プリマスの木漏れ日 @The Box 前編
夏休み!ということもあり、訪れていたのはイングランド南西部のデヴォン州にある港湾都市プリマス。典型的イギリスの夏休み?ともいえる斜め45度の横殴りの雨風吹き荒れる肌寒いこの日、ビーチに行くこともできず、向かったのはこちら、セントルークス教会。この教会よく見ると頭に「The Box」という文字のくり抜かれた箱がのっています。
教会の中に入るとそこはアートギャラリー!バングラデッシュ生まれ、英国育ちのRana Begumの個展「Dappled Light」が開かれていました。早速見ていきましょう。
右手の壁にある小石で線を描いたようなドローイング。粒を1つ1つ見ると指紋があります。親指にインクをつけて描いた作品で、地元の聴覚障害のある人々のコミュニティーグループと共同で製作したもの。穏やかな波の音を親指で表現したらこんな感じ?
中央空間の半分を占拠、もくもくと空間を漂う金属メッシュの立体はパステルカラーの雲のよう。またその影が白い壁を淡く彩ります。
こちらは紙をくしゃっと丸めて折り目をつけたようなペインティング?
横から見るとこんな感じでレリーフ状になっており、山並みに夕日が差し込んだようです。有害な有機溶剤を含まない水性樹脂、ジャスモナイトで作られています。
ステンレススチールを彩色し、ジオメタリックに並べた作品。床の反射も作品の一部。
反射といえばこちらはオートバイの反射板で構成された作品。
ぐるりと入り口に戻ってきました。
幾重にも重ねられた色はまるで夜の街の光そのもののようにキャンバスの上をさまよいます。
最後は東窓のステンドグラス。実はこちらはBegumの作品ではなく、ポルトガルの美術家、Leonor Antunesの作品で、セントルークスがプリマスの博物館、美術館、ギャラリーの複合文化施設「The Box」の一部である美術ギャラリーとして2020年に再開館した際に新たに設えたもの。1828年に建てられた教会ですが、その後は様々な用途を辿り、再開館以前は図書館として使われていました。その蔵書のなかにドイツ17世紀の昆虫学のパイオニアと知られる画家で科学者のマリア・ジビーラ・メーリアンの手彩色銅版画集『スリナム産昆虫変態図譜』がありました。ステンドグラスはその書の終わりのマーブル模様をもとに作られたそうです。カトリック教会の聖人ルークは美術を司る聖人でもあり、この教会が200年近い時を経て美術ギャラリーに生まれ変わったのは偶然ではないのかもしれません。展示タイトルのDappled Lightは「木漏れ日」といった意味。薄暗いこの日でも色彩豊かな光が、会場のあちこちに差し込んでいました。次回はこの教会の向かいにある「The Box」のもう1つの建物を訪れます。お楽しみに!
ウェブサイト: http://www.miyukikasahara.com/