ケツを拭かない国家に未来があると思いますか?
- 番長プロデューサーの世直しコラムVol.68
- 番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光
ロック歌手の矢沢永吉が、雑誌のインタビューで珍しく政治の事に言及していました。この人は自分の影響力の強さと怖さを分かっているから、政治的な発言は一切しないので有名でもありました。なんか、ついに我慢ができなくなったんでしょう。
「今回の原発の関係者全員、誰もケツ拭かない。みんなで渡ってるからケツ拭かない。犯人がいないから。これ、官僚がそういう仕組みを作ったのかもしれないけど、ケツを拭かない国家に未来があると思いますか?」
責任って言葉はどういう意味なのかがよくわからなくなってくる世の中になってまいりました。
震災後の処理の問題、原発の問題、東京電力の対応、いじめ問題、消費税増税の問題、国の借金の問題、沖縄の基地の問題、領土の問題、いろんな問題が身の回りに山積しているのでしょうが、それを眺めていて、最近、ついに分かってきた事があります。それは「誰も責任をとろうとしない」ということです。それは、エーちゃん的に言うと「日本は誰もケツ拭かない社会」。 逆に言うと、話は好転もせず、打開策もなく、トップの首がすげ変わるだけで誰も責任をとらなくていい様なシステムを長い時間をかけて作り上げて来たのが日本。みたいな事か?
建前ときれいごとを並べたててきたあげくに今の日本はある。
いい加減、その感じにうんざりする事が分かってきて、珍しくみんなが怒って行動に出ました。反原発のデモ。原発再稼働反対。毎週、何万人の人が首相官邸をかこんで、原発再稼働の反対を叫んでいます。なぜか鳩山さんも参加しています。それに対する政府の対応は「無視」です。どういうことなんでしょうか?
いじめの問題に関しても、最近のいじめ事件の顛末は、証拠を隠蔽したり、証言がひっくり返ったり、茶番劇にしか見えない様なことをやっているけれど、どうみても、根本的にいじめをなくすためにやってる事には見えない。 裁判したら、誰が悪いってことになるのが極端に嫌で、面倒くさくて放っておいたら起きてしまった事件。なのにまた、その責任を誰かがとらされるのは嫌だ、と争っているようにしか見えないですね。賠償額を減らしたいだけ。俺のせいじゃないよ。と。
その反面、比較的規模の小さい所では、「責任」に関して、どんどんいろんな事が厳しくなってきています。経済状況は好転の兆しは見えない中で利益の少ない仕事をひいひい言いながらやっているにもかかわらずです。今まであいまいだった部分での法律の縛りが急に厳しくなって、行政処分されたりコンプライアンス違反を問われたりすることが増えています。それはそれで嫌な曖昧な事が減りいい事もあるんですが。逆に中小企業の経営者は責任の所在をはっきりさせられているのです。
CMを作っていてもそれをすごく感じるのです。プロデューサーは現場の責任者です。いままで曖昧にしてきた部分が、急に法律で規定される事が多くなった。あれ?ってことが起きて、ものすごい騒ぎになり、責任をとってその仕事をクビになる事も出てきた。"コンプライアンス死に"しそうな勢いです。準備しなきゃ行けない事や、事前に手を打たなければ行けない事、発言に気をつけなければ行けない事が極端に増えました。プロのスタッフにむかって小学生に言うようなことを建前でも言わなければいけないこともある。ブログやつぶやきに殺されそうなときもある。 仕事は減り、制作費は縮小しているのに、心配事は増える。そんな状況。
それでも、やる事があるだけ、まだましです。実際にやる事が無い人がどれだけいることか。
そんな中、「消費税は増やしません」という"マニフェスト"で政権を取った政党が「消費税増税」に躍起になっているのをみると、それが現実的な選択だったとしても、「何やってんだよ、この嘘つき集団め」と思ってしまうのは不思議な事では無いでしょう。言うに事欠いて「近いうちに国民の真意を問う」だと?そりゃいつなんだよ?原発にしても、あんだけの人数が集まって抗議してるのに無視してんじゃねえ。「自分が責任者だ」と出てくる政治家はいねぇのかよ。と。
もう、なんか、ほんとの事を言おうぜ。としか思えないのです。 「みんな聞いてくれ、歴代の総理大臣が『俺におっかぶせないでくれ』と先送りにしてきた問題がもうこんなになっちゃっている。最悪だ。でも、これからの事を考えて行かないと、子供たちに未来も無いじゃないか。だからみんなで協力してくれよ。責任をとると言うことは、その問題を解決するための具体的な行動をとることであって自分から逃げ出すことではない。いろんなしがらみがあるけど、国民の健康と財産を守るということにちゃんと立ち返るから、そのための施策を考えて提案するから。それに対して一人一人が具体的な意見を言ってくれよ。みんなもまじめに考えてくれよ。足引っ張るんじゃなくてさ。」 ってなんで言わないんだろう?
まあ、そんなに簡単だったら政治なんて誰だってできるんでしょうけど、気分はそういう事でいけないのか?国民がやるせなくなるようなことばっかりしてないで、国民がやる気出す様な事を考えてほしい。
本当にふんづまって嫌な事ばっかりの世の中です。 憂鬱なことや心配な事だらけで自分の責任すら放棄したくなってくる。自分の範囲の責任を守っても、金ばっかりとられて、嘘ばっかりつかれたらあほらしくなるからです。今の日本をオペレーションしてる人たちはその事をまず気づいてほしい。泥仕合ばかりの政局は政治では無いからです。
それでも個人は、がんばっていればいい事はあると信じていないと生きて行けないじゃありませんか。
僕はやろうと思います。一生懸命やる。弱らないでやるしか元気でいられないからです。たまたまやりたい事をみつけてやってきた事なのに、周りのせいで一緒に弱っちゃうのは嫌だ。任せておいたら国をへんてこにするアホが邪魔してんじゃねえぞ。俺はごめんだぜ。と思う。現実にやってらんねえと思う事がある反面そう思う。俺は面白いCM作って物を売るんだよ。どうやったらそれができるか真剣に考える。なにがいけなくてうまくいかないのか真面目に自分と向き合う。それしかやる事ないじゃない。やめてどうする?へこたれそうな心を鼓舞していくしか無いですから。
エーちゃんはその雑誌でこう締めくくります。 「自分が原因で問題が起きたら、自分でケツを拭く。礼儀正しく、おはようございます、ありがとうございます、それをちゃんと言うとか、ここをもう一回、日本人全員がやれるかどうかでしょうね」
「ケツを拭かない国家に未来があると思いますか?」名言だと思います。
Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)
~株式会社リフト 第一制作部 チーフプロデューサー~
- 1968年 佐賀県生まれ、44歳。
- 1991年 ニッテンアルティ入社(旧 日本天然色映画株式会社)
- 2000年にプロデューサーに昇格。
- 2009年 社名がリフトに変更。
プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが(日本にはCMプロデューサーと名乗る人が2000人もいるそうです)、自分のケツを自分で拭こうとしているプロデューサーは何人いるでしょうか?矢面に立つのは当たり前だとつっぱって仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。根性論を書いているかと思ったら、意外に現実論者でもあります。
<主なプロデュース作品>
- AGF ブレンディボトルコーヒー(原田知世さんと子供)
- 日清食品 焼きそばU.F.O
- マルコメ 料亭の味
- リーブ21 企業CM
- コーセーサロンスタイル 『髪からはじまる物語」行定勲監督Webムービー
- クレイジーケンバンドPV