「見てくれが変+知らない人=変質者」と言う短絡的な図式。
僕の住んでいる近所に、ゴミの分別やゴミ捨て場の掃除を自発的にやってくれている人がいます。
暑くても寒くても雨が降ってもゴミ捨て場の世話をしたり、
ごみ収集車の人たちの手伝いをしたり、
宅配便の配達の人が困っていたらアドバイスしたり
近所の歩道の落ち葉の掃除をしてくれたり、
とにかく立派な人です。頭がさがる。
ただ、風貌がちょっと、なんというか、敗走中の平家の落ち武者というか、プレデターというか、ちょんまげを落とした侍って感じ。
ぱっと見、怖いのです。
いつも同じ服で、丸メガネで、不愛想でピクリとも笑いません。
うちのマンションの管理人に聞くと、
近所の道の突き当たりの古いアパートを親から相続して、そこの家賃収入でくらしている人。
と言うことでした。
僕はそう言う人が嫌いじゃないので、道で会うといつも大きい声で明るく挨拶をしていました。
最初はブスッと無視されていましたが、徐々に挨拶を返してくれるようになって
たまに笑って立ち話をするくらいの関係になりました。
もう長い間この近所に住んでいて、住所を言うだけでどの建物か知ってる、
みたいな人でした。この近辺の守護神のような人。見た目は落武者だけど。
去年の夏。猛暑が続いた頃、その人の姿をぱったり見かけなくなりました。
見かけなくなって一ヶ月くらいして、なんだか本当に心配になってきました。
本当に猛暑だったので、あの炎天下の中で、ゴミの仕分けとかしてて
熱中症になって倒れちゃったんじゃないか?と思ったからです。
それで、また、うちのマンションの管理人に聞いてみました。
あの人見かけないんですけど、大丈夫ですかね?と。
帰ってきた答えに驚きました。
「あの人ね~、熱中症とかじゃないんだよね~。
近所のなんだか最近引っ越してきたどこかの奥さんに
通報されちゃってさ。気持ち悪い人にゴミをいじられたって。
で、警察来ちゃってさ。何もしてないのになんでか注意受けたりしたらしい。
もともと引きこもりで他に仕事してないような人だからさ。
日中は家から出てこなくなっちゃったんだよ~
でもね、大丈夫。ほとんど人のいない明け方とかに
出て来てゴミのことやってくれてっから」
はあ?なんですかそれ?理不尽な話だなあと思いました。
インターネットで文句言ってるような感覚と同じようなことを
なんでも警察にすぐ通報するバカが本当に増えているらしいです。
調べてみると、ネット上にこういう警察官の書き込みがありました。
--110番通報の8割がくだらない内容。それでも行かないとまた市民から『通報したのに警察が来なかった』と言われる。実際、通報で凶悪犯が捕まる事態もありますが、それは100件に1件もない。子供を守るための保護者からの通報よりは、大人自身が『気持ち悪い人を見た』と言って通報してくることのほうが多いです―――
「気持ち悪い」ってだけで通報されては、イケメン以外は生きていけません。
僕もいつ通報されるかわかりません。ヤクザが歩いています。
ある新聞の記事には
『緊急性ない「相談」扱い、17年208万件 警察庁』
全国の警察が2017年、110番通報とは別で、緊急対応を必要としない「相談」として取り扱った事案は208万2239件で過去最多だったことが警察庁のまとめで分かった。担当者は「ご近所トラブルや家庭問題が増え続けており、悩み事の受け皿となっていた地域コミュニティーの衰退が影響した可能性がある」と指摘する。
内容別で見ると、「上階の住人の歩く音がうるさい」といった家庭・職場・近隣関連が24万956件(11.6%)で、08年の約1.7倍に増えた。「落書きがある」といった迷惑行為関連は12万8258件(6.2%)で、2倍以上となった。意味が不明な内容も7万8692件(3.8%)あった。〔2018/5/28 共同〕
と書いてある。
意味が不明な内容7万8千件?
本当にバカな社会になったもんだ。警察もいちいち相手して大変な時代になりました。
ラップとインターネットの世界ではこういう類の人を「へイター」と呼ぶらしい。
対象が何であれ必ずケチをつける人。ウォーキング・デッドの「バイター」みたい。ゾンビ。
この種の人々は、その気質的に何でも嫌い、物事の欠点ばかりに目を向けるのだというのです。好き・嫌いの気質によるバイアスによって、特に理由もなく、良く知らないトピックを嫌ったり(あるいは好んだり)しているらしいです。ちっちぇー。
こういうのが、世の中には、昔からだけど必ず一定層いるのだ。
そういう奴らに、匿名での意見の発表の場所を与えたのがインターネットの
罪だと思うのだけど、調子に乗って現実の社会にまで溢れ出てくるようになった。
これが警察にも向くようになったというのが驚きである。
公園でボール遊びNGや声を出して遊ぶことが出来ないのもこんな奴らのせいだ。
事前に各所に許可とってロケ撮影していても文句を言いに来る奴もいる。
無視していると広告主に電話したりするからたちが悪い。
何がダイバーシティーだ、口ばっかりだな馬鹿野郎、と思う。
もともと多種多様な人がいて、ついでに言うと今の東京はいろんな国の人が
いっぱいやって来て、スターウォーズの酒場みたいになっている。
いろんな人もいろんな考え方もある。いろんな格好してる人がいる。
そういうことを理屈ではわかったようなふりした奴らが、
よく調べもしないで、外見が気持ち悪いからと、無害で有益な人を警察に通報するような社会。
「見てくれが変+知らない人=変質者」と言う短絡的な図式。
いろんな嫌な事があってへこたれちゃったけど、
このままじゃダメだ、少しは世の中の役に立ちたい。と思って頑張ってる、
社会にうまく馴染めない不器用な人をビンタするような行為だと思った。
それが残念ながら今の日本、特に東京の風潮である。
なんかが自分の狭い常識に合わないだけでキモいと言い出す。
言われた側の事なんか何も想像できないんだろう。
人を傷つけようがなんだろうがお構いなし。
お前のために世界があるんじゃねえぞ。何様だ。
日本人の心の中では残念ながら鎖国は続いている。
後から来てよく知りもしないでいちいち通報する奴と、
その通報を受けて一方的に注意をしなければいけない警察と。
本人は弁解する余地も無く、おいおい、それは違うだろ?と周りが口を出す隙間もなく。
下らない事が知らない間に処理される。ぶつけ様のない怒りが込み上げてくる。
つい最近、僕も母親の貯金を下ろすのに郵便局について行ってあげたら
完全にオレオレ詐欺とおばあちゃんだと思い込まれて、なかなかお金が出てこなかった
ということがあった。僕こんな立派なコラム書いて何万人にも読まれてるのになー。
風貌と態度のせいで、あわや警察が呼ばれるんじゃないかと言うくらい、
頑なにお金を出してくれなかった。落語になりそうな話だった。
母親は、「思い出した。あんたとこんな所に来るのは間違いだった」と言った。
傷つくんだよね。