時をかける女性たち!? @Niru Ratnam
ロンドン中央地下鉄オックスフォードサーカス駅からショッピング街リージェントストリートを北へ。人いきれを抜け一歩脇道に入り、いくつかのギャラリーの並ぶグレイトポートランドストリートへ。お目当てのギャラリーの建物には足場が組まれていましたが、「Open as usual (通常通り営業中)」とサインが出ています。早速中に入ってみます。
今回はこちらNiru Ratnamギャラリーより、Jacqueline Utleyの個展、『Mirror Flower Mother』をお伝えします。会場には比較的小ぶりの20点ほどの油彩画が展示されていました。
こちらは、ポストカードサイズほどの小さな油彩。花瓶の向こう側の女性は腕まくりをしていて何か作業中のところを呼ばれて出てきたよう。
3人は姉妹でしょうか。裸の子は入浴中?セーラー服を着た女子と赤いヒールを履いた女子がおしゃべり中。母親はその先でその会話を聞きながら料理か何かをしているようです。船や宇宙船のような丸窓からは星空が見えます。
花々が中央のソファーを占拠しています。居間のようですが、女性たちは忙しく、束の間の休息といった感じでしょうか。
鏡の端に写り込んでいるのは深刻な表情の女性。その下には子を抱きかかえる母親?の横顔。鏡の奥には更に小さな鏡が写り込んでいてその中には去ってゆく二人のミステリアスな人物の後ろ姿が写っています。
大きな鏡に写り込んでいるのは椅子に腰掛けて話し合いを行なっている母と娘、それとも仕事仲間の打ち合わせ?手前の二人の女性はその場に立ち会っているのか、それとも急ぎ足でその場を立ち去ろうとしているのでしょうか。アタリーは女性たちを描く際、まず彼女たちがどんな会話をしているか考えることが絵画の出発点になっているといいます。みていると様々なシュチュエーションが思い浮かべられます。
女性が金髪にふんわりとグリーンとピンクのスカーフを被ったようにも、花そのもになったようにもみえる肖像画。その穏やかな表情から、アトリー自身を彷彿させます。
最後は1m 四方ほどの今回の展示の中で最も大きい絵画。アトリーの生まれた北イングランド、ウエスト・ヨークシャーは、18世紀後半から19世紀半ばにかけて急速に織物産業が発達した地域でした。それは、産業革命と英国の国際舞台での繁栄を担いました。そして繊維工場の発達は早くから労働力として女性の社会進出を促しました。母であり、労働者であり家族を支えてきた女性たちの肖像。アトリーの絵画は女性像を描く20世紀初頭の女性画家たちの研究から始まったといいます。家族の歴史と史実の女性たちを織り交ぜながら、アトリーの描く女性たちは、テキスタイルのように軽やかに時空を旅しているようです。