パッケージデザインが美しい!スパイダーマン俳優トム・ホランドのノンアルビールブランド「BERO」
このコラムを書いているのは2025年の1月なのですが、アメリカでは、ここ最近、毎年一月はDry January「一年が始まる1月はお酒を絶って体を乾かそう」というキャンペーンで盛り上がっています。このキャンペーンは元々イギリスで始まりましたが、近年、アメリカでも広まってきています。
View this post on Instagram
アメリカの法定飲酒年齢に達しているZ世代の40%はアルコールを飲まないという調査結果もあり、若い世代を中心にアルコール消費量が減少傾向にあり、その代わり、ノンアルコールドリンクの市場が拡大しています。
過去のコラムでもノンアル・アペリティフGhiaや、ノンアルのクラフトビールブランドのATHLETIC BREWING CO.をご紹介したことがありますが、ATHLETIC BREWING CO.はノンアルビール市場の約19%を占め、他ブランドに比べて高いシェアを獲得。
View this post on Instagram
また、世界的に見てもノンアルコールビール市場は急速に拡大しており、2024年には219億4,000万ドルに達し、2028年までに319億9,000万ドルに達すると予測もされています。
さて、このようにノンアルコールビール市場が拡大する中、スパイダーマンを演じる俳優、トム・ホランドが2024年10月16日に自身のノンアルコールビールブランド「BERO」を発表しました。
@berobrewing When we say “cracking open a cold one,” THIS is exactly what we mean.
多くのセレブと同様、これまでにトム・ホランドもスピリッツブランドの共同開発といったオファーを受けていたようですが、彼のお気に入りは常にビールだったので断っていたそう。ビールの中でもラガーが好きで「ペローニ、ハイネケン、ステラといった同じラガービールブランドと競争したくはなかった」と語っています。
爽やかなイメージのあるトム・ホランドですが、アルコール依存症だったことがあり、それがきっかけで禁酒を始めたのが2022年1月。彼が禁酒をし始めた頃は友達にも協力してもらうなどかなり苦労したのだそうです。しかし禁酒してからよく眠れるようになり、問題にうまく対処できるようになったと感じていたそう。そして一年後、断酒し健康になった彼は「自分のノンアルコールビールブランドを作ろう」と決心。BEROはオファーがあって広告塔になったというセレブブランドにありがちなものではなく、彼自身の体験と信念が発端になっているということですね。
View this post on Instagram
BEROには、緑をキーカラーとするキングストンゴールデンピルス、赤のエッジヒルヘイジーIPA、白のヌーンウィートの3種類あります。
キングストンゴールデンピルスはクラシックなピルスナーテイストで、トム・ホランドの生まれ故郷であるキングストンから名付けられています。エッジヒルヘイジーIPAは、トム・ホランド自身も好きなビールであるヘイジーIPAと、エッジヒルは彼が通った学校名からつけられました。ヌーンウィートは彼のフィアンセ、ゼンデイヤが飼っている犬の名前ヌーンから名付けられたウィートビールです。
@berobrewing Tom reveals his favorite BERO flavor ? #TomHolland #beer #sober ♬ original sound – BERO
BEROのブランディング・パッケージデザインは、以前のコラムでご紹介したUnited Sodas of Americaを手がけたブルックリンにあるブランディング・デザイン会社Centerが行いました。
Center社のアレックス・センター氏のインタビュー記事から少し抜粋してみます。
BEROのブランディングは、トムの故郷にちなんだ家紋や缶の魚のマークなど、トムの個人的な経験に根ざした図像、色彩、ストーリーテリングに焦点を当てました。
魚のイラストはキングストン・アポン・テムズ川の紋章からインスピレーションを得ており、トムが育った故郷にちなんだもの。これはトムのストーリーを反映したものであり、それがブランドの信頼性を強化しています。
ビジュアルでは、BEROが代替品ではなく本物の(ノンアル)ビールであることを強調し、あらゆる場面にフィットするプレミアム製品として位置付けています。私たちのアプローチは、現代の健康志向の消費者がアクセスできるようにしながら、洗練さと伝統を備えたブランドを作ることでした。
View this post on Instagram
カラーはBEROのブランディングにおいて大きな役割を果たしており、高級感を高めています。このカラーパレットはロンドン各区の家紋や旗からインスピレーションを得ており、キングストングリーンやブリックレッドのような色合いで、ブランドに暖かさと豊かさをもたらしています。
BEROの缶の上半分は輝く金で覆われており、プレミアムビールであることがすぐにわかります。全体的な色は、伝統を尊重しつつクラシックでありながら現代的な印象を与える視覚的アイデンティティを生み出しています。
フォントは、Dinamo Type FoundryのArizona Flareがメインブランドフォントとして選ばれており、これはBEROブランドをエレガントかつ力強く表現したもの。現代的な魅力を保ちながら洗練さを醸し出しています。
@berobrewing Can you pass me an Edge Hill Hazy IPA, mate?
ブランディング・パッケージデザインは、トム・ホランドの背景がブランド構築にしっかり表現されており、洗練されていて美しいですよね。素晴らしいです。BEROは通常「ビーロー」と発音するようですが、アルコール“ZERO”と掛けたのか、スパイダーマンの“HERO”と掛けたのか、名前の由来は見つけられませんでした。
昨今では、バドワイザー、クアーズ、コロナ、ギネスと大手ビールメーカーが次々とノンアルビール市場に参入して来ている中、BEROは競争の激しい市場で差別化する必要があります。
あるマーケティング会社のECDがForbesに語ったところによると、BEROの今後の展開として、テクノロジー、ファッション、ウェルネス分野のブランドとコラボレーションすれば、話題を生み出し新たな層を呼び込む可能性があると示唆しています。
最近のBEROのインスタ投稿では、ゴルフ雑誌「Golf Digest」のYouTubeチャンネルでトム・ホランドがゴルフプレーを披露、しっかりBEROの宣伝をしていました。ゴルフと言えば比較的高い年齢層がやるスポーツですし、Z世代以外にもリーチできそうですね。
View this post on Instagram
その他にも、没入型体験を通じて消費者を引き付けることで、ブランドの存在感をさらに強化できるとも語ります。消費者が独自のノンアルコールドリンクをデザインできる、フードエクスポや大学のキャンパスなどのイベントでカスタマイズ可能なドリンクラボを設置するといった具体例を示し、このようなイベントは消費者にとって忘れられない体験になるとのこと。これらの戦略は、Dry Januaryのような季節限定のものを超えて、日常の飲酒文化におけるBEROの地位を強固にするのに役立つ、とも言っています。
興味深いアイデアですね。いかがでしたでしょうか。トム・ホランドのブランドということで今のところ注目度はかなり高いBEROですが、今後、たくさんのセレブリティがノンアルブランドに進出する可能性は高そうです。
(参考)
Forbes – Why Tom Holland’s Non-Alcoholic Beer Brand Bero Could Be The Next Big Thing
BERO’s 3 non-alcoholic premium beers
Creative Boom – Designing Tom Holland’s non-alcoholic beer brand
Campaign – How non-alcoholic beer brands from Bero to Athletic Brewing are owning Dry January

foxylilly.com
Instagram: @foxylilly