想いは重い? @Alice Black
- Vol.74
- London Art Trail 笠原みゆき
- The Weight of Thoughts ©Gianinna Delpino
今回訪れたのはソーホーの一角にあるAlice Black ギャラリー。一階に生地屋のあるジョージアン建築のビルの二階に上っていくと現れたのはゴースト?!ではなくて、白いシャツに白いスカート、黒い目隠しをして、 ゆっくりとそして昆虫のようにしなやかに踊っている一人の女性。向かいの壁には木炭で壁一面にインストラクションが書かれていています。
― 静粛に願います。アイコンタクトや微笑みをどうぞ。 ― 靴を脱いでおあがりください。 ― 必ず、左にある黒い紙にあなたの“想い"を書いて、パフォーマー(踊っている女性)に貼り付けてください。髪以外は身体のどこに貼り付けても構いません。 ―“想い"は最近あなたの気持ちを搔き乱したり、不安にさせていること、気分を暗くしたり、落ち込ませていることなどです。
よく見ると女性の体のあちこちに何か書かれた黒いカードが貼り付けられています。隣の棚を見ると、黒鍵のように並べられたカードと、白いゲルインクペンが用意されています。早速私の“想い"を書いて女性のスカートに貼り付けます。
女性はアーティストの Gianinna Delpino。パフォーマンスは “The Weight of Thoughts" ― 想いの重さ。朝の10時から夜の9時までの11時間に渡る継続パフォーマンスで、私が訪れたのは午後3時ごろだったので丁度半分を過ぎたところでした。午後6時にはバイオリニストがパフォーマンスに加わり静寂が破られるとのこと。 どうして彼女は人の重荷を背負って踊りたいのでしょうか。 人々を救うため念仏を唱え一人踊り出した一遍上人のよう?夜9時には彼女の白いドレスは人々の“念い"でいっぱいになったのでしょうか。 実はこちら、このギャラリーでサマーフェスティバルとして、7月14日から8月14日まで一ヶ月間に渡り行われている現代アートの展示とパフォーマンスの一つ。フェスティバルは "Desire & Menace"と題して8つのプログラムが組まれ、音楽や映像、彫刻、インスタレーションや物語の語りなどを絡めた様々な実験的ライブパフォーマンスが開催されています。また、出来るだけ多くの人が参加できるよう主に夜を中心にプログラムが組まれています。中には深夜12時から翌朝3時までというパフォーマンスも!
Alice Blackは、20代の若手ギャラリスト、Alice Blackが昨年ソーホーにオープンした実験的なギャラリーで、この先どんな展示が行われるのか楽しみなギャラリーです。来週にはフェスティバル最後のプログラムである、Sol Bailey-Barkerによる、音の彫刻のパフォーマンスが行われる予定で、また是非訪れてみたいと思いました。
Profile of 笠原みゆき(アーチスト)
2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。
ウェブサイト:www.miyukikasahara.com