「作者は誰になるのだろう」

第94話
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

「とりとめないわ」というフレーズは、何となくふわっとしたイメージがありますよね。そこで、今回は「とりとめないわ」にまつわる不思議な話をご紹介します。

最初の話は、「とりとめない発言が秘密の言葉になる」です。あなたが何も考えずに「とりとめないわ~」と呟くと、周りの人は何となく笑顔になりますよね。その笑顔を見た人が、あなたの「とりとめないわ」を聞き覚えて、自分の中で秘密の言葉として使っている可能性があるとか。いつか会ったとき、その人から「とりとめないわ」と言われたら、あなたは秘密の言葉を共有した仲間なんですよ!

次に、「とりとめない時間旅行」です。通常、時間旅行には明確な目的や行き先が必要ですが、とりとめのない時間旅行は全く違います。思いつくままに、過去・現在・未来のどこかに行ってみて、楽しんでみるのです。例えば、「過去に時間旅行してみて、自分が幼い頃に会ってみる」とか。とりとめがなくても、面白い時間旅行ができるかもしれませんよ。

最後に、「とりとめない話題を深堀りする方法」です。あなたが「とりとめない話題」を振られたとき、焦らずに深堀りすると、意外な発見があるかもしれません。例えば、「とりとめないわ」と言うとき、相手に「なぜそう言うの?」と聞いてみると、相手が何を考えているかが見えてくるかもしれません。もしかしたら、新たな発見や発想のきっかけを得ることができます。

いかがでしたか?「とりとめないわ」というフレーズには、まだまだ不思議な要素が残っています。ちょっとした意外な発見や新たな発想を見つけるきっかけになれば嬉しいです。

と、冒頭からここまでの文章は最近特に注目されているChatGPTに書いてもらいました。

いかがでしたか?って、あ、数行前と被る言い回しですがここは僕が書いていますよ!ChatGPTには「とりとめないわ」というタイトルで面白いコラムを書いてください(※写真①)。

※写真①

とだけメッセージを送ったところ、約10秒後(もっと短かったかも)には上のコラムが送られてきました。まず何よりもそのリターンの速度に驚きました。人間技ではありません、って機械ですもんね。では、内容はどうなのか。読んで耐えられるレベルなのか。

検証してみます。

書き出しは多少強引ですが可もなく不可もない感じ。そして始まった最初の話。これは何なのでしょう。あなたが何も考えずに「とりとめないわ~」と呟くという発想は僕の中には存在しません。試しにやや大きめな声で「とりとめないわ~」と口に出したら妙に楽しくて何度も繰り返してしまいました。「とりとめないわ~!!」、バカですね、なんだかとても幸せな気分になってしまいました。もしかすると秘密の言葉の共有者に会う日があるかもしれません笑。

続いて二つ目の時間旅行の話。これは、星新一さんや筒井康隆さんらが若い頃に手掛けられたSFやショートショートの世界観に近いのかなぁ?完成度はダメダメですが、「とりとめない時間旅行」という言葉の使い方はちょっぴりひき付けられました。新人のプランナーにCM企画を頼むと二人に一人くらいの割合でタイムトリップ物やドラえもんが出てきます。つまりその辺のレベルには達していそうです。

最後の話は質問に質問で返すタイプの苦手な人的な内容でしたが「とりとめないわ」にはまだ意外な発見や新たな発想があるという結論に元気をもらったのでよしとします。さて、読んだあとはどこか腑に落ちないモヤモヤが生じました。とりあえずランチでも食べて仕切り直そうと思いコンビニへ。家から徒歩1分のローソンの入り口には石碑(※写真②)があります。

※写真②

それによるとこの場所は日本最初の喫茶店「可否茶館(かひさかん)」の跡地なのだそうです(※写真③)。

※写真③

へぇ~と心の中でトリビアのへぇーボタンを押しました。

そしてすぐにChatGPTに日本最初の喫茶店について尋ねたところ、「可否茶館」ではなく明治21年に上野公園内にオープンした「珈琲館」だそうです。そこでChatGPTに「可否茶館」の誤りではないかと尋ねたら「可否茶館」は江戸時代に存在したと伝えられているが実際には「珈琲館」が日本最初と譲りません。ChatGPTには頑固な一面もあることがわかりました。

どうやらまだChatGPTは知識系の質問にはもろいようです。またクリエーティブな分野のアウトプットも今のところ人間優勢。ただアイデアのヒントを出すいわゆるブレストなどではとっくに人間を凌いでいるようですし(何といってもスピードが凄すぎ!)、資料の作成や会議の要約などではすでにAIが活躍している企業も多いです。学校の宿題などに使われると先生は判別できないですよね。夏休みの読書感想文はAIの独壇場でしょう。その場合の作者ってこれからはどうなるのだろう。いや~、色んな訴訟が起こりそうな予感がします。AIの書いたものに心が動かされ涙する時代。思っていた未来と違う未来に人間は襲われそうで恐いです。

ところで、ChatGPTによればコピーライターの門田陽は静岡県磐田市出身で著書に「ものすごく、わかりやすいコピーの本」があり「こんな親父に、誰がした」のコピーで有名になった方なんだそうです、という話はまたの機会に。

プロフィール
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
門田 陽
クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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