テロ、環境問題、LGBTーTEDを通して理解を深める
- Vol.104
- Dig it! NYC 藤井さゆり
先日、イギリスのマンチェスターで、アリアナ・グランデのコンサート中に起こった自爆テロ。22人の若者が亡くなってしまった、衝撃的で痛ましい事件。この事件を聞いた時、志半ばで亡くなってしまった若い命、残された家族のことを思うと、涙が溢れました。同時に沸き起こった自分や家族にもテロが降りかかる可能性があることへの恐怖。テロの脅威は、アメリカにいても日本にいても、逃れることはできません。
そしてこれを書いている今日(2017年6月1日)、トランプ大統領が温暖化対策の国際同意「パリ協定」より離脱、というニュースが入ってきました。パリ協定はアメリカにとってフェアではない、これにより米国内の多くの雇用が失われる、と言うトランプ大統領の説明に「何でそうなるの?!」と呆れると同時に、苛立ちと失望を感じています。この件に対し、世界各国は深い失望と遺憾をあらわにし、アメリカ国内でも、石炭産業以外の多くの業界が批判しています。
同じタイミングで、個人的にもう一つ気になったニュースがあります。
先月発表された、台湾での「同性婚合法化」。アジア諸国初のことだそうですね。これは合法化されていないアジア諸国にも影響を与える大きな変化だと思います。日本でもパートナーシップ条例を施行している市がいくつかありますが、国で法律を定めるとなるとまだまだ難しそうです。ちなみにアメリカでは2015年に合法化されており、私の周りにも幸せな同性婚をしている人たちが何人かいますが、宗教上などの理由により反対派も多くいます。
この3つのニュース、テロ、アメリカパリ協定離脱、同性婚。言い換えるとそれぞれ人が生きていくために大切な「安全」「環境」「人権」ということになります。
― テロが怖い。テロリストは悪だ。
― 「パリ協定」を離脱したアメリカは間違っている。
― 同性愛者などLGBTへの差別や偏見はよくない。
そう思っているけれども、それで終わってしまっていいのだろうか。テロ、環境問題、LGBTについて、私は何を知っているのだろうか。もっと理解を深めるべきなのでは、と思い始めました。
そこでまずは、専門家や第一人者、経験者などの話を聞く絶好のチャンスであるTEDで、そのテーマについて語っている公演を聞くことにしました。英文を読むのが億劫な私にとっても、公演が日本語訳されているので難しい英文を読むことも必要ありません。
ということで、テロ、環境問題、LGBTといったテーマで行われたTEDの公演で、いくつかシェアしたいと思います。タイトルは英語、日本語ともTEDより抜粋しています。
※日本語キャプションをオンにしてください。
まずは「テロ」のテーマから3つ。
Deeyah Khan: What we don't know about Europe's Muslim kids
ディーヤ・カーン: ヨーロッパ社会で行き場を失うムスリム(イスラム教徒)の子供たち
The surprising way groups like ISIS stay in power
ベネデッタ・ベルティ: ISIS(イスラム国)のような武装集団が勢力を伸ばす驚くべき理由
Manwar Ali: Inside the mind of a former radical jihadist
マンワ・アリ: 元イスラム原理主義者の心の中
次は「環境問題」のテーマから3つ。
Christiana Figueres: The inside story of the Paris climate agreement
クリスティアナ・フィゲレス: 2015年「パリ協定」に至るまでの歩みと裏話
Michael Metcalfe: A provocative way to finance the fight against climate change
マイケル・メトカルフェ: 挑戦的な資金調達手法で気候変動を食い止める
Tshering Tobgay: This country isn't just carbon neutral -- it's carbon negative
ツェリン・トブゲ: CO2排出量マイナスの国、ブータン
最後は「LGBT」のテーマから3つ。
Tiq Milan and Kim Katrin Milan: A queer vision of love and marriage
ティク・ミラン&キム・ケイトリン・ミラン: クィアな私たちが 自分らしくいられる愛のかたち
Jenni Chang and Lisa Dazols: This is what LGBT life is like around the world
ジェニ・チャン、リサ・ダゾルス: 世界のLGBTの生活とは
Yoruba Richen: What the gay rights movement learned from the civil rights movement
ヨルバ・リチェン: ゲイ・ライツ・ムーブメントが公民権運動から学んだもの
いかがでしたか。
テロリストがなぜテロを行うのか、どのようにして拡大しているのか、元テロリストから語られる本音や、テロリストグループに加わるイスラム教徒の若者たちの心の闇、それに社会がどのようにして関わっていくべきなのか。テロは怖い、テロは悪だ、と目を背けるだけではなく、まずは、これからテロが起こらないように、テロリストを拡大させないように、私たちにどのようなことができるのか、と考えさせられた公演でした。
環境問題については「アメリカにとって温暖化対策に対する基金への拠出負担が多く不平等だ。」というトランプ大統領への回答がここにあるような気がしています。「パリ協定」が国際的に同意されたプロセス、温暖化対策へのポジティブな資金調達方法、そしてブータン王国の環境への取り組みは本当に素晴らしいものでした。
LGBTのテーマについては、主に、カップルの結婚や人権についての公演を取り上げました。お互いを尊重し合い、LGBTQ解放運動で活躍するカップルの愛の形、LGBTカップルが出会った世界15カ国を旅して出会ったLGBTの人々、同性愛者の権利擁護運動の歴史から現在など、とっても勉強になったと同時に、感動で涙したほどでした。
テロ、環境、LGBTのテーマだけでも、この他にも素晴らしい公演がたくさんあります。ぜひ興味がある方はチェックしてみてください。
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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