シンガポールではたらくひと #5:クリエイティブコンサルタント Yukie Huidge Shawさん

Vol.32
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。

第32回目のコラムです。シリーズ「シンガポールではたらくひと」。今回取材したのは、Yukie Huidge Shawさん。

Yukieさんは、デザイン、ブランディング、コンテンツ制作、そしてトランスクリエイション(クリエイティブを他の言語や文化にマッチングさせること)といった分野で優れた能力を持つクリエイティブコンサルタントです。
このコラムでは、日本とシンガポールのバックグラウンドを持ち、グローバルに活躍する彼女の経歴や強み、そしてクリエイティブの視点から日本と海外の違いについて探っていきます。

 

■日本生まれ、シンガポール育ち。クリエイティブコンサルタント

まず初めに、これまでのキャリアについて教えてください。

私はシンガポールのデザイン学校にて、ビジュアルコミュニケーションデザインとグラフィックデザインの分野を中心に学びました。卒業後いくつかの企業での就業経験を経て、2019年に独立しフリーランスのクリエイティブコンサルタントとしてのキャリアをスタートさせました。さらに今年2023年にはSole proprietor(個人事業主)として自身のイニシャルを冠したYHS Createsを設立し、これまでのバックグラウンドを活かして国際的なプロジェクトに取り組んでいます。またシンガポールのみならず、東京や大阪、名古屋といった日本のプロジェクトにも関わってきました。

 

具体的にはどのようなプロジェクトに関わってきたか教えてください。

クリエイティブコンサルタントとして、デザインやコンテンツ制作からブランディング、マーケティング戦略、PR戦略、といった内容のものまで幅広くお受けしています。例えばリゾートホテルのブランディングや高級レストランのブランディングも経験してきましたし、さらに具体的にいうと、化粧品ブランドKATE TOKYOのクリエイティブディレクションとプロダクト撮影、ライフスタイルプロダクトatomiのクリエイティブディレクションとグラフィックデザイン、プラントファティライザー(植物用の肥料)のクリエイティブとマーケティング戦略全体のコンサルティングなど。Webサイトを見ていただけるとわかると思いますが、幅広い業界のさまざまなプロダクトに関する依頼を受けてきました。

個人事業主としてお受けしている、というと一人ですべてを完結させているような印象を持たれる方もいると思うのですが、実際は私一人で成功できているプロジェクトの方が少ないんです。ではどうしているかというと、精選した専門的なチームとコラボレーションして仕事を受けていることが多いです。全体のディレクションをしながら、デジタルマーケティングの部分だったり、動画などのクリエイティブコンテンツ制作の部分だったりを振り分けて対応しています。

 

■バックグラウンドを強みにした“トランスクリエイション”

 

いろんなプロジェクトに携われてきたと思いますが、ご自身のいちばんの強みはなんですか?

父は中華系シンガポール人で母は日本人という家庭で生まれ育ったことで、初めから多様性のある環境がナチュラルなものとしてそこに“在った”んです。幼稚園でも小学校でも人種も国籍も異なる友達がいましたし、自分と違うところがあるけれどそれを受け入れる、ということは自然なことでした。こういった環境で育ててもらえたことは両親にもすごく感謝しています。現在までの私のアイデンティティのコアとなっているし、クリエイティブな仕事に興味を持って積んできたキャリアにもすごく大きなインパクトを持っています。

私の提供するサービスの中ではトランスクリエイションが最も大きな特徴です。耳にすることは少ないかもしれませんが、Transcreationと書いて実際に専門用語として存在する言葉です。これは何かというと、“現地の市場に伝わるように、コンテクストを理解して、ビジュアルやコピーを考えて提供する”こと。広告一つとってもシンガポールと日本では全体的に大きく違うので、その部分を私が認識できていることで、適切であり満足してもらえるような提案を意識しています。

(Yukieさんの実績の一つに、東南アジアの弓道大会のメダルデザインがあります。トランスクリエイションを活かして日本をフィーチャーした形状やフォントを使用し、東南アジアの人々にも伝わるデザインを提供しました)

 

日本とシンガポールの広告の違い、という話が出ましたが

私は学生時代に“日本とシンガポールの広告マーケットの違い”について研究し論文を書いたことがあるのでその話を少しシェアしますね。例えば日本の広告って「何これ?どんな意味?」って思うものがあると思うんですよ。商品を紹介しているCMなのに、それよりも全然関係なさそうに見えるストーリーを入れてみたりドラマを描いてみたり。でもそれが日本のクリエイティブの特徴だと思っていて私にとっては「遊び心があって楽しい」という特徴がありました。一方、シンガポールの広告は「制約があって、堅実で地味」という感じです。もちろんそれが悪いってことではなく、商品の良い部分や訴求したい部分をストレートに無駄なく表現しているということなのですけどね。面白くない、です(笑)。
クリエイティブ全般ではなく、これは広告の話を例にしているのですべてに共通すること、ではないかもしれませんが、「広告」という文脈で切り取った時には、私はそのように感じています。
 

■フリーランス、そして起業。将来的に見据えるのは“ショートフィルム”!?

 

今後取り組んでいきたいと考えていることについて少し教えていただけますか?

これまで通り、トランスクリエイションを軸とした、クリエイティブディレクションやコンテンツデザインのお仕事を続けていくつもりですし、経験を通じてさらに質の高い、クライアントに満足してもらえるサービスを提供していきたいです。
そしてこれは初めてお話しするんですが、実は私はかなりの映画オタクなんです。周りの友人には映画監督もいていろんな話をしたりするのですが、最近特に興味があるのはショートフィルムで、いつか自身の映画を制作してみたいと構想を練っています。
さまざまな映画を見てきて、文化的な文脈を理解しないといけないシーンだったり、それを的確に表現している映画にも出会いました。私はトランスクリエイションを軸にクリエイティブコンサルティングを提供しているので、一人のクリエイターとして、映画のみならず、表現や文化、文脈の違う世界に飛び込んでいき、新しい感性を磨いていきたいと思います。

 

■まとめ

Yukie Shawさんのバックグラウンドから生まれる創造力は、彼女がクリエイティブなプロジェクトで独自の視点と価値を提供する力になっています。今回の取材を通して、日本と海外のクリエイティブの違いについての新しい視点を教えてもらえましたし、彼女の洞察や、異なる文化に対応する能力は非常に魅力的に映りました。実は現在フェローズシンガポールを通じて彼女にお仕事をお願いしている部分もありますので、いつか公開できたらと思います。彼女は今後ますます注目される存在となることでしょう。未来の素晴らしい活躍に期待です。

Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.では、フリーランスのクリエイターがリモートワークでプロジェクトを受注できるようなサービスをはじめました。その名も「Fellows Creators」。
例えば日本人がシンガポールの案件を、シンガポール人が日本の案件を、といった形でクロスボーダーに案件の受発注ができるようなサービスを目指しています。

https://fellow-s.com.sg/fellows-creators/

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
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