デザインとシンガポール #2
Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第24回目のコラムです。前回に続き、ここから数回に渡りシンガポールのデザインについてご紹介できればと思います。
シリーズ2回目はグラフィックデザイン。グラフィックデザインとなると前回お伝えしたWebデザインよりもたくさんの制作物のフォーマットがあって、守備範囲が広そうですよね。歴史も見ながら、シンガポールのグラフィックデザインに迫ってみたいと思います。
■グラフィックデザインについて
冒頭でも触れたようにWebデザインはWebサイトをデザインすること。それに特化してデザイン、レイアウト、コンテンツを作りあげていくこと、それを行う人達をWebデザイナーといいますね。一方、グラフィックデザインというと、ポスターやチラシ、雑誌広告、商品のパッケージ、企業のロゴ、服飾のプリントデザインなどをイメージすると思います。私は、Tシャツを思い浮かべました。
さて、定義としてはどうなのかと調べてみたところ
・書籍,新聞,雑誌,広告宣伝物,包装紙など,印刷物を媒体とするデザイン(株式会社平凡社百科事典マイペディア)
・主として視知覚という観点から、伝達内容を美的かつ効果的に表現することを目ざして行うデザイン(小学館 日本大百科全書)
・主として平面の上に表示される文字や画像、配色などを使用し、情報やメッセージを伝達する手段として制作されたデザインのこと (Wikipedia)
とあります。印刷物などオフラインで手に取れるようなものに使われるのがグラフィックデザインの定義のように感じますが、映像やオンライン媒体の登場によりあらゆる視覚媒体のデザインを意味するようになっていったようです。
■シンガポールのグラフィックデザイン
実際にネットでググっても良いのですが、せっかくならと思いフィールドワークをしてみて気になったデザインの写真をいくつか取ってきました。シンガポールは中華圏と欧米圏が混ざり合っていたり、マレーシアとのミックスで生まれたPeranakan(ペラナカン)があったりと、デザインで切り取っても本当にいろんなものがあってとても面白い国だと思います。
例えばこちら。近所の本屋で撮った写真たち。1枚目は欧米系のペーパーブックのデザイン。2枚目は中国語で書かれた自己啓発本のデザイン。3枚目は日本の文化をまとめたアートブックのデザイン。
本だとわりと著者の出身や言語によってデザインがタイポグラフィーよりなのかイラストっぽいものなのかに分かれるのかなと感じました。
次は本当によく見るタイプ(笑)のシンガポールのレストランにあるプロモーション用のポスター。ひとつ3シンガポールドル(約300円)の生ガキって言う部分は気になりますが、“HUGE(でかい)”と“PLUMP(まるまるとした)”っていう文字をネオンカラーにしてあるところがシンプルでわかりやすくて私は好きです。日本だともうすこし文字が多いかもしれないですね。
商品パッケージも紹介しようと思い、最近よく購入するコーヒー豆のパッケージを撮ってみた写真がこちら。シンガポール発のコーヒーショップ、Homeground Coffee Roastersのパッケージ。全体の色味はブランドカラーの深緑で統一されていて、真ん中にシンプルなタイポグラフィーとブランドロゴ。ここは下の写真のようなTシャツも販売しています。何ていうのでしょうかコンテンポラリーなデザイン?ストリート的なデザイン?ちょっと正しい表現が見当たりませんが(笑)、いわゆるおしゃれなデザインもあります。
最後に紹介するのはこちら。こちらプラナカンのカラフルなデザインです。プラナカンとは15世紀後半、中国からマレーシアやシンガポールにやってきた貿易商人とマレー女性とのミックスの人々のことで彼らの子孫は中国、マレー、そしてヨーロッパの文化を融合させた独自の「プラナカン文化」を築き上げました。特徴的なのはその配色でとても色鮮やかなデザインが一番のユニークなポイント。ペラナカンのグラフィックデザインが施されたお土産はとても喜ばれます。
■シンガポールでグラフィックデザインに関わるお仕事はどんなものがある?
さて、シンガポールにあるリアルなグラフィックデザインを紹介してきましたが、最後は実際にシンガポールでグラフィックデザインのお仕事をするならどんなお仕事があるのか調べてみました。国内最大級のジョブサーチプラットフォームJobstreetでは2022年11月現在、約12,000件のグラフィックデザイナー及び関連職種が掲載されています。IT企業からメーカー、広告代理店や制作会社まで幅広く、多くの企業が募集をしています。関連職も含まれていて、アートディレクター、UI/UXデザイナー、アニメーター、プロダクトデザイナーなども求人されています。
このJobstreetが2022年3月にだしたレポートでは、シンガポールでのグラフィックデザイナーの仕事は、決して需要がなくなることはないと言われており、様々な業界に不可欠なキャリアであり続けるだろうとしています。
グラフィックデザインの仕事では、創造性、細部へのこだわり、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Adobe InDesignなど多くのツールの高度なスキル、さらにアニメーション、モーショングラフィックス、Webデザインなどの適性も求められます。このような技術的要件があるため、グラフィックデザインの仕事は、特に経験年数の長いデザイナーの場合、高給になるのも不思議ではありません。5年以上の経験を持つようなグラフィックデザイナーはシンガポールの平均賃金約4200ドルを上回る賃金を得ることが難しくないだろうと言われています。
私も日々、さまざまな企業へアプローチし求人獲得に挑戦していますが、需要のわりに供給が追い付いていない印象も否めません。前回のコラムで触れたようにシンガポールのデザインの歴史はまだ浅いため次の世代のデザイナーはきっとこれから増えていくことでしょう。フェローズシンガポールとして、ここから更に彼らの存在価値やプレゼンスを高めるお手伝いができたらと思っています。
まとめ
今回はグラフィックデザインで切り取り、シンガポールのグラフィックデザインや実際の求人について紹介をいたしましたが、まだまだ氷山の一角で深掘りができるトピックの一つです。次回は建築デザインや内装・空間デザインについて紹介できたらと思います。
※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。
参照元:
https://www.nhb.gov.sg/peranakanmuseum/who-we-are
https://www.singaporenavi.com/special/5029713
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