The Tanks: As Found
- London Art Trail Vol.2
- London Art Trail 笠原みゆき
7月27日、ロンドンオリンピック開幕。開幕式の夜私が訪れていたのは、テートモダンに新しくオープンした“The Tanks”。 “15 weeks of Art in Action”と題して期間限定でオープンし、パフォーマンス、映像、対話、ライブイベントといったライブアートに的を絞ったギャラリー。テートモダンは火力発電所を改造した国立の近現代美術館として知られていますが、The Tanksという名はその燃料のオイルタンクからきていて、タンクや重機の収納スペースとして元々そこにあった歪な地下空間をライブアートの実験の場として解放してみようという試みのようです。
この晩のイベントはFive Yearsギャラリー主催のオープン・ディスカッション“The (Im)possible School”-(不)可能な学校。今回のプロジェクトはテートが運営しているサマースクールにFive Yearsを招待するかたちで実現。The (Im)possible SchoolはFive Yearsが地元の教師と2008年から始めた無料の美術学校?“YES. YES. I KNOW. FREE SCHOOL. I KNOW.”の延長で、東ロンドンの小さなギャラリーが行なってきたプロジェクトを大規模な美術館とのコラボレーションで行なった場合どのように働くのかという試み。
Five Yearsはまず事前にネット公募で以下の様に呼びかけました。 ”テートモダン運営の教職員の為のタンクス・サマースクールのアクティビティ企画書を募集。全ての企画書を受け入れます。提出された企画書はそのまま“(Im)possible School Book: As Found”?(不)可能な教科書になります。参加無料。テートモダンはこの教科書を使い、7月23日~27日の5日間、地元の教職員を招いてタンクスにてサマースクールを行ないます。その後27日の晩にオープン・ディスカッションを行ないます。” (注:内容は略していますので詳細はFive Yearsのサイトをご覧下さい)
46の企画書が集まり15名の教職員がこのサマースクールに参加。参加した教員の一人は、実に有意義な体験だったが、子供達と行なうのであればテキストを使ってよりも実際のアートに触れられる機会を設けたいと語っていたのが印象的でした。事実これまでFive Yearsが行なってきたFree Schoolは、企画書を出した作家自身が行なう作家抜きでは不可能な参加型パフォーマンスであり、教科書は所詮教科書?ということでしょうか。
イベントにはEdwina Ashtonによるパフォーマンス(下写真)や、Ladies of the Pressによる参加者のノートをその場で全て編集、冊子に刷り上げる“a live publication”なども盛り込まれました。 ※(Im)possible School Book: As Foundはこちら(PDFファイル)からダウンロード可能です。
さて話をThe Tanksに戻すと、ギャラリーはLive, Commission, Collectionの3部に分かれていて、上記のイベントはLiveの空間で行なわれました。この後時間があったので(金曜日のテートは夜10時まで) Commission, Collectionも見て回りました。Commissionは若手韓国人作家Sung Hwan Kin, CollectionはテートのコレクションからSuzanne Lacy、Lis Rhodesと、この分野のパイオニア達の作品が展示されていました。
The Tanksの運営費用はオリンピック予算の一部からきています。世界中から40名以上のアーチストを招待し、3ヶ月間に渡ってほぼ日替わりで行なわれるライブアートは誰でも参加可能で、多くは無料。ロンドンが見せたいのはオリンピックというスポーツの祭典だけではなさそうです。
Profile of 笠原みゆき(アーチスト)
2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。
ウェブサイト:www.miyukikasahara.com