僕が星になるまえに
- ミニ・シネマ・パラダイスVol.16
- ミニ・シネマ・パラダイス 市川桂
ベネディクト・カンバーバッチがとても気になっています! と、最初に宣言いたします。
舌を噛みそうな名前をもったイギリス俳優ですが、最近テレビだったり雑誌だったりで見かけたり、実は友人がハマってるわ~、なんて方もいるのではないでしょうか。
人気になったのは2010年イギリス国営放送(BBC)制作のドラマ『SHERLOCK (シャーロック)』でシャーロック・ホームズを演じたのがきっかけ。 現代版のシャーロックは知的でかなり変わり者、日本でも放送されています。 本年2013年公開だった『スタートレック イントゥ・ダークネス』では、世紀の悪役といわれたカーンを演じて大好評。ハリウッドでも有名になり、数年先までスケジュールが埋まっているそうです。
正統派のイケメンではけっしてない彼(頭が大きく、個性的な顔立ち)の魅力は色々なところで語られていますが、 行き過ぎたファンが自宅をマークして、彼の行動をツイートしまくるという事件も発生したそうです。 わたしもその個性的な存在感がいつのまにかクセになってしまっていたひとりです。
そんな熱狂的なファンをもつ彼の初主演作品である「僕が星になるまえに」が、日本でのカンバーバッチ人気に後押しされ、本国での公開から3年たった今、公開をはじめたのだからスゴイ。 上映時間の3時間前くらいに立ち寄ったヒューマントラスト有楽町では、その時点ですでにチケットは半分以上売れていました。 予想はしていましたが、恐るべきカンバーバッチ人気です。
映画は末期ガンとなった29歳の青年(カンバーバッチ)が、「世界で一番好きな場所」に連れて行って欲しいと親友たちに頼み、旅に出かけるロードムービーです。 ロードムービーは数多くありますし、病気×ロードムービーといった題材もよくみかけます。 ともすればお涙頂戴的なただただ悲しい姿を映すちょっと退屈~な映画(最終的に泣いてしまうのですが)になりかねない危険なお題なので、映画がはじまるまではドキドキでしたが・・・。 イギリス映画(?)らしく、かなりクールな作りで、同い年の4人のくだらないやりとりだったり、 過酷な旅ならではのストレスからくるささいなケンカなどを淡々と映しています。
特徴的なのは病気となった主人公の死が迫っている描写。 旅の様子の合間合間に、肉体がどんどんと限界を迎えて、意識が朦朧とするシーンが差し込まれます。 一貫して本人の視線にきりかわり、談笑する友人たちの声や姿が白んで遠のいては、ハッと意識が戻ります。 象徴的な景色として、暗い海の波打ち際に佇む自分と、神秘的な森の道を飛ぶように進んでいくイメージが、たびたび登場し、“死”が差し迫っているフワフワとした感覚になります。 さらに加えて、カンバーバッチの透き通った青い瞳が、そんな景色をいったりきたりすると、より情緒的になって、観客はため息を漏らすわけです。 英国立劇場などの古典舞台で培った演技力と個性が、このよくありがちなロードムービーを一味違った映画へとかえているようでした。
映画館では、映画が始まる前にこんなアナウンスが。 「売店ではベネディクト・カンバーバッチ関連グッズを販売しております。終演後は大変!込み合いますので、今の内にお買い求めください。」 やら、 「来年2月公開のベネディクト・カンバーバッチ主演映画のチケット先行発売中です。特典には数の限りがありますので、お早めに!お買い求めください」 など。 ちょっと笑ってしまうんですが、ここまで海外俳優がフューチャーされてブームになるのは久々な感じで、その盛り上がりに便乗して、映画ファンが増えるといいな、とも思います。 事実、ヒューマントラスト有楽町は観客席がいっぱいになっていました。 次回作がたくさん控えているので、私のカンバーバッチブームもしばらく続きそうです・・・。
Profile of 市川 桂
美術系大学で、自ら映像制作を中心にものづくりを行い、ものづくりの苦労や感動を体験してきました。今は株式会社フェローズにてクリエイティブ業界、特にWEB&グラフィック業界専門のエージェントをしています。 映画鑑賞は、大学時代は年間200~300本ほど、社会人になった現在は年間100本を観るのを目標にしています。