あれしちゃダメこれしちゃダメ社会

Vol.153
CMプロデューサー
番長プロデューサーの世直しコラム
櫻木 光

なんだかルールがどんどん増えていく。

常識だから。常識でしょ?
あれしちゃダメ、こうしなきゃダメ。そんなこと言っちゃダメ。
子供の頃から親や保護者、先生にそう言われて育ってきましたね。
で、指示されることは無難な方を選べ。失敗したら悲惨だぞ。と。

僕は結構そういうのを聞いたふりして適当に無視してきましたが
非常識だの、バカだの、ろくな人間にはならないだの、散々な言われ方をされてきました。
真面目な人はちゃんと聞いて育ったと思います。

大人になっても違う段階で同じようなことが起きる。
会社のルール。地域社会のルール。矛盾だらけの変なルール。
売り上げを上げなきゃダメ、規定時間以上働いてはダメ。
新しいシステムに対応しなきゃダメ。休みを取らなきゃダメ。
怒鳴っちゃダメ、人を育てなきゃダメ。
エッチな事を放送しちゃダメ、少子化で年金も少なく貯金持ってなきゃダメ。

いろんな、対処療法的な、起きた問題に取ってつけたようなルールと
もともと常識といわれる風習のようなものと混在して、もうダメダラケ。

最近はネットを使ってそう言うのを押し付ける。
自分の狭い常識から外れた人は匿名でネット上で袋叩きにする。
不謹慎警察という人たちもいる始末。

ちゃんとした考えのある人も、ルールがないと物が判断できない
何もできない人も、みんなまとめて同じルールで縛る。
誰がやってるんだかわからないけど仕組みがそうなっている。

政治家の小沢一郎が、(この人のいい悪いは置いといて)
1993年に出した『日本改造計画』の冒頭に、
アメリカの観光地、グランドキャニオンのエピソードが出てくる。
「アメリカのグランドキャニオンは、あれだけ切り立った崖なのに柵がない。日本だったらおそらく柵だらけになっているだろう。日本人は自律性がないからお上に頼り、規制を張り巡らせてもらっている。これからは柵を取り払って規制もなくし、日本人一人ひとりが自分の頭で考えなくてはいけない」

ずいぶん前からずっと僕たちはこんな感じなのです。1993年に書かれた文章から進化なし。

何をした方がいいか考えるより、何をしちゃいけないのか決められた方が楽なので、
あれやっちゃダメ、これやっちゃダメ、ってことに従って、自分で考えないで
日々過ごしてきちゃったもんだから、もう自分でもの考えられない人ばっかり。
奴隷体質。

やっちゃいけない先入観ばっかりで、おどおどして、いざという時のチャンスを逃す。
このままいくと『遭難するから山登り禁止』とか『毒で死ぬからフグ禁止』とか『溺死するから海水浴禁止』とか『お年寄りが喉につまらせるからモチ禁止』というような社会になっちゃうような勢いですね。

先入観は、人から植え付けられたり、与えられたりした情報ですよね。
結局、自分で考えた事じゃないんです。
そんなものにオロオロしていても、せっかくの自分自身がもったいない。
自分で悩んで考えたことのほうが正しいからです。だって自分のことなんだから。

規制緩和はしてると言うけれど、個人にはあまり関係のないことばかり。
都合が悪いと自己責任論。

常識というのは、アホな子たちが楽に生きられるためのマニュアルでしかないからです。

そういうことに大人になってから気づいて、手遅れだとブチ切れてとんでもないことを
する奴も増えてきました。常識に従ってきたのにいいことねえじゃねえか!と。

そんな、やっちゃダメを決める前に、決めてる側も決められる側も考えなきゃいけないことが
たくさんあるような気がするんですね。
ニュアンスとしては、「こうしたほうが未来は良くなる」という方向での思考の仕方。
大切なのは、今がダメならいい方に変わろうぜ、という意思、だと思うのです。

なんか問題が起きるたびに、ハイそれ禁止、ってやるのは簡単だと思うのです。
だけど、なぜそれが起きたのか?以前と何が変わったのか?
何がダメだったのか?どうしたらよくなるか?自分に何ができるのか?
という視点でものを考えるべきです。

これまでになく気候も過酷になってきました。
想像を超える台風が来て、想像もしてない量の雨が降る。時々地面が揺れる。
インターネット社会が成熟し始めて、人の在り方もずいぶん変わりました。
人は年老いて、数は減り、老朽化したいろんな制度は破綻をきたす。
世の中がどんどん変わって行くのに、これまでの旧態依然とした常識とかルールは守って
いいことあんのかよ?と。

あれやっちゃダメこれやっちゃダメっていう国単位の規制をそれでも作り続けんのかよ?と思う。
息もできなくなってストレスがたまり心を病む人が増えた。

ハワイ州は全米で初めて、2045年に全電力を再生可能エネルギーで「再エネ100%」を義務づける法律を制定したそうです。

「これは電力会社の問題だけではない。私たち一人一人の生き方、未来の問題なのです。どういう未来を選択するか、我々自身が考えることなのです。そして私たちは選んだ以上、自分たちのこととして進めていくしかありません」と、ハワイ電力CEOは発言したと言います。

大切なのは、できるかできないかの前に、やるという意思、変化に対して順応していこうとする意思があるかないかということですね。
あれやっちゃダメの意識の真逆にある考え方をする。

「日本とハワイは本当に似ていますよね」と取材に来た日本人記者にCEOは言ったそうです。「島国だし、エネルギー資源にも乏しい。日本は変わろうとしていないのでしょうか?」

何をどう言っても何も変わらないのはそろそろやめにしませんか?

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP