「なぜか平塚、そして京都」
昨年の後半。僕と同業のコピーライターで後輩の宍戸将くんから結婚式の招待状が届きました。流石令和の招待状は洒落ッ洒落です。郵便ではなくラインにWEBで届きました(※写真①)。
写真①
晴れの席に呼ばれるのはうれしいものです。日取りは2025年2月22日。出席の欄を指でクリックするとシュッと手書き風の丸で囲まれ、そのまま返信をポチっとすると完了。いや~、あまりに簡単便利です。郵便局の行く末がとても心配ですが、そんなことより一つだけ気がかりな文面が最後に一行。「披露宴にてご祝辞を賜りたく何卒よろしくお願い申し上げます」(※写真②)
写真②
かわいい後輩です。ま、いっか、ワイガヤの中でさらりと与太話でもすれば、と気軽に引き受けたのですが多少悪い予感がよぎりました。
宍戸くんとの出会いは何年前ですかね、コロナの前だったと思うので5年は経っているかもです。今では年の離れたいい飲み仲間でもあるのですが、最初はコピーライターの養成講座での講師と生徒の間柄。毎年何人かいる印象的な受講生の一人。彼の場合はまず何といっても名前のインパクト。宍戸将(シシドショー)ですから、昭和世代かつ名前フェチの僕にはド嵌り。親は間違いなく、狙って付けたはずです。さらに当時の彼は超ロン毛で目付きもこわく、一見近寄ってはいけない人。ただ僕はお笑いコンビ「金属バット」の十年来のファン。彼の風貌がまさに金属バットの友保さんに似ていたのでこれまた僕にはドンピシャ(ドンピシャは死語かな?)で講座終了後も妙に仲良しの関係性。
僕とは30歳離れているので親子に見えてもおかしくないです。彼は年相応の恋愛体質で、このたびのお相手の女性(奥さま)との出会いから進捗状況、そしてプロポーズまでなぜか逐一報告を受けていました。わりと早い段階で紹介もしてもらい三人で飲みにも行きました。彼女は明るく気立てが良くって美しく、その上に飲みっぷりが見事で宍戸くんが羨ましい限り。
結婚式が近まってきた暮れの12月、渋谷ののんべえ横丁で彼に尋ねました。
「ところでオレのスピーチはどの辺?他には誰がスピーチするの?」
「他は特にはいないです。門田さんの話のあとに藤村さん(宍戸くんの会社の上司)に乾杯の音頭を取ってもらいます」
おやおや?
「仲人さんとかいないよな、それって、オレが最初に話すのかな?」
「はい。司会の人が二人のプロフィールを簡単に話してすぐに門田さんのご挨拶です」
おいおい!?
悪い予感だけは当たるようにできています。
おそらく宴もたけなわの中、お酒も入り誰も聞いていないだろうから彼の昔の失恋話でもしてお茶を濁す予定を変更。遠方から親御さんや親族も来られるとのこと。それはちゃんとしなくちゃです。急遽彼を質問攻めして二人の生い立ちや学校時代のことなどを沢山聞きました。そしてその中で印象に残った二人それぞれの思い出の地に取材に行きました。
コピーライターは足で書けという鉄則。職業病ですね。
まずは宍戸くん。彼は動物や魚が大好きで小学生の頃、学校の近くの川に毎日行き魚を掬って遊んでいたそうです。のどかな田舎の情景が浮かびます。行ってみました。平塚市立神田小学校(※写真③)。
写真③
遠かったです。初めて行った平塚の街はことのほか都会でした。学校のすぐ横にある川は1級河川の相模川(※写真④)でとてもデカくて僕のイメージしていたサラサラ流れる小川とはまるで違いました。つぎに奥さんの郁(イク)さん。
写真④
彼女がお酒好きになったきっかけは、学生時代のアルバイト先がバーで、そこのマスターにお酒の魅力を叩き込まれたからだそうです。バーの名前は「ランプ」。薄暗い半地下の店とクセの強いマスターの顔を想像しました。行ってきました。場所は京都二条城前。いい場所にあるいいお店。2階の店の窓からは大通りを行きかう車のヘッドライトがまぶしいです(※写真⑤)。マスターはイケメンで快く僕の話をきいてくれました。ウイスキーを3杯いただき店を出ました。どちらも想像外。そりゃそうです。想像していた川は僕が小学生の頃、ザリガニやメダカを捕まえていた小川。想像していたバーは僕が学生の頃、行きつけにしていた大学近くの半地下にあったバーでどちらも二人とは無縁の僕の思い出の場所。それをなぜか求めていました。フシギな聖地巡礼でした。
写真⑤
ということで、新しい思い出はできましたが、肝心のスピーチがまずいです。2月22日、結婚式当日。冒頭の挨拶。司会者から僕の名前が呼ばれました。ドキドキが止まりません。上記のいきさつを簡単に話したあと、「祝い目出度」という僕の地元福岡の結婚式では必ず歌われるお祝いの歌を心を込めて歌いました。前日カラオケボックスで何度も練習しましたが、歌はとても苦手です。大きな声では歌えました。冒頭の挨拶がアカペラの下手な歌だなんて。お集りのみなさんがポカ~ンとされながら宴の幕が開けました。
ところで、せっかく宍戸くんのお母さんと会えたのに、宍戸錠(エースのジョー)のファンだったのかどうかを聞き逃した話はまたの機会に。
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