マテル社の新キャンペーンとウーマンズマーチ、そしてトランプ大統領のアメリカ
- Vol.100
- Dig it! NYC 藤井さゆり
バービー人形で有名な玩具メーカー、マテル社が面白いキャンペーンを打ち出しました。
Dads Who Play Barbie® | Barbie
“Dads Who Play Barbie”、バービーで遊ぶお父さんたちというキャンペーンで、お父さんと娘がバービー人形で一緒に遊ぶ時間を持ってもらうように仕掛けられたもの。要はドリームハウスや車が付いた高価なセット売りのための販促なのですが、コマーシャル自体、テレビでフットボールゲームの放映時に流れたのものなので、確実にお父さんがターゲット。切り口が新しいというか、そういう時代になってきている、ということでしょうね。
キャンペーンには“Time spent in her imaginary world is an investment in her real world.”、彼女の想像の世界で過ごす時間は、彼女の現実世界での投資になる、というメッセージが込められています。素敵です!
Twitter上でもたくさんのシェアとポジティブなコメントが寄せられおり、好意的に受け止められているようです。
アメリカ中のお父さんが見る
— り (@salida_1928) 2017年1月25日
NFLの試合中、そのタイミングで
このコマーシャル…💭💞💭💞#barbie #DadsWhoPlayBarbie https://t.co/zZjUYtRQxe
One of my fave moments ever. #dadswhoplaybarbie 😍 pic.twitter.com/XQJckdZFXS
— Jennifer Smith (@jennidarling) 2017年1月23日
Love this picture ! #dadswhoplaybarbie @Barbie pic.twitter.com/MAiIQL1clm
— Kristen Taekman (@KristenTaekman) 2017年1月23日
これと関連して、バービー人形のコマーシャルでは、以前にこんなものも作り出されています。
Imagine The Possibilities | Barbie
小さな女の子たちが、大学教授、獣医、サッカーコーチ、世界を飛び回るビジネスウーマンになりきる様子を隠しカメラにて捕えたもの。登場する他の人々の反応はリアルなものだそうです。このコマーシャルには“When a girl play with Barbie, she imagines everything she can become.”、女の子がバービーで遊ぶ時、彼女がなれる全てのものを想像する、というメッセージが込められており、バービーがただのおもちゃではなく女の子たちの未来を育むものである、と思わせられます。
また、白人のスラリとしたブロンドが典型的なイメージのバービーに最近、変化が訪れています。「アフリカンアメリカン」「ラテン系」「アジア系」と違う人種のバービー人形は以前にもありましたが、その他に「小さいサイズ」「ぽっちゃりサイズ」「背が高いサイズ」と、体型にも変化をつけたバービー人形が売り出されました。
The Evolution of Barbie
このビデオでは、新しいシリーズのバービーで遊ぶ子供たちが「このバービーは私のお友達に似ているの」「こっちのバービーは私に似ていて、こっちは私のお母さんに似ているの」「みんな違っていることがいい」と言います。コマーシャルですから言わせている部分もあるかもしれませんが、スラリとした白人のバービーをみんなが好きであるとは限りません。アメリカの現実を見ても、様々な体型をした様々な人種が住んでいる国なのですから。
また、先ごろの大統領選挙に合わせて、「大統領と副大統領バービー」も売られていました!
バービー人形を売り出すのに政治的要素を盛り込むとはさすがアメリカ。今回、ヒラリー・クリントンが大統領候補だったので、アメリカ初の女性大統領が誕生する可能性もあり、それに乗っかった形。残念ながらヒラリーはアメリカ初の女性大統領にはなれませんでしたが、現在バービー人形で遊ぶ女の子の中で、未来には大統領になっている子もいるかもしれませんよね。
こちらのページでは、バービーで遊ぶ女の子たちに「大統領になったら何をする?」というインタビューをしていて、「朝ごはんにアイスクリーム!」「みんなに2頭のユニコーンをあげる!」と答えている様子がとても可愛いです。
さて、大統領と言えば、2017年1月20日の就任式にて正式にドナルド・トランプが第45代アメリカ大統領になりました。アメリカではトランプ大統領擁護派と反対派に大きく分かれ、双方の対立を招く事態に。アメリカだけではなく、世界各国でもかなりの衝撃が走っています。
そんな中、就任式の翌日には、トランプ氏の「イスラム教徒入国禁止」「女性蔑視発言」「オバマケアの解体」「地球温暖化の否定」など、女性や人々の権利が脅かされる発言や政策に反対する女性達が中心となった大規模なデモ行進「ウーマンズマーチ」が発足、ワシントンDCをメインにアメリカ全土で行われ、ヨーロッパ、東京も含めて、世界中に広がりを見せています。就任式の翌日に行われたデモ行進では、ワシントンDCで100万人、世界で500万人がデモ行進に集まりました。
私は、トランプ氏の「アメリカ第一主義」「TPPからの脱退」といった経済政策については勝手にしてくれという感じですが、トランプ氏の差別的な発言や政策によりアメリカ国内で異人種や性的マイノリティへのヘイトクライムが拡大していることに怒りをこらえれません。アメリカに住むユダヤ教徒やイスラム教徒に対し、トランプ支持者と思われる人々から「国に帰れ!」と言われたり、刃物を突きつけられたりする事件が発生しています。
反グローバリズム、石油ガス産業の促進、反地球温暖化、マイノリティへの差別発言といった新しいものと逆に向かっているようなトランプ氏。
マテル社のキャンペーンは、新しい時代を感じさせるものなので、トランプ氏が大統領であるという現実にどうしても失望を感じてしまいますが、トランプ氏の流れに巻き込まれないよう、この国で自分はどう生きたいか、どう生きていくべきかを日々自問自答している毎日です。
barbie.mattel.com
womensmarch.com
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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