WEB・モバイル2015.10.07

オバマ大統領のHOPEポスターをデザインしたシェパード・フェアリーの最新グラフィティ・アート

Dig It! NYC Vol.84
Dig It! NYC 藤井さゆり

2008年のアメリカ大統領選挙時、オバマ大統領の“HOPEポスター"を作り、オバマ候補の知名度に一役買ったアーティスト、シェパード・フェアリー。

そのシェパード・フェアリーが、先月、巨大なグラフィティ・アートを完成させたというので、早速見に行ってきました。それがこちら。

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車でニューヨークのダウンタウンを出てニュージャージーへ向かう高速からちょうど見える場所にあります。 グーグルマップ上での位置

幅は約45メートル、高さ約14メートルある巨大なグラフィティ・アート。完成度がとても高く、グラフィティ・アートというよりも、壁画と呼ぶほうがふさわしいほど、美しく洗練された仕上がり。間近で見ると圧倒されます。(実際に見に来ていた人は“mural"(壁画)と呼んでいたので壁画と言うほうが正しそうです)

Shepard Fairey from Mana Contemporary on Vimeo

こちらのビデオで、実際にアートを仕上げていくプロセスがわかるのですが、全てステンシルによるスプレー缶の着色で描かれており、早回しになっていても大掛かりな様子が伺えます。

HOPEポスター以降、彼は世界的に有名なアーティストになったわけですが、彼のキャリアは、もともとストリートから始まったもの。これまでにニューヨークを始め、デトロイトなどに数多くのグラフィティ・アートを描いており、イギリスの覆面グラフィティ・アーティスト、バンクシーと引き合いに出されることもあります。

このアートの完成に合わせて、シェパード・フェアリーが、ニューヨークで5年ぶりにソロ展示会を開催していたので、マンハッタンのチェルシーエリアにあるJacob Lewis Galleryに行ってきました。

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アーティストであり社会活動家でもある彼は、反ブッシュ、イラク戦争、石油会社への批判といったものをテーマに描いており、冒頭で紹介したグラフィティ・アートにも、金融腐敗、石油会社、軍需産業、嘘偽りで塗り固められた企業への強烈な警告、皮肉といったメッセージが込められています。

先ほど彼のキャリアはストリートから始まったと前述しましたが、1989年のデザインスクール在学中にフランス人プロレスラー「アンドレ・ザ・ジャイアント」のステッカーをステンシルで作ったことが、彼の作品が世に出るきっかけとなります。そのステッカーは彼と彼の仲間によってストリートの至るところに貼られ、コピーされながら世界中に広まりました。そして、ステッカーやコピーを見たアート関係者から連絡が入り、ギャラリーへの展示の話が舞い込み始めたのだそうです。

最後に、彼のドキュメンタリーフィルムをご紹介します。彼の作品スタイルに深い影響を与えたパンクロック、スケーターカルチャー、スケートボードブランド、アンドレ・ザ・ジャイアントステッカーの誕生と広まり、オバマ大統領のHOPEポスターとアメリカ政治、自身のアートのテーマなどについて語っています。

Shepard Fairey: Obey This Film

ドキュメンタリーフィルムの中で彼の言葉で一番印象的だったのがこちら。

“I think the role of my favorite artists in society is to give people things to dream about and reflect upon."

僕が好きなアーティストの社会での役割は、人々に夢を見させるもの、深く考えさせてくれるものを与えることだと思う。

彼はアーティストの観点から話していますが、グラフィック・デザイナーさんを始め、ビジュアルをメインにしたお仕事をされているクリエイターさんにとっても通じるものがあるのではないでしょうか。

この秋、ニューヨークへ観光へいらっしゃる方がいたら、ぜひ彼のグラフィティ・アートを見に行ってみてください。

シェパードフェアリー展示会 Shepard Fairey: On Our Hands 場所:Jacob Lewis Gallery 地図 2015年10月24日(土)まで開催 ◼︎シェパード・フェアリーウェブサイト obeygiant.com

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
Foxylilly.com
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