「二度見したものパート3」

第113話
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
Akira Kadota
門田 陽

21世紀は早くも4分の1が過ぎようとしいています。今世紀に入って、明らかに時がたつのが早くなりました。特に去年はこの国の四季が二季への替わり目の年だったので余計にそう感じたのかもしれません。民間の天気予報では今年は5月から10月までは暑いそうです。同じようなことをちょうど一年前のこの欄(※とりとめないわ102)で書いていますね、デジャヴなのでしょう。この一年でアッと驚きイイねと思いウ~ンと唸りエー?と声を出しオォと立ち止まり、スマホに残したものを紹介します。

まずは近頃訪れた場所でネーミングや佇まいが気になった諸々。職業病なのか、どこに行ってもあらゆる名前が気になって仕方ありません。以前はこのフェチ体質は隠しつつ生きていたのですが、最近では人類全員何かのオタクで誰かの推しが当たり前の時代。令和も捨てたもんじゃありません。色々平気になりました。そんな中、まずは大田区蒲田にある「最後の楽園(※写真①)」と「なまけ(※写真②)」。

写真①

写真②

いや~、流石蒲田。まだ至る所に銀ちゃん(※)が生きています。どちらも名前の由来は同じ穴から出た気がしますね。「なまけ」って、なかなか思いついても、付ける勇気が湧くのがすごいです。次に「さすけほいくえん(※写真③)」。去年の4月に同業者(コピーライター)の後藤国弘さんが店主の喫茶ギャラリー「アピスとドライブ」を訪ねたときに近所で見つけたのですが、その時は間違いなくスポーツ系の保育園だと思い込みました。さぞアスレチックな園内だろうと見渡したのですが、そんな気配は全くありません。スマホで調べると10秒で解決。住所が鎌倉市佐助1丁目でした。

写真③

他には夏に訪ねた京都で見かけたたこ焼き屋さん「粉魂(※写真④)」はこれで「コダマ」と読むそうです。ヤンキー魂を感じます。同じく京都の町はずれで見つけた「面影(※写真⑤)」は名前とは裏腹にどんなお店だったのかの想像ができません。

写真④

写真⑤

さて僕は人の後ろ姿を見るのが好きです。
昔から「背中を見て学ぶ」「背中を見て育つ」とか言われますが、人間の背中には喜怒哀楽が溢れています。昨年3月14日、場所は有楽町。卒業式と謝恩会を終えて駅に向かっているのでしょう(※写真⑥)。

写真⑥

周りの大人がなんとなく彼女たちに歩きやすい道を譲っているように見えました。続いてこれは下北沢駅前の映画館から出てきた若いカップル(※写真⑦)。単純にいいよなぁとシャッターを切りました。若い頃に戻りたいとは思わないけど、若い頃を思い返すのは嫌いじゃない、この気持ちって何なのでしょうか。自分の気持ちが気持ち悪いです。

写真⑦

一方この2枚の後ろ姿は大人たちの欲望の表れの図(※写真⑧⑨)。どの背中からもワクワクというオノマトペが出ているようにも見えます。

写真⑧⑨

次の一枚(※写真⑩)の二人の背中からは色んな会話が聞こえてきます。「先輩は家系ですか、二郎系ですか?」「どっちでもねえよ」「じゃベタに一蘭とかですか、それとも中本ですか」「違うよ、中本のわけねえだろ。オレ甘党だろうが、そんなことより手を動かせよ!」「あっ、サ~セ~~ン」みたいな。

写真⑩

あともう一枚、これはお祭りの山車を押す人たち(※写真⑪)。伝統を守り続ける人たちの後ろ姿には何か誇らしさのようなものを感じました。場所は前述の「さすけほいくえん」の近くでした。

写真⑪

続いての一枚は上野広小路の大きな交差点です(※写真⑫)。場所柄ピカチュウが動物園を逃げ出して途方に暮れているように思えました。ピカチュウがいたら、人気はパンダと二分するだろうな。

写真⑫

さてさて今回最後の一枚は説明してもわからないかもです。ここは大阪の地下鉄南森町駅のポスター掲示板のポスターが貼られていない状態。全国の駅で同じような光景は見られます。景観のためなのでしょう。美しい海外の風景写真(※写真⑬)なのですが、この手の写真が駅にあると僕はついついどこかにいいちこが映ってないか、二度見どころか三度見してしまうのでした。これもまた職業病というか完全に病んでいます。

写真⑬

ラストにもう一件。これは二度見ではなく一度聴きなのですが、昨年暮れの飛行機の中のアナウンス。

「当機の機長でございます。本日は数ある航空会社から全日空をお選びいただきありがとうございます。当機は5分後の8時50分にみなさまと共に羽田空港に向け降下してまいります。」

文字にして冷静に見るとそこまで違和感はないですが、現場では一瞬耳を疑いました。二度見と違って二度聴きはできないのが残念でしたが、手元のノートに速攻でメモしたので文言に誤りはないはずです。僕は着陸の瞬間に思わず足を踏ん張ってしまいました。

ところで、今年はすでに花粉が飛んでいて僕も朝からクスリを飲んでは眠くなっています。ということは、ずいぶん早くだけど春は来ているみたいなので、日本にはまだギリギリ四季はあるという話はまたの機会に。

※銀ちゃん:つかこうへい原作『蒲田行進曲』のキャラクター。銀幕のスター・銀ちゃん(風間杜夫)

プロフィール
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター
門田 陽
コピーライター/クリエーティブ・ディレクター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州、(株)電通を経て2023年4月より独立。 TCC新人賞、TCC審査委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

門田コピー工場株式会社 https://copy.co.jp/

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