“美しさは痛みを伴うものではない” 快適なハイヒールSneex

Vol. 69
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり

3月に入り、少しずつ春の兆しが見えてくる季節となりました。ブーツの登場が少なくなり、その代わりに私の大好きなスニーカーの出番が多くなります。

 

そこで私が最近見つけたのがSneexというハイヒールスニーカー。個性的なデザインなので好き嫌いが分かれるかもしれませんが、私は結構好きです。

 

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このSneexは、Spanxという女性用シェイプウェアを製造・販売するブランドの創始者、サラ・ブレイクリーさんが2024年8月にスタートさせた新しいシューズブランドです。

 

Spanxは2000年に設立、ジョージア州アトランタに本社があります。ブレイクリーさんが補正効果のあるパンストの足の部分をカットして使うことを思いついたことがきっかけで起業したSpanxですが、多くのハリウッドセレブが愛用、シェイプウェア市場で高いシェアを誇っており、2021年には投資会社のブラックストーンがSpanxの過半数の株式を取得、この取引におけるSpanxの評価額は12億ドルと言われています。また、ブレイクリーさんは、2014年、Forbesの「セルフメイド」の女性ビリオネアとして24位にランクインしています。

 

Spanxを立ち上げたときのブレイクリーさんの目標は、市場に出回っていたものよりもフィット感が良く、より快適なシェイプウェアを作ることでした。そして、今度はより快適なハイヒールを生み出すことになったのです。

 

@sneex The perfect NYE accessory… #sneex ♬ original sound – Sneex

 

遡ること十年前、その時すでにSpanxのビジネス自体は成長をたどり順調でしたが、ブレイクリーさんに悩みがありました。それは、会議に行く時に履くハイヒール。つま先が締め付けられるようなハイヒールばかりで、気に入ったものが見つからないこと。「人類は月に着陸したのに、痛くないヒールを発明できないなんて!」と彼女は言います。

 

多くのブランドがハイヒールのデザインを改良して、履き心地を良くしようとしてきました。コールハーンなどの有名なシューズブランドは、いずれも足を安定させるために、パッド、アーチサポート、ヒールカップを増やしたハイヒールを開発しています。ブレイクリーさんは多くのものを試しましたが、求めていた快適さは得られなかったそうです。

 

そこでブレイクリーさんは、自分でこの問題に取り組むことに。よりよいハイヒールを作るため、Spanxのブラジャーのデザインをしている女性二人を採用しチームを結成。ブレイクリーさんにとって、実際にハイヒールを履く女性、そして靴業界に深く関わっていない女性たちでチームをスタートさせることが重要だったと言います。

 

@sneex Meet your commute’s new best friend… 🤝 #sneex ♬ original sound – Sneex

 

チームはハイヒールを分解し、より快適なものを作る方法を探し始めます。ブレイクリーさんは、つま先を圧迫しないようにすること、足の指の付け根にかかる圧力を軽減すること、歩行時の全体的な安定性を向上させることという三つの問題点に着目しました。

 

チームは多くの試作品を考案しましたが、どれも大きな違いはありませんでした。ブレイクリーさんは、既存のハイヒールより格段に良いものでなければ、新しい会社を立ち上げることに投資したくなかったそうです。他のハイヒールと比べてちょっと良いものではなく、飛躍的に良いものを求めましたが、自分が求めるぴったりのものがなかなかできませんでした。その時にブレイクリーさんは「スニーカーのような履き心地のヒールが欲しい」とチームに言ったのだそうです。これが重要な転機となり、ハイヒールスニーカーを作ること。Sneexの始まりでした。

 

ブレイクリーさんによると、ほとんどのハイヒールのかかと部分にはインソール(中敷き)がありませんが、Sneexはスニーカーのデザインを借りて、つま先からかかとまで、靴底全体にパッドを入れています。そして快適さの重要な部分が、つま先とかかとにかかる重心の比率変更です。従来のハイヒールはつま先部分にかかる重力が80%、かかとにかかる重力は20%ですが(それによりつま先部分が圧迫されて痛みを感じる)、Sneexはそれぞれ50%で設計されています。

 

@sneex

That’s a wrap on 2024. Stay tuned for more exciting drops and styles next year… 😎✨

♬ original sound – Sneex

 

快適な靴のデザインができ、今度は製造してもらおうという段階で問題が起こりました。今まで製造してきたハイヒールとはあまりにも違っており、適切なスキルも設備もないという理由から、工場での製造を拒否されたのです。

 

チームはヨーロッパ中の工場を回り、試してみたいという工場を一つだけ見つけましたが、8ヶ月後、製造が難しすぎるという理由で断念。ほとんどの靴工場はヒールかスニーカーのどちらかを専門にしているので、ハイヒールスニーカーを製造することが難しかったことが原因でした。ブレイクリーさんとチームには、ハイヒールとスニーカー製造の両方に精通した工場が必要だったのです。

 

しかし、何年もの努力の末、ついにSneexのデザインを製造できる意欲的なスペインの工場を見つけました。構想からは10年ほどかかっています。Sneexは市場に出回っている他のハイヒールよりも驚くほど快適だそうです。価格帯は395ドル〜595ドル(約59,000円〜89,000円)。

 

@sneex Introducing Sneex, a luxury hy-heel. Invented by @sarablakely who was tired of the pain of wearing high heels. Designed for women who write their own rules. #Sneex #SaraBlakely ♬ original sound – Sneex

 

Sneexウェブサイトにあるブレイクリーさんのメッセージをご紹介したいと思います。

 

25年間、製品を通して女性を擁護することが私のミッションでした。快適さが考慮されていない製品が作られています。私たちは「美は痛みを伴うものである」という言葉を信じ込まされてきました。でも、本当にそうである必要があるのでしょうか?人から「なぜ靴なの?なぜ今?」と聞かれると、私は「ハイヒールを履いたことはある?」と聞き返します。

 

ハイヒールを履き始めた時から、快適なハイヒールを発明することを夢見ていました。でも、クローゼットにある他の選択肢には飽き飽きしていました。私は全く新しい種類の靴、遊び心を刺激し、再び服を着るのが楽しみになるようなものを切望していました。

 

Sneexは、ただのヒール付きスニーカーではありません。何年にもわたる革新と試行錯誤の結晶です。私たちは、ハイヒールを履いた時に不快に感じる部分を、すべて解決する新しい型を作りながら、従来の型を打ち破りました。

 

Sneexが女性たちに新たな高みを目指し、限界を押し広げ、決して妥協しないよう力になれることを願っています。人生においても、ファッションにおいても。Sneexは、パーティーで靴を脱いだすべての女性、仕事でフラットシューズを履き、バッグにハイヒールを入れている女性、ハイヒールを履く日々は終わったと思っている女性への私のラブレターです。

 

Sneexが女性たちに夢を追いかけるためのあと1インチ(あるいは3インチ😉)を与えてくれることを願っています。結局のところ、足が痛いときに世界を変えるのは難しいですから。

 

素敵なメッセージですよね。ブレイクリーさんは、美しさは痛みを伴うものではないと言っています。確かに以前は「おしゃれは我慢」とよく聞きましたが、今はもう時代遅れだと言われています。

 

最後に、ブレイクリーさんの日本語訳付きのインタビューが興味深かったのでご紹介します。何かのヒントになれば幸いです。

 

 

(参考)

SNEEX Official Site

Sara Blakery – Forbes

The founder of Spanx designed a more comfortable high heel. But will anyone wear it? – Fast Company

Spanx founder Sara Blakely introduces new line of luxury shoes – CBS Mornings

How Sneex Got Everyone Talking and Scored the FNAA 2024 Launch of the Year Award

プロフィール
FIND IT. LOVE IT.
藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。
foxylilly.com
Instagram: @foxylilly

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