深掘りシンガポール~ブロックチェーン、NFT、Web3.0編~ #3

Vol.22
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。

第22回目のコラムです。前回は日本のWeb3.0やブロックチェーン、NFT関連についてまとめましたが、今回はさらに視野を広げ世界のブロックチェーン企業を調査してまとめてみたいと思います。知れば知るほど奥が深い、クリエイターと彼らを取り巻く世界!

今回の記事の基となるのは今年2022年2月に米Forbesより発表された“Blockchain 50”の中で取り上げられた企業リスト。このリストでは、小売りから銀行・保険まで、送金、追跡、情報処理、記録といった業務を簡易化、高速化するブロックチェーン技術を活用している世界のトップ企業50社が紹介されています。全50社をひとつひとつチェックしたところ国別分布としては以下のようになりました。

アメリカ:28社
中国:7社
日本:2社
韓国:2社
ロシア:2社
アイルランド、イギリス、インド、オーストラリア、スイス、フランス、デンマーク、ドイツ、バハマ:各1社

アメリカが全体の56%を占め、次いで中国が14%、日本と韓国が揃って4%という結果でした。Forbesはアメリカの雑誌だから、と一瞬よぎったのはさておき、Forbes以外に数十個の記事を読んでみても、確かにアメリカのブロックチェーン界隈は世界の他国から一歩も二歩もリードしていると感じざるを得ませんでした!

■ブロックチェーン最前線はUSA!

アメリカがブロックチェーン最前線だと思わせてくれるのは何もこの50リストだけではありません。6月に米テキサス州で開かれたConsensus2022という世界最大規模のBlockchain及びWeb 3.0のイベントに参加した日本人弁護士の記事を読みましたが、「アメリカの暗号資産業界の市場規模は、日本と比べ10倍以上あるイメージだが、今回はそれ以上の熱気を感じた」とのこと。また、同じ時期にニューヨークで開催された「NFT.NYC」の参加者コメントを読んでみると「公式参加者は15,000人となっていたが、体感としてはもっと人が多かったような印象」「たまたま旅行に来た通りすがりの大学時代の友人が『NFTのイベント』と気づくレベルで、まさに街をジャックしているという雰囲気」というほど、あまり詳しくない人でもNFTのイベントだとわかるくらい作りこまれた世界観が一般化され盛況な様子がうかがえます。
2020年のコロナ禍真っ盛りにシンガポールに来た私ですが、日本にいる時はNFTというワードも聞いたことがなかったですし、周りでブロックチェーンという言葉を発している人も稀だったように思います。それが、この2年の間に大きな盛り上がりをみせており、さらに、まだまだ進化の過程と思わせるブロックチェーン業界。こうしてコラムを書きながら、海外のブロックチェーンに関する情報の多さと、半年単位で情勢が変わっている、アップデートの速さに混乱中です。(笑)
ブロックチェーン技術を活用しているアメリカ企業28社一つ一つを取り上げることはできないのですが、金融分野、非金融分野、ハイブリッド分野でそれぞれスタートアップや大企業がリストインしています。全米バスケットボール協会がNFTによって爆益を上げている、という文章も目を引きました。

ちなみに前回のコラムでは日本のブロックチェーン関連やNFT関連の「法規制」について障壁があることについて触れましたが、今回のイベントに参加した上述の弁護士からは「アメリカでは法規制があっても諦めず、『(法規制は)憲法違反だと主張して争おう』みたいなスタンスがある」と感じたそう。うーん、この日本とアメリカの新技術が進展する速度の差は、国土や人口以上に国民の「性格」の部分が大きい気がします。いや、間違いない。それはシンガポールに来てシンガポール人や欧米人と日々会話をしている私もすごく感じています。とにかく彼らは合理的に物事を考え、効率良く生産性が高い方法を選択しているように見えます。「それって意味ある?もっとこうした方が早くてスムーズじゃない?」とか「なんで残業に悩んでいるの?会社が悪いの?それともあなたの仕事の進め方が悪いの?」とか、似たような会話をこの2年で何度も耳にしてきました。シンガポールでそうなのだから28社もリストされたアメリカはもっと顕著だろうな、と想像しています。

■ヨーロッパ

国連ではヨーロッパに区分されているロシアも含め、Forbes 50 blockchain 2022には8社がヨーロッパ勢としてランクインしています。各社の業界カテゴリーは保険、保険、海運、時計、ダイヤモンド、鉱物、自動車ルノー、銀行。特徴的だとおもったことは、例えばスイスのBREITLING、フランスのルノー、海運業の盛んなデンマークのA.P. Moller-Maerskといった国家的な企業がブロックチェーン技術を取り入れているようです。とはいえ、ヨーロッパというくくりで8社だけのノミネートは正直少ないと思いました。2020年以前にはヨーロッパ発のブロックチェーン関連企業の記事が多い印象でしたので、USに取って代わられたのか、それとも別の理由があるのか、が不思議に思っている部分です。深掘りが必要かもしれません。

■中国

単独国家として中国はUSAに次いで2位の7社がリストイン。TencentやANT、Baiduをはじめとしたコングロマリットといわれる大企業体や、総資産額世界1位と2位の中国工商銀行と中国建設銀行などの顔ぶれとなりました。余談ですが、総資産世界一位って今は中国なんですよね!このコラムを読んでいらっしゃる皆さんは知っていましたか?私は恥ずかしながらぼんやりとは想像していましたが、1位から4位まですべて中国の銀行なんです!(2021年度調べ)。私が感じるところでは、中国はもっと多くのブロックチェーン技術を活用した企業が出てきてリストインしてもおかしくないと思っています!Forbesはアメリカの雑誌ですし・・・。またTencentやBaiduといった大型コングロマリットも数万人のエンジニアがいて日々新たなアプリやシステムを開発しているのだと言われています。リストインしていないTikTokのByteDanceもNFTやブロックチェーン関連へ参入した記事がありますし、その他まだ日の目を見ていないスタートアップやベンチャーが必ず頭角を現してくるだろうと感じています。

■インド

大いなる可能性と未来があると信じられているインドからは1社、コングロマリットのマヒンドラグループがリストインしています。医療や通信、エネルギーなどの多様な分野で60以上のブロックチェーンベースプロダクトを開発しています。インドの国土や人口、近年の注目度で言えば中国の次かと個人的には思っていたのですが、今年9月NASSCOM(インドのテクノロジーに焦点を当てた非政府の業界団体であり擁護団体である全米ソフトウェア サービス企業協会)の発表によれば、インドには 240 以上のブロックチェーンスタートアップと 150 以上の Web 3.0 に焦点を当てたスタートアップがあると推定されているらしいです。日本を含めた各国がインドに進出しているというニュースをしばしば目にしていたので思ったより少ないリストインだったと思うのは私だけでしょうか。どちらかといえばAI技術などディープテック領域が強く、ブロックチェーンや仮想通貨等の関連企業は開発拠点となっていてインド発のスタートアップが出てくるのはこれからなのかもしれませんね。というのも、2月のロイター通信によれば、インドで仮想通貨に投資している人は1,500万─2,000万人ほどと推定されており、仮想通貨の保有額は総額4,000億ルピー(53億7,000万ドル/7兆7538億円)前後に及ぶと言われています。ポテンシャルとしては十分にありそうなインドですから、今後に注目です。

■アフリカ

この項目は私が独断で「あったらいいな」と思い追加したのですが、私が調べた限りだと注目されはじめたナイジェリア他、アフリカ諸国で暗号資産に対しての投資が増えていくだろうと予想されています。私の個人的な勉強不足もありますが、まだまだアフリカは発展途上で上記に列挙したような諸外国に比べ教育や健康、銀行、政治など、すべてをすぐにテクノロジーで解決できない課題が山積しているイメージです。あるアフリカのブロックチェーンを取材した記事ではエチオピアは閉じたシステムを運営している国、南アフリカ共和国は外国人嫌悪が社会問題化している国、ジンバブエのように仮想通貨とそれに関連する全ての活動に全面的に反対する国もあると語られています。一方でナイジェリアやルワンダ、ガーナと言った国々はブロックチェーンに対して好意的で積極的に活用を推進し始めているそう。私がこの記事で注目した点は、そうしたブロックチェーンにおける開発者不足も深刻化しているという部分。例えばJeluridaのような企業が介入することで優秀な外国人開発者を迎え入れ共同開発やプロジェクトを多く進めていくことで“自国力“アップを示すことができれば、現在消極的な国々もブロックチェーンをはじめとした最新テクノロジーを活用し始めるだろうと語られていますが、これってまさにシンガポールも同じような道をたどってきて今に至っていると感じました。

現在シンガポールでは高度人材を海外から集めようと2023年1月よりONE Passという新たな労働ビザのカテゴリーを設けることを発表しました。2021年にTech.Passが導入されたのが記憶に新しいですが、このパスでは(一部抜粋となりますが)「月額給与3万シンガポールドル(約300万円)以上」「芸術・文化、スポーツ、科学技術、研究・学問の分野で優れた業績を上げている」と特筆すべき必須条件が盛り込まれる予定。あきらかに自国力アップを狙っていますし、この中に含まれる芸術や文化、といった領域はクリエイティブと≒(ニアリーイコール)というかほぼ=(イコール)と考えて良いと思うので、そういった人材が流入してくることでクリエイティブ市場がより活気を持ち、人々が目指したい職種になり、そこにフェローズシンガポールが貢献していくという未来予想図をはっきりと描けました。

まとめ

正直な話をすれば私はこのコラム執筆前に今回取り上げた記事のようなブロックチェーンやNFTが世界中でここまで盛り上がっていることを知りませんでした。それもそうです。いつも世界は私が思っている以上の何倍ものスピードで進んでいます。インターネットが初めて家に来た時のことをまだ覚えていますが、あれから10数年しか経っていないのに今私はこうしていとも簡単にGoogleから欲しい情報にアクセスしコラムを書けています。プライベートな時間では世界中の人とゲームをし、ソーシャルメディアでお互いの日常をシェアしています。いつも世界は私を置いてきぼりにするけれど、だからこそこの世界は面白い、と遠くを見ながら一瞬、哲学者になった気分に浸りました。
話を戻すとこのブロックチェーンやNFT、Web3.0というものは私たちの手元に来るまでもう時間はかからないだろうと思います。

 

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

参照元:

https://forbesjapan.com/articles/detail/50111

https://www.coindeskjapan.com/153812/

https://www.asahi.com/business/reuters/CRBKBN2K62SU.html

https://www.coindeskjapan.com/158815/

https://cloud-ace.jp/column/detail313/#:~:text=%E5%90%8C%E7%A4%BE%E3%81%AE%E5%A4%A7%E3%81%BE%E3%81%8B%E3%81%AA%E4%BB%8A%E5%BE%8C,%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%82%82%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

https://www.e-xtreme.co.jp/topics/48687/

https://coincheck.com/ja/article/454#i1

https://www.coindesk.com/tag/consensus-2022/

https://www.businessinsider.jp/post-233631

https://coinpost.jp/?p=370280

https://www.reeracoen.sg/ja/employers/articles/singapore-newvisa-onepass-changingEPprocess

https://chemicalmarketresearch.news/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E3%83%96%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%80%81%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%BF/

 

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
Twitter:@junya_oishi
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