シンガポールのクリエイティブを語る #1

Vol.33
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第33回目のコラムです。8月9日はシンガポール建国58周年の記念日でした。「クリエイターエージェントとしてシンガポールに来て、もう3回目の建国記念日か」と余韻に浸りながらコラムのテーマを考える中で、私がこれまで書いてきたコラムのアーカイブを読みながら、3年経って気づいたシンガポールのクリエイティブ事情について私の言葉で“アップデート”をすることにしました。

■多くの出会いがあった3年間。リアルな接点から“シンガポールのクリエイティブ”を語ってみる

私は入国当初からシンガポールのクリエイティブは“常に合理性とともにある”と感じていました。シンガポールは建国58年で初代リークアンユー首相の時代から圧倒的な国家戦略を打ち出し、力強い国作りを進めてきた国です。ただ、歴史が浅く資源も少ないからこそ、限られたリソースの中で目標を達成するために「何をやるか」ではなく、「何をやらないか」を決めてきた国ではないかと感じていました。だからこそ、シンガポールの文化として“合理性”を重視する人が多い、という印象だったのです。
これまで出会ってきたシンガポール人クリエイターも、そのサービスがデザインであれ、映像制作であれ、「クライアントが好むものは何か?」というところをもっとも重要視している印象を受けました。それが悪いということでも面白くないということでもなく、シンプルに相手の求めていることを、相手の予算に合わせたクオリティで体現することがプロフェッショナルだ、ということを大事にしていると私は受け取っていました。

■ “It depends” シンガポールにいるからってみんな同じだと思わないで!がリアルな声

そういった「“合理性”を重視するのがシンガポールのクリエイターだ」という印象を持っていたので、私が「シンガポールのクリエイターって合理的だよね」と、シンガポールでマーケティングやコンテンツ制作をやっているシンガポール人の友人に話をしたところ、“It depends!(場合による/人による)”と返されてしまいました。

確かに合理的に、ビジネスライクにやっているクリエイターも知っているし、別のシンガポール人の映像ディレクターは「国内に留まっているだけでも日々勉強になることは多いんだ」と教えてくれました。また一方で、別のシンガポール人のグラフィックデザイナーは「積極的に海外のトレンドを調べたり、デザインのアイデアをいろんな海外の文化に触れたりしながらアップデートしてる」と話していました。そして「とにかく良いものを作ろう」として、お金の話をせず「まずはやってみよう」と言うクリエイターもいました。つまり言いたいのは、いろんな視点でものづくりをしている人がいるから、「シンガポールのクリエイターは……」みたいに一概には言えないってこと。冒頭の彼の言うとおり「It depends!」でシンガポール人はこうだよ!と括られたくない部分は私も一緒ですし、万国共通かもしれませんね。

私自身、シンガポールの人たちは無駄なことをしないで、効率よく合理的に働いている人が多いと思っていたし、いつの間にかそのイメージだけが強くなっていたのかもしれないと気付かされました。

コロナ禍を経て変化したシンガポールのクリエイティブ人材

では話を少し変えて。「クリエイターの需要」はこの3年間でどう変わったかということを考えてみると、私が感じる変化は「フリーランスで仕事を受けるようになった人が増えた」ということ。シンガポールでは、コロナ禍の2年間で小さい案件でもコツコツ受注したり、映像やデザインやマーケティングの勉強をしたりしたっていう登録者の方々に多く会いましたし、フリーランスとして独立はしていなくても空いている時間に副業的に受けているという声を聞くシーンが増えました。

日本でも同じような流れみたいなものはありましたよね。フリーランスは少し前からあったし、副業もリモートワークが普及してからはそういった働き方にOKを出す求人を目にすることが増えたと思います。

これまでインハウスや企業勤めとしてデザインや映像制作、マーケティングなどを担当していた人々がその枠組みの中から一歩出て、自由にプロジェクト単位で経験を積んでいくことでスキルだったり感性だったりをアップグレードしてきているように受け取っています。

これまでいろんな人のポートフォリオを見てきましたが、洗練され、エッジが効いている作品を手がけている人が増えてきたな、という印象です。

結論、だからクリエイターとの出会いは特に面白い

クリエイターを求める企業と仕事を探すクリエイターをマッチングさせる自分の仕事が、これほどまで面白いものだと言うことにシンガポールに来てから改めて気付かされたかもしれません。日本とシンガポールで違うことばかりかと思っていましたが、けっこう共通点もある。それはクライアントが探したいクリエイター像だったり、クリエイターがやりたい仕事像だったり。
3年前にシンガポールに来た時の自分は「シンガポールのクリエイティブはこれ!」、と偏見を持っていたのだと改めて思いました。

シンガポールは東南アジアにある欧州やアメリカ、インド、中国など様々な国が交わるハブとなっている場所で、多くの“外国産“が入ってきます。ここに住む人々はいろんなクリエイティブコンテンツに触れていて、あれが好きこれが好き、と無意識のうちに感度が高くなっているのかもしれません。

私も知らない日本のデジタルコンテンツを知っている20代に出会ったりすることもありますし、日頃からクリエイティブに関するインプットが日常なのだと感じます。将来的にどんなクリエイターが生まれてくるか楽しみですし、すでに私がチェックできていない新星が現れているかも!?
だからクリエイターとの出会いは面白いし、その面白さをぜひフェローズと共にいろんな企業に体感して欲しいと思っています!

■次回のお知らせ

これまで32回にわたって、それこそいろんなテーマでコラムを書いてきましたが、今回のように実体験をもとに語る形で書いたのは初めての感覚でした。思うように筆が進まない瞬間もありましたが、3年間インプットしてきたものを棚卸しながら、出会ってきた人との会話を思い出しつつ、共通点や特異点を“語る”=アウトプットするのってなかなかできない経験だと思いました。

次回は、シンガポールのクリエイターに依頼する際の見積もり金額や会社で働く際のお給与など、みんな気になる“お金”事情について書いてみたいと思います。ネット情報にはない、リアルな部分が知れるかもしれません!乞うご期待。

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
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また、Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.では、フリーランスのクリエイターがリモートワークでプロジェクトを受注できるサービスを始めました。その名も「Fellows Creators」。例えば日本人がシンガポールの案件を、シンガポール人が日本の案件を、といった形でクロスボーダーに案件の受発注ができるようなサービスを目指しています。
詳細はこちら▽
https://fellow-s.com.sg/fellows-creators/

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