チョコレートドーナツ

ミニ・シネマ・パラダイスVol.24
ミニ・シネマ・パラダイス 市川桂

渋谷シネパレス、はじめて行きました。 どこにあるのかなーと思っていたら、渋谷西武のすぐとなり(くっついているようにも見えます)、センター街の界隈にありました。 チケットカウンターのある7階に入ると、綺麗な作り。 ポップコーンとかグッズもいろいろ売っていて、ミニシアターとシネコンの間くらいのイメージでしょうか。 ミニシアターはポップコーン販売がないところも多いのです。

時間の都合で久々にレイトショー。 1500円でチケットを買い、21時くらいからスタート。 チケットカウンターのまわりもぼちぼち人がいるなーと思いましたが、座席はこの時間にもかかわらず、けっこう入っていてびっくり。 なぜ?と思いつつ、女性一人客が多く、ちらほらカップルといった感じ。

1970年代にあった実話をモデルに作られたお話で、ドラッククイーンと弁護士とういう組み合わせのゲイカップルが、 母親の育児放棄をうけたダウン症の少年を育てるというストーリー。

ゲイ、芸、げい・・・ゲイ(同性愛者)の映画って多いですよね。 私も過去にいくつか有名な作品を観ましたが、 「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」とか「プリシラ」とか。 そしてそういった映画って、女性になんか人気な気がします。 男が好きな男は、女性の味方?座席にひとり女性客が多いのもそのせいでしょうか。

監督は日本では監督作品初公開のトラヴィス・ファイン 。 もともと役者で「17歳のカルテ」(アンジェリーナ・ジョリーが主演)などに出ていたそう。 うーん、憶えてない・・・笑

映画は夜の治安の悪い街を、ボロボロになった人形を持ったダウン症の少年マルコが、ひとり彷徨う情景から始まります。 手持ちカメラでゆらゆらとゆれ、ネオンや外灯のきらめきでその輪郭はどこかおぼろげ。 その後、ゲイバーでダンサーをするルディと出会い、その恋人でゲイを世間にカミングアウトできない弁護士のポールと暮らしていくことになります。 舞台となっている1970年代は、同性婚がアメリカでは認められていない、偏見が強い時代。 ゲイというだけで仕事をクビになるような世の中。 当然ゲイカップルに養育権は与えられないと、マルコの養育権を争って世間と戦っていくことになります。 その一方でルディはシンガーになる夢を持っていて、デモテープをナイトクラブに送り続けます。

個人的には、話の内容としては盛り込みすぎな感がちょっとありますし、撮影手法やストーリー展開は正直ありふれてしまっていて、映画通の人だと物足りないのではないかと思うのですが、反面、役者がとても良いな~と感じました。

というのも、この映画、単館映画ながら公開スクリーン数をどんどん増やし、興行収入は1億円を突破。 サントラはiTunesダウンロード数で4位を記録。 大ヒットしているのです。

自由奔放で情に熱いルディを、トニー賞(アカデミー賞の舞台版)受賞者のアラン・カミングが演じているのですが、明るくセクシーで、愛情を持った雰囲気が出ていて、スクリーンに映るだけで華やかな印象があります。 実際いくつもの賞をこの映画で獲ったようです。 観客も、ある種、女性より強くたくましく、女性より母性に溢れたルディに惹かれているようでした。 知り合ってまもない頃、金が欲しいのか、とポールに尋ねられたルディは憤慨し(実際は家賃も払えないほど苦しい生活をしている)、「恥を知るがいいわ。」とバッサリきり、マルコの手を引いてさっさと歩いていく逞しさ・・・笑 スーパーマンみたいな強さとは違うけれど、ゲイを題材にした映画が多いのも、それが人気なのもそういったところにあるのだと感じます。

観る前は梅雨の時期でじめじめした気分でしたが、ルディを観て、ちょっと気持ちが軽く明るくなりました。 銀座シネスイッチでは動員数の記録を更新したそうです。 映画としての評価なんて野暮なことは気にせず、元気がでる作品だとは思いますので、 ぜひこの機会にミニシアターに足をお運びください!

チョコレートドーナツ

監督:トラヴィス・ファイン
キャスト:
アラン・カミング
ギャレット・ディラハント
アイザック・レイバ
原題:Any Day Now
製作年:2012年
製作国:アメリカ
配給:ビターズ・エンド

Profile of 市川 桂

市川桂

美術系大学で、自ら映像制作を中心にものづくりを行い、ものづくりの苦労や感動を体験してきました。今は株式会社フェローズにてクリエイティブ業界、特にWEB&グラフィック業界専門のエージェントをしています。 映画鑑賞は、大学時代は年間200~300本ほど、社会人になった現在は年間100本を観るのを目標にしています。

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