今年のスーパーボウルCM:広告料は過去最大!Toyota、Google、そして楽天も!
- Vol.124
- Dig it! NYC 藤井さゆり
今月は、毎年恒例「スーパーボウル」のCM特集!
「スーパーボウル」とは、NFL(ナショナルアメリカンフトボールリーグ)の優勝決定戦のことで、第53回目となる今年は、2019年2月3日(日)、ジョージア州のアトランタで行われました。毎年2月の第一日曜日に行われるため「スーパーボウルサンデー」と呼ばれます。
スーパーボウルはテレビ中継されるのですが、放映権のあるアメリカの3大テレビ局(ABC、NBC、CBS)によって毎年持ち回りとなっており、今年はCBSで放映されました。
1億人以上が視聴するほどの全米最大のスポーツイベントであり、多くの人にリーチできるため、その中継で放映されるCMにも注目が集まります。スポンサーとなる企業はスーパーボウル用に特別なCMを制作するので、大掛かりなものも多く、毎年見応えがあります。
また驚くべきなのは、高額なCMの広告料。年々増加傾向で、去年は520万ドルだったのが、今年は30秒枠で525万ドル(約5.8億)で、過去最大。10年前の2009年は295万ドルでしたので、10年で200万ドル以上も増えているのです!
そういった背景を踏まえまして、今年も、アメリカでのランキングとは全く異なる、私が個人的に面白いなと思ったスーパーボウルCMをご紹介します。
2 Chainz x Adam Scott | Expensify This :30 Super Bowl Commercial 2019
Expensify - Youtube
レシートの記録と経費を管理するためのツールであるアプリExpensify(エクスペンスィファイ)のプロモーション用に制作された、ラッパーの2 Chainz(トゥーチェインズ)と、人気コメディアン俳優のアダム・スコット出演によるミュージックビデオの一部を、スーパーボウルCM用に30秒で切り取って放送されました。
ビデオ全編はこちら。
2 Chainz X Adam Scott - Expensify This
2 Chainz - Youtube
実はこのビデオにはキャンペーンが仕込まれています。Expensifyアプリをダウンロードし、ビデオに出てくるレシートを見つけて、それをExpensifyアプリを使って撮影すると賞金が当たる!というもの。このアプリの特長とミュージックビデオの世界観が存分に表現されていて、途中で出てくるアダム・スコットの存在が2 Chainzと真逆でコメディタッチなCMとなっています。
100 Billion Words | Google Super Bowl Commercial 2019
Google - Youtube
GoogleのCMは「Google Translate」。CMで語られている「言葉は傷つけ、分断してしまうこともある。しかし、日々、世界で最も翻訳されている言葉は、“How are you?”、“Thank you”、“I love you”である」というメッセージが心に響きます。Google Translateにより世界が近くなっているような、暖かい気持ちになりますね。
Toyota RAV4 Hybrid Super Bowl 2019 TV Commercial, 'Toni' Featuring Antoinette Harris [T1]
iSpot.tv
トヨタは、トニ・ハリスという一人の女性アメリカンフットボールの選手の人生をフィーチャー。誰もが彼女を「小さ過ぎる」「遅過ぎる」「弱過ぎる」「次世代へ影響を与えるなんてことはない」「フットボールの奨学金はもらえない」と思い込んでいた。だが、誰もが思っていたその憶測を裏切ることにー。彼女の生きる姿とRAV4 Hybridとを重ね合わせた、感動的なCM。
How Do You Say "Rakuten"? | Rakuten Super Bowl Commercial
Rakuten - Youtube
楽天がスーパーボウルのCMに登場!このCMは、日本人にとって興味深いです。Rakutenという表記は、アメリカ人にとって正確に発音することが難しいのですが、それを逆手に取り、「きちんと“RACK-uh-ten”(ラクテン)と読めたら、お金を差し上げます」というマシンをアメリカのある地域3ヵ所に置いたところ…というちょっとリアリティ番組っぽいCM。予想通り「ラクトォン!」「ラクェン!」と発音できない人もいれば、正確に発音して賞金をゲットする人も。日本人ではなくても、印象に残るCMだと思います。
The 100-Year Game | SBLIII
NFL - Youtube
毎年、「これを日本で放送したらヤバイね!」というスーパーボウルCMがあるのですが、今年はこれだと思います。NFLの現役選手やOBが出席するパーティで何が起こったのか?という設定で、実際にNFLの現役選手やOBが出演して演技しているので、ファンの人には興奮ものでしょう。すごいのは、映画のアクションさながらに、選手たちがテーブルセッティングや、ケーキにダイブし、走り回り、ぶち壊していく様子。いや〜面白いです!さすがNFL、さすがアメリカ!
Washington Post Super Bowl message: Democracy Dies in Darkness
Washington Post - Youtube
ワシントンポストによる「民主主義は暗闇の中で死ぬ」という衝撃的なタイトルのCM。内戦に巻き込まれたり、殺害されたりして死亡、もしくは行方不明となっているジャーナリスト3名を中心に、ジャーナリズム、ジャーナリストたちに敬意を示した、強いメッセージ性のあるCM。最後の“Knowing empowers us. Knowing helps us decide. Knowing kepps us free.”ー知ることは、私たちに力を与え、決心することを助け、私たちを自由にし続ける。というメッセージが心を揺さぶります。
Microsoft Super Bowl Commercial 2019: We All Win (Extended Version)
Microsoft - Youtube
Microsoftは何年か前もハンディキャップのある人々に焦点を当てたスーパーボウルCMを制作していました。今年もコンセプトは同様に、手にハンディキャップを持っている子供たちがコントローラーを使ってXboxで遊ぶシーンがとらえられており、そこにはハンディキャップの壁はなく、“We All Win”ーみんなが勝利する、という形が描かれています。ハンディキャップの子供が出演するCMというのは、日本では見たことがないので、これもアメリカだから可能なCMかもしれません。何より子供たちの楽しんでいる様子に感動します。
Stella Artois | Change Up The Usual | 2019
Stella Artois - Youtube
「セックス・アンド・ザ・シティ」のサラ・ジェシカ・パーカーが演じるキャリーと、1998年公開の映画「ビッグ・リボウスキ」のジェフ・ブリッジスが演じるデュードが出演する、ビールメーカー、ステラ・アルトワのCM。お店のスタッフが、キャリーの大好きなカクテル「コスモポリタン?」と聞くと「今日はステラ・アルトワにするわ」と言うので、みんなビックリ。変わって、お店のスタッフがデュードに、いつものカクテル「ホワイトロシアン?」と聞くと「今日はステラ・アルトワにするよ」と言うので、またまた大事に。「セックス・アンド・ザ・シティ」と「ビッグ・リボウスキ」という毛色が全然違うコラボがとても意外。有名作品からのキャストですが、ネットの評価はあんまりのようです。
the whopper's out of the bag. keep eating like Andy. #EatLikeAndy pic.twitter.com/Bg3ZuK1V3J
— Burger King (@BurgerKing) 2019年2月4日
Burger King - Twitter
ポップアートの旗手、アンディ・ウォーホールがハンバーガーをケチャップにチョンチョンと付けて食べる様子を移しただけのシンプルなCM。スーパーボウルのCMと言えば、派手で大掛かりなものが多いので、却って目を奪われてしまいます。アンディ・ウォーホールがハンバーガーを食べているだけなのに、なぜかこのCMがアート作品っぽく見えてくるから不思議です。
いかがでしたでしょうか。
今年は、そんなにインパクトのあるCMは少なかったと思いますが、やはり素晴らしいCMが多いと思いました。以前にも書きましたが、スーパーボウルCMは、その時のアメリカの時世や、企業のスタンスなどが表現されていて、興味深いです。
個人的に印象に残ったのは、女性アメリカンフットボール選手をフィーチャーしているトヨタのRAV4 HybridのCMで、この他にも、ここでは紹介しませんでしたが、アメリカのプロテニス選手、セリーナ・ウィリアムズ出演のCMや、女性ヒロインが活躍するアメコミ映画「キャプテン・マーベル」のCMなどもあり、女性の活躍を応援するようなCMが目に付きました。
3月8日は世界女性デーですし、今後、女性がもっと表舞台で活躍していくような流れになっていくのでは、と感じています。来年はどんな時世の流れを組んだCMが制作されるのか楽しみです。
参考:ここから、2019年スーパーボウルで放映された全CMを見ることができます。
iSpot.tv - 2019 Super Bowl Commercials
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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