アニメ背景美術はキャラクターが活躍する世界を描く!

Vol.8
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言
関田 有應

こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー 関田有應(せきたゆうおう)です。
8回目のコラムは「アニメ背景美術はキャラクターが活躍する世界を描く!」です。

真夏の海岸の砂浜を走る主人公のキャラクター!
どんな景色をイメージしますか?

アニメ背景美術は、その景色・シーンを描きます。

マンガ原作では描かれた世界がありますが、小説・ライトノベルなどは全てが文章で書かれているため、脚本を元にその世界観に合った舞台や景色を絵で表現することになります。
オリジナル原作の場合は監督をはじめメインスタッフで、原作者の思い描く世界を絵にして表現します。
簡単に言えば、アニメ作品のキャラクター以外の「背景・舞台」を絵で描くのが背景美術です。

アニメ作品で、画面のキャラクターのしめる割合より、背景のしめる割合の方が多いとは思いませんか。
カメラが引けば引くほど背景の占める割合は増えて行きますね。

テレビ番組・ドラマ・CMなどの実写表現の世界では、ロケ地(撮影場所)に行ったり、スタジオにセットを組んだりしますが、アニメ表現では、過去・現在・未来の時間軸、その世界も、さらに海も山も街も、全ての景色を絵で描き起こします。
作品全体の舞台を絵で描き作り出しているのが背景美術であり、被写体のある実写表現との違いです。

今回は、意外と知られていないアニメ背景美術の仕事、背景美術がアニメ制作の中で重要な役割を持ち、キャラクターが生き生きと活躍出来る世界を描く背景美術の醍醐味や面白さのお話をさせて頂きます。

背景美術の業務は、美術設定・美術ボード・背景画の3つに分ける事が出来ます。

美術設定は、アニメキャラクターが活躍する世界・舞台を具体的に設定する工程です。
最初に行う事は、大きな広い舞台の設計図を線画で描き、広さや大きさなどが分かるようにシーンをデザインし描く工程です。
設定画とも呼ばれます。
マンガ原作の場合は、そのエッセンスを取り入れて描いていく事が多く行われますが、アニメ化する場合、
あえて世界観を変える事もあります。
正しく、アニメ作品の世界観を決める重要な工程です。

美術ボードは、美術設定をベースに色を塗り、作品の世界観をより鮮明に作り上げていく工程です。
色を塗る事により、線画だけの世界に時間軸(朝・昼・夜)、天候や季節などの表現が加えられた絵が描かれます。
アニメーターと同じように背景美術も、描き手によっても表現が違い、作品の世界観も大きく変わります。
テレビシリーズでも劇場版でも、監督を始めとしたメインスタッフのイメージに合うまで、何十枚何百枚と描きながら作品の世界観を決めていきます。

背景美術は、アニメの世界観を作り出す重要な役割を持っており、高い技術力と画力が求められるため、手間も時間もかかります。

背景画は、美術設定と美術ボードを元に、カットに合わせた背景を描く作業を行います。

新人の背景美術・背景スタッフはこの作業から入ります。
求められる能力ですが、まずはアニメーターと同じように「画力」です。
「画力」は言うまでもなく絵を描く力です。
デッサン力、絵画を描く力。
道具を使いこなす技術力。
自然の景色や、風景、建物を描くため相当な画力と技術力を求められます。
デジタル化が進んでいる背景美術の世界では、鉛筆や筆、絵の具の使い方だけではなく、 Photoshop、タブレットを使うデジタル技術を求められます。
さらに最近は、3DCG技法を背景美術に使う事も増え、その技術を求められるようにもなってきました。
しかし、基本は風景画を描く事が好きであり、アニメが好きであり、自分でキャラクターが活躍する世界観を考え作り出す事に情熱を持てるかです。

熱意・想い・拘り。

自分が描いた世界観でキャラクターが活躍する世界を描く。

アニメ作品の全てに世界があり、同じトーンで描かれている背景美術はありません。 透明感のあるデジタル技術を駆使した作品から、手書きの暖かさに拘った作品。

空の色ひとつとっても同じ色はありません。
冬の海と夏の海とでは表現も色も違います。
南国の島の景色と、北欧の島の景色も違います。

絵画の世界での表現は、写実、リアリズム、シュール、抽象、ポップアートなどから、技法も油、アクリル、水彩、リトグラフ、エッジング、墨、など様々な表現方法があります。
背景美術はその作品の舞台を生み出すために、アナログ表現からデジタル表現までを駆使し風景・背景を描いて行きます。

「アニメ背景美術はキャラクターが活躍する世界を描く!」

これが背景美術の仕事の醍醐味であり面白さとやりがいです。

若手PM君。 背景美術もアニメーターと同じく、被写体の無い世界で無から有を生み出します。
これがアニメ制作の醍醐味です。
アニメという映像表現にもっと興味を持つと、実写表現とは違う景色が見えてきます。
自分の選んだ道を迷うことなく志を高く持ち、素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。

「おやじ一押し! Anime Japan2020 」

株式会社フェローズはAnime Japan 2020・メインエリアに出展いたします。

※Anime Japan 2020は中止となりました。詳細はAnime Japan 2020のHPにてご確認くださいませ。

『使える小ワザ』

 

街歩き!旅行!気になる場所に出向きましょう。
写真を撮ったり、その場で絵を描いたり。
大事な事は、たくさんの絵を描く事とその場所の空気感を五感で感じ取る事。
これです!

ここまで読んで頂き有難うございました。
それではまた次回。

 

プロフィール
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田 有應
(せきた ゆうおう)大学を卒業後、テレビ局直系制作会社に入社。 企画、番組制作、イベント映像、PV、VP制作を行い、その後CM制作を中心に実写業界でのキャリアを積み、大手出版社グループでデジタルコンテンツ系の映像・音楽制作。 子供向けアニメ作品を中心とした、テレビシリーズ・OVA・劇場版・音楽制作・マーチャンダイジングと、キャラクタービジネスの世界で製作プロデューサーを行う。代表作は、平成の名物キャラと言われる主人公がハムスターのアニメ作品 株式会社フェローズにて アニメセクションの立ち上げを行い、現在はマーケティングセクションにて全国の映像系学校でのセミナー講師やキャリアアドバイザーを行っている。 息子も大手広告代理店直系の制作プロダククションのPM「親子鷹」である。※無類の音楽好きで、40年ぶりに大学時代のバンドを復活。活動中。

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