粘土から生まれた奇妙な仲間たち!? @Hayward Gallery 後編
自らの墨に浸かって横たわるのは巨大イカ?巨大イカといえばダイオウイカ!ダイオウイカは世界最大級の無脊椎動物で、その体長は14m以上も。水深600-900mの深海で活動するためその泳ぐ姿を見ることは稀で、また表皮や体の筋肉は脆く生きたままの捕獲も難しいため未だに謎の多い生き物。18世紀の大航海時代、海の怪物として恐れられていた伝説上の生き物クラーケンは、今では恐らく巨大なダイオウイカの姿が誇張されたものと考えられています。屍は各国の岸に漂着していたものの、国立科学博物館の窪寺博士のチームが2004年に深度900mの深海で世界初生きているダイオウイカの静止画の撮影に成功するまで、近年まで生きた個体の記録は成功していませんでした。Zink Yiはそんなダイオウイカに魅了され2010年から巨大イカの作品を作り続けています。艶やかな釉薬がみずみずしいイカをうまく再現していて実にリアル。作品はDavid Zink Yiの「Untitled (Architeuthis), 2010」
とろりと柔らかそうな質感にベビーブルーにショッキングピンク、ウルトラマリンブルーにメタリックゴールドと鮮やかで一見焼き物とは思えない彫刻作品。そのポップで現代的な印象とは対照的に、焼成が不十分のため釉薬が溶け切れず鮫肌状に縮れる「梅華皮」や土に含まれる長石などの石粒が焼成時にはじけて表面に露出する「石爆」など、従来茶人が侘び・寂びの景色の一つとして楽しんだ日本の伝統的な陶芸技術を基に作られています。作品は桑田卓郎のchawanシリーズ。
溶岩のような体からニョキニョキ顔を出す虹色の物体はエイリアン?イタリア出身のSalvatore Arancioは中世末期からルネサンス期にかけてイタリア各地で製作された金属的な輝きをもつスズ釉陶器(マヨリカ)の技法を使い、低火度還元炎焼成で何度も焼き上げ虹色を再現しています。作品は「A Soft Land No Longer Distant, 2017」
イギリス一般家庭のダイニング、キッチン、バスルーム、居間、玄関口とそれぞれが一畳ほどの空間に表現されていて、どの部屋も家具以外はほぼすべて焼き物。
食べ散らかされたテーブルの上を見れば、そこにはすっかり泥酔したドブネズミたちの姿。
キッチンはナメクジたちに占拠されています。
隠れた戸棚の奥ではナメクジとネズミのバトル。
コーヒーテーブルの上では、英セレブリティーライフスタイル雑誌、OK! の上でボクシングマッチを行うゴキブリたちの姿も。
バスルームで壮大なバトルを繰り広げるのは冒頭で触れた海の怪物クラーケンとネズミたち。
どの部屋でも排水管の穴からソファーの破れ目にいたるまで隅々で小さな住人たちの壮大なドラマが繰り広げられていて、見る人を飽きさせません。作品はLindsey Mendickの「Till Death Do Us Part, 2022」今回の展示のためのヘイワード・ギャラリーによるコミッション作品です。
現代美術の目から見た焼き物をテーマにした『Strange Clay』いかがでしたか。
それではまた次回。
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