粘土から生まれた奇妙な仲間たち!? @Hayward Gallery 前編
ギャラリーに一歩踏み入れれば、トーテムポールのように積み上げられたカラフルな柱が森の樹のようにお出迎え。親子連れが楽しそうにその間を歩き回っています。今回はテムズ川沿い、サウスバンク区のヘイワード・ギャラリー(第37回で紹介)から、グループ展『Strange Clay』をお伝えします。
木の幹のような柱は陶器、ガラス、バスケットを組み合わせてつくられていて、枝の代わりにマグカップのハンドルのような腕、根の代わりに大きな手形がひらひらとついていたりしてなんだかユーモラス。よく見れば感情を表す絵文字の顔のレリーフもあちこちに。作品はJonathan Baldockの「Facecrime, 2019」。作品のタイトルはジョージ・オーウェルの小説、『1984』(1949)で使われる合成語、表情罪(フェイスクライム)より。
ずらりと並ぶのは建物のミニチュア?Shahpour Pouyanは2014年にDNA検査を行うと、何と彼のルーツが出身国イランのみならず、33カ国にまたがることが判明。そこで自身のアート、エンジニアリングのルーツを探ろうとそれぞれの国の伝統的な建物や宗教的な建物を焼き物で表現した作品が「My Place is the Placeless, 2017/2022」。
雨の中、交通渋滞で運転中に思いついたのは、車のフロントガラスをデザインしたアート。その最も退屈でストレスのたまる時間をポップなアートに変えたのは陶芸家のEmma Hart (第125回で紹介)。スクリーンは両面になっていて反対側も別のカラーで彩色されていて見られるようになっています。中にはクラッシュしたフロントガラスも!
天から落ちてくる磁器のオブジェ、その数は981個。
一つ一つをよく見ると、バイクのヘルメット、化粧ポーチ、ハンドバック、ブーツ、靴、おもちゃ、金槌、電球、帽子、電話、ペットボトル、洋服などの日用品、中でも子供のおもちゃがたくさんあるのが気になります。作品は Liu Juanhuaの「Regular/Fragile, 2002 – 03」。 2001年に中国で幾度か起きた航空機事故。中でも幼い男の子が犠牲となり、その持ち主をなくした所有物が海に投げ出された悲惨な事故を受け、自身の息子の姿を重ね制作した作品。Juanhuaは実際、彼の家族や友人の日用品から型取りをしたそうです。
壁からかけられた巨大なネックレス。ギリシャ神話に登場するセイレーン、パルテノペー。オデュッセウスの誘惑に失敗したパルテノペーはナポリ湾を涙で溢れさせ、そこに身を投げます。作品は、そんな神話からヒントを得たSerena Kordaの「And She Cried Me a River, 2021」。
よく見ればこんな不思議な生き物も。こちらは人の手をかたどって作られたタコのような海の生き物。ネックレスはそんな生き物、南国の花や果実など100粒の大きなビーズ玉を繋いで作られています。
乾いた草花のむわっとした香り。
茂みのあちこちからは不思議な生き物たちが。馬の頭にジーンズ、スニーカーを履いた少年、赤ずきんのような女の子、全身を羽毛で覆われた黒い鳥のような女性はハイヒールを履いています。また人の顔のある花も。
こちらはハミングバード・ホークモスと呼ばれるスズメガのようです。女性のような目を持っています。 インスタレーション作品は、自然と人とが交錯する、Klara Kristalovaの「Far from here, 2022」。
さて、まだまだ不思議な仲間たちが現れます。続きは後編で。