映像2016.07.27

ないものなんて、ないのだろうか

とりとめないわ 第11話
とりとめないわ 門田陽

 いつの頃からか、クリアファイルをよく買うようになりました。展覧会やら落語会やら芝居の記念につい一枚買ってしまいます。旅先でのお土産にもペラペラでカサバラないのでよく買います。コンビニでクリアファイルがおまけの時には手が伸びます。それが積み重なってけっこうな量です。ざっと数えたら100枚を優に超えています。これがノートの類と違い薄いのですがフニャっとしていて意外と収納に不便です。そこで、もしかしたらと思ってアマゾンで調べたらありました!クリアファイルをファイルするホルダー。

 早速購入してみました。予想通りといえばそれまでなのですが、届いたのはただのクリアブック。収納部分が通常のA4サイズよりほんの一回り大きくて確かにA4のクリアファイルがファイルできます。それにしてもこんなもん(と、言っては失礼)誰が買うのだろうと自分のことは棚にあげてカスタマーレビューを見たら20件あり、しかも4.7と高得点。一番のターゲットはアニメ好きのコレクター。それとアイドル系のコンサートやライブグッズ収集のいわゆるアキバ系の人たちが多く買っているようです。世の中探すと何でもありそうです。

 さてクリアファイルはたまたま増えていったのですが、一方シール集めは僕の趣味のひとつでこちらは積極的に買っては小学生のようにあちこちペタペタ貼っています。子どもの頃、冷蔵庫に貼ったりすると怒られましたが、今はやり放題。こんなときだけは独り身の醍醐味を噛みしめます。しかし所詮男は中2から変わらないと言われるように、「何でこんなところにこんなシールを貼ったのかよ、オレ」というのもよくあることで。そんなときにお世話になるのがこれまたアマゾンにありました。シールはがし強力タイプ。メーカーはコクヨです。何でもあります。ということは、ないものなんて、もうそんなにはないのかもしれません。

 高校時代、新聞部のメンバーで完全犯罪の方法を徹夜で語り明かしましたがそこでみんなが思いついたものはすでにどこかの小説や映画やテレビで使われたものばかり。新しいトリックやミステリーは出ませんでした。恋愛小説のネタの大半は平安時代の「源氏物語」で書き尽くされたと言ってもよさそうです。元祖ゲスな光源氏。ないものなんて、もうないのかもしれません。

 今回のタイトルひとつにしてもそうです。同じようなキャッチフレーズがいくつもあります。「あるものが、ないのよ。(1986年ソニー)」、「ないものがある。(1989年伊勢丹)」、「売ってないものは、作るしかない。(1986年ブラザー)」、「ないものは作るしかない。(2008年サッポロ)」、「ないものをつくれ(2010年ホンダ)」。そういえば、ちくま文庫に「ないもの、あります」って本もありました(2009年)。僕の好きなドラマ「古畑任三郎」には僕の大好きな「刑事コロンボ」とほぼ同じ設定や罠や台詞が出てきますが、どちらも素敵で面白い。ないものなんて、もうないようで、でもまだきっとあるはずです。因みにトリックとキャッチコピーは著作権がはっきりしないところがよく似ています。

 ところで、クリアファイルホルダーのカスタマーレビューの中に2件、羽生結弦選手のクリアファイル保存のためという人たちがいました。羽生選手はキャンペーンでクリアファイルになることが多く(ロッテやデイリーヤマザキや東京西川等)、特に今年のキシリトールではガム2個で1枚もらえて全7種類。ファンはクリアファイルコンプリートのためにガム14個を大人買いが当たり前だったそうです。恐るべしクリアファイル、じゃないか恐るべし羽生結弦の話はまたの機会に。

とりとめないわ第11話

Profile of 門田 陽(かどた あきら)

門田陽

電通第5CRプランニング局
クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター
1963年福岡市生まれ。
福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。
TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。
趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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