「徒歩徒歩トボトボ五七五(おじさんぽ。永代橋篇)」
- とりとめないわ 第43話
- とりとめないわ 門田 陽
さて最近のお気に入りコースは鍛冶橋通りから永代橋周辺。特にこの時期隅田川沿いの景色はまさに滝廉太郎の「花」そのもの。これを楽しみにしながらしかし普通の散歩と少し違うマイルールで歩いて行きます。それは目に留まったものをその場で五七五にすること。五七五は単なる一人遊びなので俳句ではなく川柳だったり武玉川(七七)だったりと自由演技で構わないのですが詠むまでは次に進めません。目安は60分で6句です。
午前6時、散歩開始でいきなり出会ったのが道の脇に止められた黒塗りの高級車とその前で直立の運転手さん(※写真➀)。ベテランの風貌。そういえばちびまる子ちゃんの花輪くんのところのヒデじいは一体どのくらい花輪家に仕えているのでしょうか。それとどういうわけなのか、ど根性ガエルの「教師生活25年!」が決め台詞の町田先生のことを思い出したのです。思考回路は理屈じゃないです。では最初の一句。
〇黒塗りの車が職場で25年
午前6時10分、横断歩道でふと信号を見ると「佐賀一丁目」という地名(※写真➁)。へぇ~、ここは佐賀なんですね。判官贔屓の性格なのかどうしても九州(地元)の地名には敏感です。埼玉なのに上福岡市だったり富山なのに宮崎湾だったり山形なのに長崎町だったり。それにしてもここが佐賀とは。では一句。
〇東京の中心で佐賀と叫ぶ
本歌取りでも何でもいいんです(苦笑)、つぎつぎッ!
午前6時20分、さきほどの佐賀一丁目が面した永代通りの道幅が広いところは片側2車線と3車線の合計5車線なのですが間に緑地帯やガードレールがなく、なんと「〇」と「×」で区切られていてじっと見ていると不安になります(※写真➂)。真ん中の「×」が急に裏切りそうで恐ろしい。真ん中が「△」じゃなくてほんとによかったです。そこで、一句。
〇マルとバツだけじゃ決まらぬときがある
午前6時30分、この散歩のお楽しみの永代橋からの眺め(※写真➃)。現在永代橋は舗装工事中(今年の10月まで)で囲いがされていますが橋の上からの隅田川と佃島の風景は過去と未来の東京が凝縮されたようなフシギな構図です。ではでは、また一句。
〇今会いたい滝廉太郎に今会いたい
午前6時40分、永代橋を渡ってすぐの牛丼屋さんの店先で気になってしまう光景がありまして(※写真➄)。においにも釣られて朝カレーならぬ朝牛丼。牛丼店滞在時間約5分。お腹が減るのはいいことです!で、一句。
〇牛丼のへこみやキズって何だろう
って、そのまんまじゃないか(没!!)
午前6時50分、牛丼腹を抱えながら鍜治橋通りを進んで行きます。スマホを見るともうすぐ7時、そして今日の歩数が6000歩を超えたところにあったベンチ代わりの椅子に気持ちが救われました。これは間違いなく行政ではなく近所のどなたかがそっと置いたのだと思います(※写真➅)。新川二丁目の人柄のような椅子です。そこに腰かけて一句。
〇椅子も人も見かけでわかることがある
午前7時、ヨシッ!6句作ったしそろそろ帰ろうとしたときに目に入って来てしまったビル(※写真➆)。あれあれ!?惜しいというか違うというか、1階はいいのになぁ~、2階と3階は換わるわけにはいかないのだろうか。さらに欲を言えば4階が空いているみたいなので、2階が歯医者さんで3階に耳鼻科を入れて4階が眼科であってほしいです。気になって仕方ないけど、帰って会社に行かなくちゃ。
それでは本日の締めの一句。
〇目には目の場所を歯には歯の場所を
ところで、この翌日3月21日の春分の日は新大橋通りを散歩したのですが、着替えたほうがいいよなぁ(※写真➇)と思った話はまたの機会に。
Profile of 門田 陽(かどた あきら)
電通第5CRプランニング局
クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター
1963年福岡市生まれ。
福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。
TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。
趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。