みんなが使えるハイテク図工室?!クリエイターは「しぶや図工室」に急げ!

Vol.94
「しぶや図工室」 オーナー 先生 小笠原治 平本知樹
カルチャーやビジネスなど、あらゆる分野において次なる未来像を発信し続ける街・渋谷に新しいクリエイティブスポットが誕生しました。その名も「しぶや図工室」。家庭用も登場し、ついに爆発的普及がスタートしたと言われる3Dプリンターを始め、3Dスキャナーや3Dモデラーを揃え、3Dのものづくりをみんなで体験できる「図工室」です。この「しぶや図工室」におじゃまさせていただき、オーナーである小笠原治氏、先生の平本知樹氏に設立の経緯や今後の展望などについて伺いました!

3Dデータを作るためのツールを みんなでシェアする「図工室」

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まず、この「しぶや図工室」を作ることになったキッカケを教えてください。

平本氏:今は3Dプリンターが騒がれていて、工業用はもちろん、廉価版の家庭用も登場するなど、たくさんの機種が出て普及が進んでいます。しかし、重要なのはアウトプットをするためのプリンターではなく、アウトプットするデータです。紙のプリンターを思い浮かべてもらっても、印刷するためのデータやコンテンツがなければ、家にプリンターがあっても使い道がなく、宝の持ち腐れですよね。3Dの世界でも同じで、3Dデータがまずは充実しなければならないのですが、プリンターばかりがもてはやされて、そこが抜けている、という問題意識がありました。3DCAD(設計支援ツール)などを使って3Dデータを作る方法もあるのですが、CADは誰もが使える一般的なツールではありません。

小笠原氏:2次元の世界では直感的にわかるお絵かきツールがありますが、それに近い感覚で3Dデータを作れる可能性はないか…と考えると、3Dのモデラーやスキャナーがあれば作れるのです。しかし、こうした3Dツールは現時点では数百万しますので、個人で所有するのは現実的ではない。それならば、みんなでシェアして使えばいいのではないか、と考えました。それが、みんなで高価なツールと場所をシェアして様々なものを作っていく「図工室」というコンセプトです。

小笠原さんは図工室のオーナー、平本さんは先生、という役割ですが、お二人の出会いは?

小笠原氏:私はもともと、シェアオフィスを展開する事業をやっていまして、この「しぶや図工室」もクリエイター向けのシェアオフィス「ten-to」内に作っています。「ten-to」を立ち上げるにあたり、オフィスをシェアするならば、ツールやモノもシェアできれば、と考えていました。さらに私自身、3Dのツールを使ってみたかったんですよね(笑)。そこで「ten-to」のプロデュース業務を依頼していた会社に想いを話したところ、3D方面に詳しい人がいる、ということで平本さんを紹介されたのです。

それは、いつごろですか?

小笠原氏:去年の12月ですね。

去年の12月!?まだ半年も経っていないですよ。それで立ち上げてしまうなんて、すごいスピード感ですね!

平本氏:「3Dの世界では、プリンターばかりに注目が集まって肝心のデータを作るところが置き去りにされている」という問題意識が共通していましたから。「しぶや図工室」でたくさんの人に3Dデータ制作を体験してもらって、3Dの可能性を一緒に考えていけたらいいなと思っています。

ワークショップを開催 3Dデータを扱える人を増やしたい

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「しぶや図工室」としての具体的な活動は?

平本氏:まずはワークショップを開催しています。ひとつは全6回でひと通りの3D制作を体験できるもので、オリエンテーションから始まり、3Dスキャナやモデラーなどのツールやアプリケーションを使って3Dデータを制作し、アウトプットまで体験できます。雰囲気をつかめる「導入篇」と考えてください。もうひとつは、まだ本格稼働していないのですが1回完結の単発ワークショップも考えています。導入篇を受講すれば、もっと好きなものを自分で作りたい、と欲が出てくると思いますので、そういう方のために今後は機材を時間貸し、つまりタイムシェアすることも検討しています。

ワークショップには、どのような人が参加しているのでしょうか?

平本氏:年齢は幅広くて、学生さんもいれば、すでにリタイアされて悠々自適の方もいます。Web制作をされて2次元データの扱いに慣れた人もいれば、アナログな絵を描いてきた人もいる。メーカーの技術職出身などで3DCADなどを触った経験のある人もいますけど、ほとんどが初心者の方で「3Dってなんとなく面白そう」と考えている人が多いです。直感的に操作がわかるツールを揃えていますので、気負わずに体験してみてほしいですね。

小笠原氏:「しぶや図工室」のワークショップを通して3Dデータを自由に扱えるようになったら、個人用の3Dプリンターを買ってもいいし、最近出てきた3Dのプリントサービスや出力センターを使ってもいい。とにかく3Dデータを扱える人をどんどん増やしていきたいです。

3Dで新しい未来像が作られる! 新たな表現のキッカケに

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ちょっとよくわからないのですが、3Dデータを扱えるようになると、どんな良いことがあるのでしょう?

小笠原さん:たとえば、自分のPCスペースに、小さなフィギュアなどを置いたりしていますよね。今は雑貨店などに行って好みのものを探してきて置く、という状態だと思いますが、そのお気に入りフィギュアを自分で考えて3Dデータを使って作ることができます。iPhoneケースだって、自分の思うように作れます。「自分の好みと似たものを探す」プロセスではなく「自分の好みのものを作る」ことが、当たり前になるかもしれません。とりあえず、そのくらいの感覚でいいかな、と思っています。

まずは「おもちゃ」感覚から、ということでしょうか…クリエイターにとって、現時点ではビジネスに直接的にどうつながるのか、見えない気もするのですが。

小笠原氏:私もわかりません(笑)。ただ、間違いなく3Dプリンターは伸びますよ。5万円程度の家庭用プリンターも海外では出てきていますからね。現状の家庭用3Dプリンターのクオリティは、私たちが期待するものとはほど遠く「おもちゃ」レベルかもしれません。しかし、この3Dプリンターが普及することによって今までとは違う未来像が作られていくことは確かだと思います。どんな未来像なのか、今ははっきり見えませんが3Dデータを扱って、3Dを楽しむ人が増えてくれば、自ずと見えてくるのではないでしょうか。最初に携帯電話にカメラが付いた時「いったい何に使うの?」と疑問に思った人が多かったですよね。3Dの今はそれに近い状態だと思います。

インターネットやWebが普及し始めた頃に近い感覚でしょうか?

小笠原氏:紙のグラフィックしかなかった時代、デザイナーの表現方法は一定の制限の中にあったと思うのですが、Webに出会い、Flashが出てきて、双方向性のコミュニケーションができるようになったことで、オリジナルな表現を作るキッカケになりましたよね。3Dもオリジナルな表現を作るキッカケになると思います。これまでの経験や知見で、クリエイティブが「職業」になってしまっている人には、ぜひ「しぶや図工室」に来てもらいたいですね。

2次元と3次元では頭の使い方が違う! クリエイターの方はぜひ体験を!

確かに3Dスキャナやモデラーを体験させていただきましたが、実際に動かしてみると2次元とはまったく違う手ごたえを感じます。とても新鮮でした。

平本氏:Webやグラフィックを制作された経験がある方はもちろん、オフィスソフトぐらいしか経験のない方でも、ソフトを動かすベースの考え方は変わりませんし、直感的にわかるツールばかりを揃えているので、抵抗なく楽しめます。ただ、確かに手ごたえがまったく違うんですよね。2次元と3次元では、頭の使い方が違うんです。

小笠原氏:2次元の制作に疲れている方は、ぜひ3次元の世界へ(笑)。いいリフレッシュになりますよ。

3Dの世界には可能性がたくさん詰まっていますし、クリエイターにとっては良い刺激になりますね。

平本氏:ワークショップは、ブラッシュアップしていきながら今後も続けていきます。「みんなで考えていく」スタイルなので、一緒に3Dの未来を作って行きましょう。HPFacebookで情報を発信していますので、ぜひ遊びに来てください。

小笠原氏:「3Dを扱えれば、今すぐご飯が食えるよ!」という時代はまだ来ていませんが、クリエイターの方であれば早めに触れておいて損はないと思います。間違いなく普及するものですし、新たな表現ツールとして自分のものにしておけば、表現の幅が広がるキッカケになると思います。「しぶや図工室」と3Dの世界がどのように発展していくか、私自身も楽しみにしています。

インタビューにご協力いただいた小笠原氏/平本氏

インタビューにご協力いただいた
小笠原氏/平本氏

しぶや図工室

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取材/2013年4月30日~5月1日 取材・文/植松

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