アートと自然を満喫! Latitude Festival
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- London Art Trail Vol.50
- London Art Trail 笠原みゆき
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ラティチュード・フェスティバルのシンボルの彩色羊。でも羊にはメーわくな話?
緑豊かな森に美しい湖、ネオンピンクの羊がお出迎えのフェスティバルといえば、サフォークの海辺の村のヘンハム・パークで行なわれる四日間の夏の祭典、Latitude Festival。3万5千人を収容するアート、ミュージック、演劇、コメディ、文学とバラエティに富んだ祭典は今年で11回目。ロンドンから北東に187km、電車とバスで3時間程。記念すべきコラム第50回はこちらからお伝えします。
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人って、人が集まる所が好きなのね。でも自分のその一人。
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Faraway Forestに入ってすぐの所にある立派な樹木。Jane Lennardのインスタレーション。
会場はどこもごった返し。喧噪をはなれ、Faraway Forestという森に入るとそこには見事なセイヨウトチノキ(Conker tree)。 でもその森一番の木には黄色の薔薇が咲いていた?黄色い薔薇の生花はフェスティバルの友情の証として、摘んで身につけていいのだとか。Jane Lennardのインスタレーションで、期間中切りたての薔薇が毎朝追加されます。
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Tom Marshman。近所の噂好きのおばさんというキャラ。
森を進んでいくと沢山の小さな小屋の立つHome Live Artのエリアに出ます。 一人の女性?が白いレースのカーテンのかかった小屋の中から手招きしています。中にはレースの掛かったテーブル、壁には額に入った家族の写真、沢山の物語のメモ。メモ(物語)の一つを選ぶと女性(Tom Marshman)が、一対一でミュージカル調の一人芝居を演じてくれます。物語は“隣人"というテーマで、パフォーマンスと引き換えに来場者から集めたもの。
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中程で男性が水仙の花に頭を突っ込んでいるのが見えるかな?Ruthie Fordのインスタレーション。
おばあちゃんが編んでくれたのは手袋じゃなくて、巨大な花だった?!2mから3mもある色とりどりの毛糸の花はRuthie Fordのインスタレーション。小人になった気分で花の下を散歩します。
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Solasの森とその手前の湖の光のインスタレーション。
昼間はヨガやヒーリングをする癒しの森、Solasは、夜になると光のインスタレーションの空間へと生まれ変わります。水質の良い淡水の湖は水浴も可。ああ水着持ってくれば良かった……。
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Fernando Rubioの"Everything by my side"
目が覚めるとベッドの隣には知らない女性がいて!?ではなくて、こちらは Fernando Rubioのインスタレーション&パフォーマンス“Everything by my side"。ベッドに入ると一人の女優があなただけのために話をしてくれるという何とも贅沢なもの。
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Les Enfants Terriblesの“The Fantastical Flying Exploratory Laboratory"
気球に吊られた船上で悲鳴をあげているのはオムツをつけた赤ん坊達!劇団Les Enfants Terriblesによる、ラティチュード博士の空飛ぶ探求実験室の冒険の物語は、人形劇、コメディを交えて子供から大人まで魅了します。
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Reggie Watts
コメディ・アリーナへ入ってみます。完璧な英国英語で観客を煙に蒔きながら笑いを取り、切れ味の良い即興演奏を繰り広げるのは、実は米国人のReggie Watts。
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New Order
フェスティバル最終日のObelisk Arenaのヘッドライナーは、New Order。英国のクラブシーンをリードした80年代のヒット曲も飛び出す中、メンバーと同世代であろうと思われる白髪の男性陣が猛烈な勢いで踊りまくっていたのが印象的。
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一番右がJohn Hegley。
夜11時を過ぎて向かうのはポエトリー・アリーナ、詩の劇場。夜中にビール片手に詩の朗読?と思うなかれ!ウクレレを抱え、80年代初頭からロンドンの路上でバスキングを始めた詩人で、ミュージシャン、コメディアンのJohn Hegleyの舞台は筋金入り。BBCラジオやTVでもお馴染みの彼は、エジンバラ・フェスティバルの常連でもあり、ポエトリー・アリーナは勿論、満員御礼。
まだまだ紹介しきれませんが今回はこの辺で。とにかく劇場や舞台、ワークショップなどが沢山あって人気のある所や小さな舞台は早くから並ばないと参加出来ない、観られないのが難点ですが、せかせかせず、のんびりあちこち巡るのも楽しいもの。家族連れにも人気で子供達が楽しめるワークショップや劇場も充実しています。
実は会場のヘンハム・パークは、ラウス家が500年近く所有する、個人の持ち物。2003年、ラウス家は15平方キロ程の広大で自然の豊かな土地を売りに出しました。しかし翌年方針を変え、自然を保護しながら地元の活性化や観光促進に繋がるフェスティバルなどの祭事を行なう地にする道を選びました。 実際、会場の飲食店は地元の農家と提携し地元の食材を使い、地ビールを促進。また、全電力は廃植物油のバイオディーゼルで100%グリーン、食品の容器にはバイオパックと呼ばれる微生物が分解出来るもののみを使用するなど環境に配慮しています。キャンプ場には幹が2m以上あるオークの木があちこちにあり、調べてみると古代の森でしか見られないような珍しい樹木を含む、昔ながらの自然が残されている土地だということも分かりました。自然とアートを満喫出来るフェスティバル、来年も出来たらまた訪れたいです。
Profile of 笠原みゆき(アーチスト)
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©Jenny Matthews
2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。
ウェブサイト:www.miyukikasahara.com