テスラCybertruckと「市場調査は一切しない」イーロン・マスク
シリコンバレーに本拠地を置く電動自動車メーカー、テスラが昨年11月に発表したCybertruck(サイバートラック)。車にそんなに興味がない私でもあのデザインに衝撃を受けました。見た目からはわかりませんが、後ろに荷台が着いている正真正銘のピックアップトラックです。
Instagram – Tesla @teslamotors
これ本当に製品として売られるの?キャンペーン用じゃないの?と思わず疑ってしまいましたが、きちんと公式サイトに、39,900ドル、49,900ドル、69,900ドルという価格帯で発表されています。購入する場合は、公式サイトより全額払い戻しされるという申込金100ドル(日本語版サイトでは15,000円)を支払って申込をすれば予約が完了。デュアルモーター、トリプルモーターは2021年より生産開始、シングルモーターは2022年より生産開始されるそうです。車でこういうデザインが表現されるのは映画の世界だけだと思っていましたが、自動車メーカーがああいうデザインをし、製品として売り出すことを了承され、世の中に生み出されるということに驚いていますし、楽しみでもあります。
特に見てほしいのがテスラのCEO、イーロン・マスクによるCybertruckのプレゼンです。会社の製品発表っぽくなく、マジックショーのようで見ていてワクワクします。注目してほしいのは、窓ガラスの強度を見せるため、ガラスに石を投げつけたところ、残念なことに割れてヒビが入ってしまうというアクシデントが発生してしまったところ。本人はそんなに慌てる様子もなく「貫通してないからよかったね」とジョークで流している様子も面白いです。
Watch Tesla Unveil Its Pickup Truck In Under 6 Minutes
Youtube – Business Insider
イーロン・マスクのTwitterによるとこのデザインは、1977年に公開された映画「007私を愛したスパイ」で、ジェームズ・ボンドが乗っていた車、ロータス「エスプリ」から影響を受けているそうです。以前、イーロン・マスクは、映画で実際に使用されたロータス「エスプリ」を落札して手に入れています。
Cybertruck design influenced partly by The Spy Who Loved Me https://t.co/HKBzxFNfzm
— Elon Musk (@elonmusk) November 21, 2019
Twitter – Elon Musk @elonmusk
車内の様子はこちら↓
We Rode Inside The Tesla CyberTruck!
Youtube – Like Tesla
ダッシュボードにボタンはなく、オーディオや空調は中央のタッチパネルで操作します。ミニマムで未来的なデザインですよね。
イーロン・マスクについてはもう説明する必要はないかもしれませんが、テスラではCEO、民間宇宙ベンチャーのスペースXでもCEOを務める他、脳直結型インターフェース開発のニューラリンクや、トンネル採掘を行うボーリング社など、様々な事業を手がける実業家であり起業家です。
スペースXは、「火星移住計画」を目標に、低コストでのロケット開発と打ち上げに取り組んでおり、NASAともパートーナーシップを組んでいます。
Instagram – SpaceX @spacex
ニューラリンクは2017年に設立された会社で、人間の脳に埋め込むAIチップの開発を進めており、イーロン・マスクは、アルツハイマーやパーキンソン病の治療に役立つと話しています。
Introducing Neuralink
Youtube – Neuralink
ボーリング社は2016年に設立、元々はロサンゼルスの交通渋滞を解消するため、地下にトンネルを掘りそこに車を自動で走行させる計画で始まりましたが、現在はラスベガスの地下に「ループ」という交通システムを整備する方向で動いています。
テスラは2018年、アメリカ国内での高級車市場でトップとなり、ベンツ、BMWを上回るほどの成長ぶり。
先見性があり、いくつもの事業を世界的な規模で成功させているイーロン・マスクの経営手腕やセンスに感心し、少しでも経営に関するヒントを望む人は少なくないと思います。
テスラの販売会社を無くし、オンラインのみでの購入に踏み切ったり、コストのかかる広告や宣伝を一切行わずしてCybetruckの予約台数が25万台を記録したことなど、彼の経営手法は、他の自動車メーカーとは違っている部分もあることは事実です。製品を作れば、ニュースメディアやソーシャルメディアでどんどん取り上げてくれますし、テスラを見ていると、多額な宣伝広告費を払って、外部会社に委託する時代はもう終わりつつあるのかもしれない…と思ってしまいます。
With no advertising & no paid endorsement
— Elon Musk (@elonmusk) November 23, 2019
Twitter – Elon Musk @elonmusk
また、先月、米国空軍が主催したあるイベントでは、「市場調査は一切しない」こと、また、「自分が好きではない製品を他の人が気に入るわけがない」と言っています。言い換えると「自分たちが好きで生み出した製品は、顧客も気に入るはずだ」ということだと思います。そういう思考で生み出された製品がCybertruckということなんですよね。
そう言えば、スティーブ・ジョブズも同じようなことを言っていました。以下はスティーブ・ジョブズの言葉。
消費者に何が欲しいのかを聞いてそれを与えるだけではだめだ。それが出来上がるまでには、消費者は新しいものを欲しがるだろう。
ベルは電話を発明するときに、市場調査などしたか?
偉大な製品は情熱的な人々からしか生まれない
スティーブ・ジョブズは自分が生み出すアップル製品を愛していましたし、何よりも自分の直感を信じていました。イーロン・マスクがスティーヴ・ジョブズの影響を受けているのかはわかりませんが、世界的に偉大な製品を生み出している二人に共通項が見えます。
スティーブ・ジョブズもイーロン・マスクも、自分が手がける事業においてたくさん失敗もしてきているのは事実ですが、彼らは過去にしてしまった失敗よりも、これからどんなものを生み出したいかという思いの方が強く、いつも未来を見ているような気がします。世界的に偉大なものを生み出している人々はそこが違うのかもしれませんね。
(参考)
Forbes – Elon Musk Says He Doesn’t Do Market Research And Avoids The Daily News