職種その他2012.05.16

トレンド

ARTY FACT LONDON Vol.74
ARTY FACT LONDON コウヅマノエ

久しぶりに日本に帰国しています。 日本は本当に平和でいい国ですね~。 成田空港に着くといつも何となくほっとするのは、自分が生まれ育った母国に帰って来たというだけでなく、海外生活日々の暮らしの中で、知らず知らずのうちに強いられている緊張感が解けて安心できるからなのかもしれません。

例えば、海外生活では、貴重品は常に携帯し、人ごみでは持ち物に注意。夜間の外出時は注意を払う。というような、ちょっとしたことですが、でも毎日の生活の中では危険回避の基本。 日本ではごく当たり前の風景である自動販売機や無人販売所だったり、また、カフェで自分の持ち物を席においてから飲物を買いに行くなんて行為は、自ら「どうぞ持っていってください」と言っているようなもので、少なくともロンドンではまずあり得ません。

それから、日本のきめ細やかな便利なサービス(まぁ、何もそこまで便利にしなくてもと思う物も時々ありますが…)と交通機関の時間の正確さには、やはり毎回感動です。長い海外生活を送っているうちに、いつのまにか不便さを不便と思わないようにと鍛えられてしまった、そんな自分に気がついてしまう瞬間でもあります。

そんな事はさておき、ここ数年、日本文化も海外にかなり浸透してきたように感じます。 昨年訪れたフィンランド第2の都市「タンペレ」では、偶然にも、コスプレイベントが開催されていました。 人口20万人の静かな北欧の小都市の中心街は、それぞれお気に入りのキャラクターになりきった大勢の若者がそぞろ歩きしていて、駅の中は友達との待ち合わせをする数々のキャラクターたちでいっぱい。「一体何がおこっているのか??」とびっくりさせられましたが、どうやら、「トラコン」(http://2012.tracon.fi/en)と呼ばれる、2004年から毎年9月初旬に開かれているコスプレイベントだったようで、約4千人の来場があった模様。今年開かれる「トラコン7」では、毎年名古屋で開かれている世界コスプレ・サミットも同時開催されるようで、今年もあの小さな街が色んなキャラクターで埋め尽くされるに違いありません。

フィンランドのコスプレイヤーたち@トラコン

フィンランドのコスプレイヤーたち@トラコン

また、毎年ロンドンで開かれているJ-カルチャーイベント「ハイパー・ジャパン」(http://www.hyperjapan.co.uk/)には、イギリス中のコスプレファンが集結。こちらはコスプレだけでなく、日本舞踊のパフォーマンスやスシ・アワード、サケ・アワードなど,日本の衣食住文化に関する大掛かりなイベントです。毎年黒山の人だかりで入場制限が敷かれる事もあり,会場の前には入場を待つ人の長い行列ができます。

ロンドンで開かれているハイパー・ジャパン入場待ちの行列。この時で3時間待ち!

ロンドンで開かれているハイパー・ジャパン入場待ちの行列。この時で3時間待ち!

また、日本の伝統文化に理解があるフランス人、毎年、パリ郊外で開かれているという「ジャパン・エクスポ」(http://www.japan-expo.com/)というイベントは、年々来場者が増え、昨年は19万人を記録したそう。今年は「きゃりーぱみゅぱみゅ」(http://kyary.asobisystem.com/)(誰?正直言って、全然ついていけてない私です)も渡仏するそうです。パリの裏通りには、日本のアニメや漫画を集めたショップがフツーにあったりして、ヨーロッパ内での日本のオタク文化のメッカとなっている模様。

アジアの国々ではもちろん、アメリカやヨーロッパ諸国を始め、南米ブラジルやチリでも大規模なコスプレイベントが開かれているようです。日本のポップカルチャー、特に日本のアニメを通じたコスプレ文化の海外への浸透率はとても高いようです。

コスプレ文化の世界浸透の影には、日本の経済産業省による「クール・ジヤパン戦略」ーイギリスの「クール・ブリタニカ」政策を参考に、国をあげて日本のポップカルチャーを世界に輸出しようという政策の成果もあるのでしょうか。日本発のファッションにせよコスプレ文化にせよ、少なくとも、日本国家のブランド確立とイメージ向上には貢献しているように思います。

YouTubeに投稿した動画がきっかけで日本で人気となったという、日本大好きイギリスのティーンネイジャー、『かわいいにもほどがある』ことベッキー・クルーエルのように、Jカルチャーが日本に逆輸入され始めたり、今後は、世界中でブームを巻き起こすような海外生まれのJカルチャーが、日本に紹介される日も近いかもしれません。

 

コウヅマノエさんのコラム連載は今回で最終回となります。 長期に渡るご愛読をありがとうございました。

Profile of コウヅマ ノエ

コウヅマノエ

女子美術短期大学卒業後、デザイン事務所勤務。その後、雑誌『エルジャポン』のデザイナーを経て、フリーのグラフィックデザイナーとして様々な雑誌のデザインを手掛ける。2003年に渡英し、ロンドンにあるRavensbourne CollegeでInteractive digital Media の修士号を取得。現在は南ロンドンで様々なプロジェクトに参加しつつ、ロンドン生活を満喫中

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