冬の夜の夢?! Lumiere London
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- London Art Trail Vol.44
- London Art Trail 笠原みゆき
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“Garden of Light" © TILT 中央にたつのはシェイクスピアの像。
真冬の夜に咲き乱れる巨大な薔薇や得体の知れないトロピカルな植物に囲まれて当惑気味のウィリアム・シェイクスピア。これは『夏の夜の夢』ならぬ『冬の夜の夢』?!今回はロンドン中心部の31カ所で4日間に渡って行なわれた光の祭典、ルミエール・ロンドンを紹介します。
まずここは、チャイナタウンから目と鼻の先のレスタースクエアガーデン。作品はリサイクル素材を使って光の彫刻を生み出すフランスのアートコレクティブ、TILTの“Garden of Light"。
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“Plastic Islands" ©Luzinterruptus
次はトラファルガースクエアへ。光り輝く噴水を見るとドーナッツ状に浮いているのは数千ものプラスティックボトル。日本列島の南の北太平洋に浮かぶ、第八の大陸とも呼ばれるゴミの島、太平洋ゴミベルト(Great Pacific Garbage Patch)からインスパイアされたLuzinterruptusの“Plastic Islands"。実際の北太平洋を浮遊するゴミの島は何とヨーロッパ大陸より大きいのが現実。潮の流れの緩やかなこの海域に集まったプラスティックゴミは海面で刻々と光分解が進み、やがてプランクトン並みに小さくなると、稚魚や小魚が誤って食べ食物連鎖に組み込まれていきます。ゴミの八割は陸上経由。食物連鎖の基礎を揺るがしている私達の行為をもう一度見直す必要に迫られています。
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“Eléphantastic!" ©Topla-design & Catherine Garret
人ごみをかきわけ、リージェントストリートへ。地鳴りのような鋭い雄叫びに思わず頭上を見上げると、アーチの上で砂ボコリをあげ足踏みをするアフリカ象が!“街中にもしゾウが現れたら?"を再現したTopla-design & Catherine Garretの“Eléphantastic!"
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“Les Luminéoles" © Porté par le vent
アーチを抜けると、ピカデリーの空には巨大な魚がゆらゆら舞っていて‥。その下では中世風のロングドレスをきたお姉さんが光の花の中に立ち、その魚をロープで凧のように操っています。おとぎ話のような世界を演出するのは、Porté par le ventの“Les Luminéoles"。
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“195 Piccadilly" © NOVAK タイトルはBAFTAの住所から。
この顔に見覚えあり?!アクションペインティングのように壁に絵の具が放たれ、映画やTVでお馴染みの英国俳優達の顔が現れては消えていきます。投影されているのは、英国映画テレビ芸術アカデミー(BAFTA)のオフィスビルで、画像はBAFTAのアーカイブから。このアニメーションはNOVAKの“195 Piccadilly"。
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“Brothers and Sisters“ ©Ron Haselden
更に北西にメイフェアの公園、グロスベナースクエアへ。 芝生の上にあどけない子供達の顔が次々と浮かび上がります。LED光のロープを使った彫刻は Ron Haseldenの “Brothers and Sisters“。東ロンドンの児童の肖像画を基に制作した作品で、Haseldenがここ数年、子供達と続けているシリーズ。
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“Sanctuary" ©Sarah Blood
耳をすますと庭の両脇に設置された暗闇に浮かび上がる光の巣箱から小鳥のさえずりが? ここは屋上にある秘密の庭ブラウンハートガーデンズ。聞いていると返事をするようにまた別の巣箱から鳥のさえずりが聞こえてきます。闇の中の小鳥の会話を演出するのはSarah Bloodの“Sanctuary"。
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“1.8 London" © Janet Echelman & Studio Echelman
東にオックスフォードサーカスへ戻ります。繁華街の空に輝くのはオーロラ?!見ているとその虹色は徐々に移り変わります。作品はJanet Echelman & Studio Echelmanの “1.8 London"。地球の自転をその日、1.8マイクロ秒縮めたという2011年の東日本大震災。そのバイブレーションを観測したNASAのデータを3D化した作品。
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“Dresses" © Tae gon Kim
キムのドレスはシリーズで他の2カ所でも展示されていました。
更に東にキングスクロスへ。雪の女王はこんなドレスを着ているのかも?と思われるような光のドレス。フランスの哲学家、 ロラン・バルトの恋愛を徹底分析した書、“恋愛のディスクール"からインスピレーションを得たという、Tae gon Kimの“Dresses"。こんな繊細なドレスの作者が男性ということにちょっと驚き。
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“Circus of Light” © Ocubo
楽器を抱え、ビートルズでお馴染みのアビーロードを歩く動物達。
投影に使われていたのはロンドン芸術大学の一つのセントラル・セント・マーチンズの校舎。
“ロールアップ、ロールアップ、サーカスが始まるよ!"真紅の幕が開け、 次々と飛び出すキャラクター。アクロバット、ダンスにティーパーティとめまぐるしいアニメーションはポルトガルの会社Ocuboの“Circus of Light"。
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“The Light of The Spirit" © Patrice Warrener
最後はテムズ川のほとりのウェストミンスターへ。こんなカラフルな教会もあり?!ユネスコの世界遺産としても知られる歴代の王や女王の眠るウェストミンスター寺院。 寺院を建て信仰深かったエドワード懺悔王(証聖王)もこんな極彩色の装飾にしたかったのかも?光の演出はPatrice Warrenerの“The Light of The Spirit"。
さて、ルミエールは英国でロンドンが初という訳ではなく、2009年に非営利アートイべント運営団体のArtichoke Trustとイングランド北東部にある古都ダラム市の共同運営で始まった催しで、同市ではビエンナーレ形式でその後も開催されています。ダラムは世界遺産の寺院と城を持ち、丘が多く美しい人口5万人程の小さな都市。今回ロンドンでの展示を巡るにあたり、花火大会に行く覚悟で!との思惑通り、どこに行ってもまずはその人ごみに辟易、もう少し開催地区を中心部のみならず分散化できたらいいのにというのが本音。一方で、やはり空き地や空き家など街のあちこちが使えるような小さい町の方が向いているのかもと思ったのも事実で、今度一度ダラムのルミエールも訪れてみたいと思いました。
Profile of 笠原みゆき(アーチスト)
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©Jenny Matthews
2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。
ウェブサイト:www.miyukikasahara.com