ふらりチェロ工場? @The Cello Factory
レンガ造りの建物の入り口には青々とした藤の蔓が巻きついていて、上を見上げると丸窓にチェロをデザインしたと思われるステンドグラスが目に止まります。今回はこの古いチェロ工場を利用したギャラリー、The Cello Factoryからグループ展、「Amalgamation」の紹介です。ギャラリーはロンドン・ウォータールー駅から徒歩5分。
「ちょっと光を当ててみる?」
まず入ると目に入るのはカラフルな抽象画。その隣には小さな懐中電灯が用意されています。親子連れが訪れていて、父親が子供に、「ちょっとやってみようか。」と懐中電灯を渡します。女の子が早速絵画に光を当ててみると…。まるで植物のミクロの世界を覗くかのように細かなディテールが鮮やかに浮き上がってきます。作品はAlison Goodyear の「Ougoyead 2018」。
Shibboleth 2015 ©John Bunker
一度彩色した絵画をちぎり、再構築したコラージュ作品は John Bunker の「Shibboleth 2015」。 何だかユーモラスな動物のように見える?
草木のざわめきが聞こえてきそうな鬱蒼と茂った草木が茂るここは廃墟? 行き止まりのレンガの塀にはツタが絡まり落書きがされています。一体どこに迷いこんでしまったのかと不安になる一方で、子供の頃の秘密基地を彷彿させます。 天井まで届くモノクロの墨と水彩の写実画は Juliette Losqの 「Covert 2016」。
白、黄、ピンク、赤に染められた糸が水色、黄緑、緑の糸と交わり、波打っていてまるで織物のよう。作品は Will Cruickshank の「Double Feed Hanging 2018」。
上の踊り場へ行ってみます。秋といえば、きのこに松ぼっくり。でもこのきのこ、紫色で青の斑点があって、どうやら毒キノコみたい?そういえば一見ウィリアム・モリスの草木のパターンのようにも見えますが、よくみると薬物でトリップしてしまったようにサイケデリック。作品は Sirpa Pajunen-Moghissi の「Fungus 2019」。
楽器のような絵画?手のひらサイズのピアノのような形をした小さな油彩画には一本の弦がピンと張られています。思わず学研の大人向け組み立て楽器、テルミンminiを彷彿させ、音を奏でたくなるのは私だけ…? その音色はいかに?作品は Anna Lytridou の「Untitled 2017」。
入り口付近にある細い階段を上って二階へ向かいます。丸窓の隙間から溢れる糸のようにか細い光はまるで闇夜に浮かび上がる二日月のよう。その手前にはイーゼルが置かれています。そしてイーゼルの上の額縁に掛けられた布には抽象画が描かれ、船の帆のように風にたなびいています。更にその絵画の上に映像が投射され、 見ていると鮮やかな色彩が夜空に浮かぶ打ち上げ花火のように刻々と表情を変えていきます。作品は冒頭で紹介した作家、Alison Goodyearのインスタレーション、「Painting Experiment From a Virtual Studio 2019」。
15人ほどのグループ展でしたが、 Amalgamationというタイトルの示唆するように全体として一人の作家の作品であるかのような一体感のある展示でした。 The Cello Factoryはロンドンのユーロスター発着駅でターミナル駅としても知られるロンドン・ウォータールー駅から徒歩5分以内。ロンドンを訪れた際には是非ふらりと訪れて頂きたいギャラリーです。