女子修道院で悪魔に出会った夜!? Nunnery Gallery
- London Art Trail Vol.55
- London Art Trail 笠原みゆき
東ロンドンにある地下鉄BowRoad駅を出て大通りを東に向かうと、19世紀の元女子修道院が見えてきます。現在この建物は1995年から東ロンドンを拠点とする美術教育慈善団体のBow Arts財団の運営するアーティストスタジオとして使われています。今回はこの一角にあり、その建物からその名を取ったNunnery Galleryより。
訪れたのは1,500名の応募の中から100名を超える国際的アーティストが参加した映像とライブパフォーマンスの祭典“Visions 2016”の最終日。 二ヶ月半にわたり、12週の間、週代わりで映像インスタレーションを交えたライブパフォーマンスが行なわれました。
エキショビジョンホールに展示してある映像作品を眺めていると、キュレーターのシンジアが、準備ができましたので中へどうぞと小劇場へ招きます。
2016年の3月の満月の夜に独身で30歳を迎えたGur Piepskovitz。どうして僕はシングルなの?と、真の恋人を探すため忠実な召使いのマヤと魔法を使って過去の恋人達と対話、最後にはその夜出会った魅力的な男性、悪魔(デビル)に結婚を誓うことに!作品はイスラエル出身のGur Piepskovitzの二人芝居、“I'm a Victim of My Generation”。Mary McLaneのバイセクシュアルを告白したセンセーショナルな19歳のデビュー書、“I Await The Devil's Coming(1901年出版)”とAnton Laveyの“Satanic Bible(悪魔の聖書、1969年出版)”を基にPiepskovitz自身の自伝的な告白を描いた舞台。
芝居を見た後はカフェで一休み。テーブルには59カロリーと書かれたナプキン、その中央には59の数字の形に置かれたチョコレートビスケット、59ペンスの缶ジュース。何やら「59」という数がキーワードのようです。作品はNYから参加のIrina Danilovaが、2012年から続けている59日ごとに、もしくは59にちなんだ日に行なっているプロジェクト、“DINNER 59”。“DINNER 59”は参加者が自身の料理本の59ページを開き、そこにあるレシピの料理を持ち寄ってもらうというもの。ランダムなのにこの日のメニューはひよこ豆のスープ、ポテトとラデッシュのサラダにスパイシーなアフリカン豆シチュー、ナンブレッドにデイツを挟んだチョコレートビスケットと意外とバランスがとれていました。 Danilovaによると前衛美術運動フルクサスがNYで始まったのが1959年、ライト兄弟が最初の飛行に成功したのが59秒間ということで59にちなんだプロジェクトを始めたのだとか。
閉めはこちら、ギリシャのアートコレクティブ、Tritotetartesのキャットウォーク。ポストパンク、ドラッグクイーンスタイルでそれぞれがギャラリーホール、カフェをサウンドパフォーマンスを交え、アクロバティックなダンスをしながら練り歩きます。その後ハッピーな彼らがミニシアターに集まるとそこに悶え苦しむ難民のようなキャラクターが現れて……。最後は来場者を交えてのダンスパーティーへ。
四年のブレイクを経てNunneryに戻ってきたアニュアルフェスティバル、Visions。バラエティ豊かなライブパフォーマンスが繰り広げられるフェスティバルですが、今回はほんの一部しか見られなかっただけに来年は最終日だけでなく他の日も是非訪れてみたいです。
Profile of 笠原みゆき(アーチスト)
2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。
ウェブサイト:www.miyukikasahara.com