必読!シンガポールにおけるクリエイティブ産業の2025年度予測

Vol.51
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
51回目は年度末ということで、シンガポールにおけるクリエイティブ業界の2025年の”大石的”大予測を発表したいと思います!

 

目次

  1. ギグエコノミーの成長がクリエイティブ人材の働き方を変える

  2. 企業の「社外クリエイティブチーム」化が進む

  3. AIとギグエコノミーの共存:脅威かチャンスか?

  4. さらに多くのシンガポール発のブランドが世界市場へ進出か

  5. まとめ:フリーランスクリエイターの時代がシンガポールに到来!?

ここ数年、シンガポールでは特に、ギグエコノミー(※)が急速に発展しているように感じます。これまではライドシェアやフードデリバリーの労働者に注目が集まりがちでしたが、デザイナー、デジタルマーケター、コンテンツクリエイター、ブランディングストラテジストなど、クリエイティブ業界やマーケティング業界でも大きな変化が起こっています。シンガポールの企業やフリーランス人材と直接関わる中で感じた現状を踏まえ、2025年に向けた予測をお伝えします。

※ギグエコノミー:インターネットやアプリをとおして単発の仕事を受注する働き方、またはその経済形態のこと

予測1. ギグエコノミーの成長がクリエイティブ人材の働き方を変える

シンガポールでは特に2020年以降、企業のデジタルシフトが進み、広告・マーケティング・ブランディングの分野では、プロジェクトごとにフリーランスを起用するケースが増加しています。

私の会社でも、日本企業のシンガポール進出を支援する中で「固定費を抑えつつ、柔軟にクリエイティブ人材を活用したい」という相談を受けることが増えています。たとえば、ある日本の美容ブランドは、シンガポール市場向けにSNSマーケティングを強化するために、地元のデジタルマーケターや動画クリエイターとコラボを行いましたが、彼らはフルタイム社員を雇うのではなく、必要な時に適切な人材を確保する形を選んだのです。

データでもこのトレンドは裏付けられており、シンガポールのフリーランサーの数は2019年以降増加傾向にあります。現在の労働人口の約10%がフリーランスとして活動していると言われており、米国に本社を置く、世界最大級のクラウドソーシングサービス・Upworkの調査では、アジア太平洋地域の企業の50%以上が、ギグワーカーの採用を今後増やす予定と回答しています。

予測2. 企業の「社外クリエイティブチーム」化が進む

私自身、シンガポールの日本企業と仕事をする中で、マーケティングやデザインを「社外チーム」としてアウトソースする動きが強まっているのを感じています。たとえば、ある日本のアパレルブランドは、シンガポール市場でのブランド認知度を向上させるため、フルタイムのマーケティング担当者を雇うのではなく、以下のような形でクリエイティブ業務を外部委託しています。

〇ブランディングストラテジスト:ローカル市場のリサーチとブランド戦略立案
〇デザイナー:SNS広告用のクリエイティブ制作
〇デジタルマーケター:広告運用とデータ分析

結果として、Instagramのフォロワー数が千人単位増加し、オンライン販売だけでなく店舗売上が前年比で増加しました。このように企業が「必要なときに必要なスキルを持つ人材を活用する」動きは加速していくのではないかと思っています。

予測3.AIとギグエコノミーの共存:脅威かチャンスか?

最近のトレンドとして、AIツールの普及がギグエコノミーにどう影響を与えるかが大きなテーマになっています。特にChatGPTやMidjourneyの登場で、ライターやデザイナーの仕事が減るのではないかという不安の声もあります。

実際、企業のSNSマーケティングではAIを活用したコンテンツ生成が進んでおり、特に基本的なバナー広告やコピーライティングはAIに置き換えられる可能性が高いです。

しかし、私の経験上、AIに完全に置き換えられる仕事は少なく、人間のクリエイティブな価値はむしろ高まると考えています。人は感情で動く生き物です。AIが作ったかどうかはわかりやすく、すべてAIが制作したものが果たして人の心を動かすでしょうか?

これはシンガポールに限らずですが、特に以下のような分野は今後もフリーランスに高い需要があると考えられます

〇ストーリーテリングが求められるコンテンツ(ブランドムービー/ドキュメンタリー動画&記事など)
〇企業のコアメッセージを設計するブランディング業務(ミッション・ビジョンの策定/コミュニケーション戦略など)
〇ローカル市場の文化を理解し、パーソナライズされたマーケティング戦略を立案する業務(市場調査/データ活用/キャンペーンなど)

AIが「量を生み出す」一方で、人間は「質と感情を生み出す」ことが求められる時代へ加速していくと予想しています。私が直接接点のあるシンガポールのクリエイターも、とてもいい感性を持っていますし、仕事の精度も非常に高いです。

予測4. さらに多くのシンガポール発のブランドが世界市場へ進出か

シンガポールのクリエイティブ業界は、今後さらにグローバル市場へ展開するチャンスが増えてきていると考えています。

すでにCharles and KeithやBeyond the vinesといったアパレルブランドやTWG、BACHA COFFEEといった飲料ブランドが日本でも展開を始めていますが、さらに多様なブランドやプロダクトにおいてシンガポール発が増えてくるかもしれません。

実際、シンガポールの政府もクリエイティブ業界の輸出を支援しており、シンガポール政府の法定機関であるEnterprise Singaporeの助成金を活用することで、シンガポールのクリエイターが海外市場で活躍しやすい環境が整ってきています。
シンガポールのクリエイターが世界市場で評価される機会が増え、クリエイティブ業界の活性化にもつながっていくだろうと思っています。

まとめ:フリーランスクリエイターの時代がシンガポールに到来!?

2025年、シンガポールのクリエイティブ業界は「ギグワーカー」のキーワードを中心に、企業の外部クリエイティブチーム化やAIとの共存、グローバル市場への進出という大きな流れが起こることが予想されます。

これからのクリエイターに求められるのは、変化を受け入れ、自分の強みを活かし、柔軟に適応する力。変化の大きいこの時代だからこそ、自分のスキルを磨き、新たなチャンスを掴む最高のタイミングかもしれません。

弊社の活動について

私たちフェローズシンガポールは、ここシンガポールや東南アジアを拠点としているクリエイティブ人材やプロフェッショナル人材と多くのネットワークを持っています。

この記事を読んでくださる企業の皆様には、フェローズシンガポールをぜひ課題解決や新たな取り組みに活用していただければと思います!ぜひプロフィールよりお気軽にご相談ください。

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. 代表
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。2012年 京都外国語大学 卒。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。シンガポール国内のクリエイティブ人材や専門職人材に特化した人材マネジメントサービスを提供している。
Contact:https://www.fellow-s.com.sg/contact-us/
X(Twitter):@junya_oishi
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100063693212316
LinkedIn:https://sg.linkedin.com/company/fellows-creative-staff-singapore

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP