める。そして熱や症状の経過観察のurlが
すかさずメールで送られてきて、毎日そこに記入するようになっています。
僕の会社のそのシステムは保健所よりも神経質でした。
コロナにかかって調子悪くてもやることがいっぱいありますね。
高熱だったり喉が痛かったり、だるさがひどい時はその場でひっくり返りたい
もんでしょうけど手続きが多くて大変です。
病院を出た後、家に帰らず誰もいない公園の日陰でそういった連絡をこなしていたら
東京都から連絡が来ました。宿泊療養施設に今日から入れます。と。
14時に自宅の前に専用のタクシーが迎えに来ますから、東京都のホームページをみて
準備をしてください。とのこと。ラッキーでした。
準備して待っていたらタクシーが来て、そのまま施設へ。
行き先は西新宿の大きいアパホテルでした。
入るとロビーは野戦病院のようになっていて、段ボールで壁や床が養生されている。
折り畳みの机に血圧計や体温計が並んでいました。
書類用の封筒が並んだ机があり、名前と部屋番号が書いてある。それをピックアップして
部屋に向かい、封筒の中からカードキーを取り出して部屋に入ります。
誰とも出会わない仕組み。
封筒から書類を取り出して注意事項とルールを確認。
朝6時半に起床。体温と酸素飽和度、脈拍を専用のアプリで入力。
朝7時半 朝食
昼12時 昼食
夕方4時、アナウンスが流れて、体温と酸素飽和度、脈拍再度入力
夜6時 夕食
ご飯はエレベーターホールに置いてある棚に時間になるとお弁当が並びます。
各階にアメニティルームという部屋があり、そこにトイレットペーパーやティッシュ
綿棒などの消耗品と、インスタントコーヒー、フルーツジュース、カップ焼きそばがありました。
そういうものは3回のお弁当タイムからの1時間だけ部屋を出て取りに行くことができる。
ゴミ捨てもその時間内に終わらせなければいけない。
というのがルール。
お弁当の横に水とお茶がペットボトルで並んでいて、基本的には飲み放題。
部屋には電子ケトルがあってお湯は沸かせる。
そのほかの時間は部屋から一切出てはいけない。
よく考えなくてもそうなる。ここは伝染病患者の隔離病棟と同じだから。
地方ロケでよく泊まるアパホテルだったので、ロケに来た時のような気楽な気持ちで
入ってきたが、最初に見た野戦病院の雰囲気と共に厳しいところに来ちゃった
んだなあと思いました。足りないものがあったらコンビニに行けばいいや、くらいな事を
思っていたんだけど、そうだ、俺は社会的には危険な病人なんだ。と。
差し入れというルールもある。前日に事務局に差し入れが入る旨伝えておけば
次の日、家族がお菓子やジュースなどの差し入れを持ってくると事務局に預かられて
夕食の時間に部屋番号を書いて棚に置いておいてくれる。
酒とタバコは検閲されて通してもらえない。
当然、定期的に脈拍を測ってるので、データが変だとすぐに事務局から電話がかかるし
コロナは基本的には肺炎なのでタバコを吸うとひどくなる。
テレビはアパホテルらしく大画面のテレビが壁にかかっている。
部屋にはwi-ifが来てるので、パソコンやスマホでネットは好きなだけできる。
体の調子が良ければリモートでの仕事の打ち合わせも参加することができる。
それでも宿泊療養の生活は、よく調べてから入らないと結構時間を持て余す。
ほぼ一週間、部屋から全く出ない生活を想像するとわかる。
慌てて入所したため、そういうことへの想像や準備ができていなかった。
家族に頼んで、コーヒーカップ、豆にお湯を注ぐタイプのコーヒー、カップスープ
お菓子類などを追加で差し入れてもらうことになりました。
僕が感染した頃は、東京都だけでも1日に2万人から3万人が感染するような頃。
保健所は全員に電話することをやめショートメールでの連絡のみ。
東京都の宿泊療養の係の人は、電話の声が疲れててうんざりした感じでした。
慌てて電話してきて、自分の都合を捲し立てて、すぐに入れないとわかると
ブチ切れたりする人ばかりだそうです。
お盆休みを挟んでいて、仕事に支障が少なかったんだけど、
連絡をとった関係者にも同じタイミングでコロナにかかっている人もいたり。
撮影のための出演者を集めるキャスティングの会社の人が言うには
コロナにかかったことのない人はキャスティングできない。と言っていました。
つまり、かかったことのない人はかかる可能性が大きいので、撮影前に発症されると
その後10日間は出てこれないので当然撮影はできない。だから選べないという
逆転現象が起きているそうです。
入ってみて感じた事は、病気で入院しているという感覚よりは
台風や大雨で自宅にいることができなくなった避難所に近い。ということです。
これは伝染病の蔓延というよりは災害に近い。というかこれは明らかに災害。
そして精神的なダメージが大きく、家族、特に2歳の娘にうつしていないかが
かなり心配になりました。幼児はワクチンとか打ってないからです。
幸いなことに、仕事が忙しくて家族と接する時間が少なかったり、すぐに
施設に入れてもらったりして、家族には感染はありませんでした。
なかなかきついもんがあります。
早く終わらないかなあこの病気。
「感染爆発で多分軽症の櫻木さんは自宅でなんとかしていただくことになると思います」
と電話で宿泊療養の係の人に言われて諦めていましたが、たまたますぐに入れた。
本当に施設に入れてもらえてよかったと思いました。無料だし。
自宅療養の人が家に賞味期限切れの食品やカップ麺が送られてくるんだと
嘆いていましたが、質素でも、毎日朝昼晩の弁当がタダで出る。ということに
ありがたみを感じた一週間になりました。
災害だらけの世界を生きていかなきゃならないフェイズに突入したのを
感じましたけどね。仕方ない。頑張りましょう。