ものから生まれたもの?! @APT Gallery
ナショナル・レール、デプトフォード駅を降りて大通りを南下、200年以上の歴史をもつ活気のある青空市場を超え東へ。そして、テムズ川の入江、デプトフォード・クリークに沿って歩きます。やがて赤煉瓦の建物に突き出したようなシルバーの構造物が見えてきます。APT (Art in Perpetuity Trust) Studios and Gallery です。元倉庫を利用し、42のアーチィスト・スタジオ(アトリエ)と現代美術ギャラリーを持つトラストは、1995年に美術家たちによって設立され、運営されています。今回はこちらAPT Galleryより、グループ展「In the Thick of Things」お伝えします。
まず目に入るのは、巨大な機織り機のような天井まで聳えるAsaki Kanのインスタレーション。
よく見るとそれは古いカセットテープで構成されています。わずかな風の流れで波打つ磁気テープはサウンドウェーブのよう。もしテープの合間を抜ける風が弦を弾くようにそれぞれの音を再生したら、どんな音楽が聞こえてくるのでしょうか。
剥ぎ取られた肉のようなどっしりと重みのある作品は一見粘土の焼き物のように見えますが、実はパン生地?!Laura Whiteは全身を使い、パン生地を引き伸ばしてインクで彩色して仕上げています。
壁を見てみます。身体の器官のようにもみえるカラフルな抽象画。Whiteは今度はインクを息で吹いて引き伸ばしてこの作品を描いています。体の内と外を使ったアクション作品シリーズ。
導線に連なるのは美しいベリーのよう。
こちらはクラゲみたい?Deborah Gardnerは無機的な電気ケーブルを使い電気工事士のようにハンダでつなぎ合わせ、有機的な生き物のような作品を作り出しています。
Gardnerはいいます。「これらの作品では、絶え間なく進化する情報交換について語るための構造的装置としてのネットワーク、接続、クラスタリングを探求している。型破りなプロセスの使用と非伝統的な日常素材の再利用という現在の実践芸術のルーツともいえるアルテ・ポーヴェラ(1960年代後半のイタリアの先端的な美術運動)の考え方を踏まえ、工芸と彫刻のスキルを駆使し、電気廃棄物のケーブルと銅を再利用して導電性と伝送を暗示している」
最近の研究では人を含む全ての動物の筋肉細胞は電気を生み出すポテンシャルがあることがわかっています。また、銅は生き物にとってその成長や機能に必須の微量元素でもあります。
鉄の大きなフレームにカーテン?そして上には糸巻きのようにくるくるとスピンしながら何かを製作している工場の機械の映像が映し出されています。
その向かいの壁のコーナーには解体されるベッドのマットレスの映像。
肉巻きでできたような貴婦人の像、羊のようにモコモコの肘掛け椅子やコート。先にふれた鉄のフレーム、カーテンをはじめ、これらは全て、一枚のマットレスから作られたもの。右手のアクリルボックスには解体する際に出た塵埃も収められていました。実はこのマットレス、Cash Aspeekの90代の両親が1960年に購入し、長らく使っていたもの。通常厄介な粗大ゴミとして扱われる古いマットレス。Aspeekは大型動物を解体するようにパーツを丁寧に解体し、新たな作品を創造しています。
「完全に分解すると、一つ一つの要素がその独自の性質をあらわにした。この過程には、世話をすること、生涯の誓い、続けること、長生きすること、人生、悲しみ、喪失といったテーマが込められている」